「ガクチカ=学生時代に力を入れたこと」就職活動でどうPRしたらよいのだろう…入学当初からコロナ禍に直面した世代の学生からは悩みの声、また企業からは学生をどう見極めるかが難しいという声が出ています。ガクチカをめぐる取り組みに加え、就職活動でガクチカを聞く狙いや、採用にあたり企業に求められることなどを専門家に聞きました。
2024年、来年春の就職を目指すいまの大学3年生は入学当初からコロナ禍に直面し、講義がオンラインになることも多かったほか、部活動やサークル、アルバイトなどへの参加が制限されました。同級生と会話する機会すら十分に持てないなど、思い描いていた学生生活を送れない学生もいます。
「学生時代に力を入れたことは何ですか」
就職活動では、この「ガクチカ」についてエントリーシートに書く欄があったり面接で聞かれたりしますが、学生からは何をPRすればよいのかという悩みが聞かれます。このため、大学や就職支援会社、それに自治体などでは、学生を支援する取り組みも活発になっています。
埼玉県では、県の事業を学生に手伝ってもらいガクチカの候補の1つにしてもらおうという取り組みを進めています。
この「埼玉ガクチカクラブ」には現在は8人が参加していて、これまで地元企業をPRする県の冊子を作成するため、企業へのインタビューや原稿執筆などにあたってきました。
2月13日には、3月に開かれる予定のサッカーチーム「浦和レッズ」と地元サポート企業との対談イベントについてどのように周知するか打ち合わせをしました。
学生たちは、イベントを多くの人に知ってもらうためにSNSを効果的に活用する方法などについて県の担当者とともに検討を進めていました。
大学3年生 木村琉花さん
「企業の担当者に話を聞く機会を通して、企業がどんなことをアピールしているのかや自分はどんな仕事に魅力を感じるのかについて考えることができたし、この経験自体をガクチカとしてアピールできるようになった」
「ガクチカ」をテーマにした学生向けのセミナーも開かれています。このうち都内の就職支援会社「ネオキャリア」は1月、「ガクチカの作り方」をテーマにセミナーを開き、2024年春の就職を目指す学生など参加しました。
企業が学生にガクチカを聞くのは学生の性格や思考、価値観が会社に合っているかを確認したいためだ。企業にとってはさまざまな判断材料の1つに過ぎず、学生が思っている以上に重要視している訳ではない
ガクチカ作りをどうすればいいか
大学時代に頑張ったことをどうまとめるべきか
会った人には仕事内容を聞くことに加えて自己PRなどを伝えてフィードバックをもらうことを勧める。その行動がガクチカの1つにもなるし面接でも役立つ
就職支援会社の担当者は、過度に不安になる必要はなく等身大の自分をアピールすることが大切だと説明したほか、企業で働く人に直接会ったりオンラインで面会したりする経験を積み重ねるべきだなどとアドバイスしていました。
企業の中でも「ガクチカ」にこだわらずに採用活動を進めようという動きが出ています。全国にショッピングセンターを展開する「パルコ」は、以前はエントリーシートの最初に「ガクチカ」を記入する欄を設けていましたが2年前に廃止しました。
入社後の業務ではイベントの企画などプロデュース力が求められ、ガクチカだけでは人材の見極めが難しいと感じていたことに加え、新型コロナの影響が大学生に広がってきたためです。
その代わりに設けたのが「とっておきの写真」を掲載してもらい、そのエピソードを書く欄です。学生にとって自己PRの自由度が増すことになると考えての導入でしたが、採用する側としても学生の人間性の理解が深まるメリットを感じたといいます。
人事戦略部 採用担当 柏木彩奈さん
「ガクチカは部活を頑張ったとかサークルやゼミを頑張ったといったどの会社でも言いやすい内容に偏ってしまうところがあり、学生1人1人の顔が見えにくいと思っていました。項目を変えたことでエントリーシートに個性が出て自身の価値観みたいなものが染みだしてくるような内容に変わったかなと思っています」
就職活動に詳しい採用コンサルタントの谷出正直さんに話を聞きました。
〇学生に対して
「学生側から見ると、『ガクチカ』では部活やサークル、学園祭ですごい結果を残したことが大事だと思ってしまうかもしれないが、採用側の企業が見ているのは、目標設定をどのようにしたのかや、どんな時間の使い方をしたのかなどという価値観や考え方だ。すごいエピソード大会ではないということを知ってほしい」
〇企業の担当者へ
「ことしの就活生は大学に入った時からコロナ禍であり、いろいろな人と接しながら経験を積むという部分は不足している。その部分を加味しながら、選考プロセスでどのように学生が成長していくか、伸びしろを見つけていくことが大事になってくる。工夫して学生の本音を聞き出しミスマッチの少ない採用活動を進めなくてはいけない」