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有害性指摘の物質含む「PFAS」排出源の特定は?今後の調査どうなる

  • 2023年3月29日

アメリカの研究などでは発がん性や子どもの成長への影響などが報告され有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」は、首都圏でも国の暫定的な目標値を超えて検出された地点があります。環境省の調査によると、暫定的な目標値を超えた地点のうち98%で排出源の特定に至らなかったということです。特定に向けた今後の対応などについてまとめました。

「PFAS」なかには有害性指摘されている物質も

「PFAS」は人工的に作られた有機フッ素化合物の総称です。このなかで、有害性が指摘されている「PFOS」と「PFOA」という2つの物質は、首都圏のアメリカ軍基地周辺でも相次いで検出されています。

このうち東京にある横田基地の周辺では4年前の都の調査で基地から2キロ以内の立川市と武蔵村山市の2か所の井戸水から国の暫定的な目標値を超えて検出されています。

また、神奈川県にある海軍の横須賀基地ではアメリカ軍の調査で、2022年5月以降、生活排水や産業排水の処理施設の排水から国の暫定的な目標値を超えて検出されています。

環境省によりますと、水や油をはじく特性などから、かつては泡消火剤や精密機器の製造のほか、フライパンのコーティングやはっ水スプレーなど幅広い用途に使われていたということです。

「PFAS」目標値超の地点 排出源の特定に至らず98%

有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」について環境省は3月28日、国の暫定的な目標値を超えた13都府県の81地点のうち、98%にあたる12都府県の79地点で排出源の特定に至らなかったとする調査結果を示しました。

専門家からは、排出源を特定するための具体的な方法を国が示すべきだとか、排出源の可能性がある泡消火剤がある場所や物質を取り扱っていた工場などの情報を自治体と共有することが重要ではないかなどの指摘があがりました。

環境省はこれらの指摘を踏まえ、排出源の特定に向けて自治体に対し具体的な調査方法を手引きに記すなどの対応を早急に進める方針です。

都内では 24 地点 “排出源の特定は難しい”

都の環境局によりますと、国の暫定目標値を超え、排出源の特定に至らなかった調査地点について、都内の分は値の高い順に、立川市や調布市、府中市となっていて、このほか、区部では渋谷区や練馬区などで、あわせて 24 地点にのぼるということです。
都は汚染地域の特定などを進めるため、2022 年から 4 年がかりの調査を都内全域で進めています。

東京都環境局 化学物質対策課 東川直史課長
「広い範囲で国の暫定目標値を超える値が検出されていて、排出源の特定は難しいが、不安に感じる人もいると思うので、調査を続けて結果などの情報発信をするとともに、今後の国の動向を注視し、調査方法などを検討していきたい」

「PFOS」「PFOA」 健康への影響は

有機フッ素化合物の「PFAS」は、4700種類以上が存在するとされています。その中の「PFOS」と「PFOA」という2つの物質は、水に移行しやすく、長期的に環境に残留するとされ、アメリカの研究などでは発がん性や子どもの成長への影響などが報告されています。

一方で、WHO=世界保健機関は、健康への影響についてはさらなる研究が必要だと指摘しています。国内でもどの程度、有害性があるのかを判断するには知見を集積する必要があるとして、環境省は専門家会議を立ち上げ実態の把握を進めています。

専門家「現状と今後の道筋 国が説明を」

20年以上にわたって全国の「PFAS」の状況などの研究を続け、環境省の専門家会議のメンバーでもある京都大学大学院の原田浩二准教授に今回の調査結果について聞きました。

〇調査結果から
これまで大量に、長年、この物質を使ってきたことを考えれば、今回の調査結果からも実はまだ実態を把握していないだけだということが言える。住民にとっては、汚染源や健康への影響が分からないことが不安を非常に大きくする。国はまず今、何が分かっていて、これから何をやるべきなのか、現状と今後の道筋をしっかり説明することが非常に重要だ。

〇必要な取り組み
PFASを取り扱っていた工場周辺など、過去の調査で値が高く出ることが明らかな場所もあるので、まずは各地域でPFASがどのように使用されていたかを把握しておくことが必要だ。経済産業省がPFASを取り扱っていた事業者に対して、聞き取りや調査の協力を要請するなど、環境省だけでなく、幅広く関係する省庁横断で取り組むとことで、対策として実効性があるものになる。

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