3月下旬にも、施設の解体工事が始まる明治神宮外苑の再開発。そもそもどういった事業なのか。何が課題となっているのか。首都圏局の尾垣和幸記者がQA形式で解説します。
Q.神宮外苑の再開発、どういった事業なんでしょうか?
A.
新宿区や港区、渋谷区にまたがる大規模事業で、神宮球場や秩父宮ラグビー場が場所をかえて建て替えられるほか商業施設が入る高層ビルが建設されます。
「気軽に訪れ楽しめるまちづくり」をうたい人々が行き交うモール型の回廊も作られます。全体の整備は13年後の2036年に完了する計画で総事業費はおよそ3490億円となっています。
Q.公園の中に、にぎやかな商業施設ができるんですね。
A.ただ、この計画に対し、地域住民からは「説明が足りない」などと不安の声が上がり始めています。
今回、再開発を行うのは行政ではなく、民間の事業者です。事業への許認可を与える立場の東京都は、税金が投入される事業ではないため、説明会を開くかどうかは事業者に委ねています。
事業者はこれまでに3回、再開発についての住民向けの説明会を行いました。
ただ、神宮外苑からおよそ200メートルの住民に限られていて、近くにある港区の小学校の保護者たちは、事業者に対して住民向けの説明会を改めて開くよう求める777人分の署名を区議会に提出しました。
Q.そもそも、なぜ、民間の事業者が公園を再開発できるのでしょうか。
A.神宮外苑は法律上、都市計画公園に指定されているため、開発が制限されています。
そうしたなか、都は、2013年、公園の有効活用を目的として、民間の力で整備、開発するための制度を創設しました。
神宮外苑ではこの新しい制度が適用され、商業施設などが入る高層ビルの建設が可能となったんです。
専門家はいわゆる「公共の場」を大きく変える開発なのに、行政も事業者も、住民への周知が足りていないのではないかと指摘しています。
都市計画と建築に詳しい静岡文化芸術大学 松田達准教授
「基本的にヨーロッパだと、今回のような大きな計画が動いたときに人々の意見を反映させながら、計画が進む。ただ、日本には住民の意見を聴く仕組みはあっても形式的なものでしかないことが問題となっている。そこで市民が置いてきぼりにされているのが今回の計画だと思う」
Q.神宮外苑のほかに、民間主導の再開発はあるのでしょうか。
A.民間主導の公園の再開発や再整備は、行政が推し進めている施策で、都内ではいくつかあります。
港区の「芝公園」では同じ制度を活用した再開発が検討されています。
また、千代田区の「日比谷公園」や江戸川区の「葛西臨海公園」でも再整備の計画があります。
松田准教授は、「フランスでは例え民間の事業でも、その再開発で公益が損なわれないかは、かなり厳しくチェックされる。事業者の利益ばかりが優先されないよう、住民の意見も聞き、合意形成を図る仕組みを作ることが必要だ」と指摘していました。
一方で、住民たちも、近くでどういった再開発が行われようとしているのか、関心を持つことが大事だと思います。長く多くの人に愛される場所にするためにも、住民の合意を得ながら進めるプロセスを、みんなで考えていくことが必要ではないでしょうか。