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“有害”指摘のPFAS 多摩地域の住民に血液検査 結果は?【詳しく】

  • 2023年6月8日

有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」をめぐり、専門家と市民団体が、東京・多摩地域の住民を対象にした血液検査の平均で、国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたとする結果を公表しました。
なぜ多摩地域で調査を行うのか?調査結果はどのようなものなのか、まとめました。

「PFAS」とは?

Q. 化学物質の「PFAS」一体どのようなものなのか?

有機フッ素化合物「PFAS」は、人工的につくられ、自然界には存在しない物質の総称で、4700種類以上あるとされています。
水や油をはじき、熱に強いことから、テフロン加工のフライパンや食品のパッケージなど様々な製品に使われてきました。

このうち「PFOS」、「PFOA」と呼ばれる2つの物質は、アメリカの研究で有害性が指摘されています。こうしたことを受け、今、国内ではこれらを使用した製品の製造が禁止されています。

国は、飲料水とするには、PFOSとPFOAが、1リットルあたり50ナノグラム以下(1ナノグラム=10億分の1グラム)を暫定的な目標値として設定しています。

一方、アメリカでは、PFOSは0.02ナノグラム以下、PFOAは0.04ナノグラム以下を基準とすべきとしていて、わずかでも検出されるべきではないとする考えです。

血液検査の対象

Q. 今回の血液検査は、なぜ多摩地域の住民が対象に?

市民団体と共同で調査を行った京都大学大学院の原田浩二准教授は、沖縄県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などでPFOSなどが検出されたことから、去年、周辺住民の血液検査を行いました。

多摩地域にも、横田基地があり、周辺の井戸水などから検出されていることから、市民団体と共同で実態の把握を進めようと、今回の調査を行ったということです。

調査結果を詳しく

Q. 結果は?

検査を受けた650人で検出されたPFOSとPFOAをあわせた血中濃度の平均値は14.6ナノグラムで、国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたということです。
10人以上が検査を受けた20の自治体のPFOSとPFOAをあわせた平均値は、以下のとおりです。

PFOS+PFOA
自治体名 検査人数 平均値
(ナノグラム)
国分寺市 84 23.2
立川市 47 19.0
武蔵野市 23 15.8
あきる野市 19 15.2
調布市 21 14.2
国立市 62 14.0
府中市 47 13.9
小平市 28 13.8
西東京市 29  13.4
昭島市 50 13.0
武蔵村山市 40 12.8
福生市 24 12.3
青梅市 19 12.3
小金井市 22 12.2
東大和市 17 11.6
羽村市 23 11.5
三鷹市 13 11.5
日野市 33 10.8
瑞穂町 18 9.6
八王子市 13  7.3

 

Q. 検出されているのは横田基地周辺だけなのか?

都の環境局や水道局などは、地下水や井戸水、水道水の調査を定期的に行っていますが、多摩地域に限らず、都内各地で、国の暫定の目標値を超える値が検出されていて、調査の結果を、ホームページで公開しています。
PFASはかつて、幅広い用途に使われたことから国は「環境中に残っているケースが多いと想定される」としています。

東京都の対応は

Q. 各地で検出されているとなると、不安を感じる人も多いと思うが、都はどのように対応しているのか?

都は、国の暫定目標値の1リットルあたり50ナノグラムを超えているところがないか計測し、超えているところがあれば、監視体制を強化したり、井戸からの取水を停止したりして対応しています。

また、都は専用の電話相談窓口を設けています。

03-5989-1772(平日:午前9時~午後5時)

都によりますと、5月1日からスタートした窓口には、1か月間(5月31日まで)で、およそ400件の相談があったということです。
主な相談内容です。

(1)自分の住むところの水道水に、どの程度含まれているのか。
(2)浄水器を取り付けたり、ペットボトルの水を使用したりした方がいいか。
(3)健康への影響はどの程度あるのか。

(1)や(2)について、こうした相談は全体の半分程度を占め、最も多いということです。
窓口では、自分が住んでいる地域を伝えれば、都水道局が調査を行ったデータをもとに、その地域の浄水場や蛇口の水道水の検査結果を聞くことができるということです。

(3)については、以下のように説明を行っているということです。
●PFOSやPFOAは、日本国内では健康被害は確認されていないことや、日本国内では人への健康影響が発生しているという報告はない。
●免疫系や血液中のコレステロールの値などへの影響が指摘されているが、どの程度の量でどのような影響を及ぼすかは、現時点で明らかになっていない。
●国で科学的根拠に基づく議論が進められていて、この議論の状況をもとに正しい情報を提供したいなど。

国としても、不明な点が多いことから、ことし1月、国の専門家会議を立ち上げ、現状の把握を進めています。

不安を払拭するためにも早急に議論を進め、適切な情報を発信していく姿勢が求められています。

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