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東京都 私立中学校に10万円助成はなぜ?910万円の所得制限付き

  • 2023年1月27日

年明け以降、東京都の小池知事は新年度予算案で、18歳以下への月5000円給付や第2子の保育料無償化を所得制限なく実施する方針を打ち出してきた。
しかし、新たに盛り込まれた私立中学校に通う生徒への所得制限付きの10万円助成をめぐっては、疑問や批判の声が相次ぎ、都議会の反応もさまざま。
都はなぜこの施策を決めたのか、取材した。
(都庁担当/記者 中村大祐)

支援の仕組み

今回の予算案に盛り込まれた私立中学校に通う生徒への所得制限付きの10万円助成。
内容は次の通りです。

・私立中学校に通う生徒(都民)に年間10万円助成。
・助成要件は世帯年収910万円未満が目安。※家族構成などによって変化。
・新年度予算案に、必要経費40億円を盛り込む。
・対象は約3万6000人を見込む。

批判相次ぐも都の説明は

この施策をめぐる疑問などは次のようなものだ。

「自らの意思で私立に通わせている家庭に助成が必要なのか」
「公立中学校の教育の質を上げるのが先だ」
「格差が広がるのでは」 など。

こうした疑問に対して都の担当者に聞いてみた。

Q.なぜ自らの意思で私立に通わせている家庭に、助成が必要なのか

生徒1人1人の個性に応じて、学校の選択ができるよう支援するための事業だ。都内の中学生は4人に1人が私立を選択している。経済状況が厳しい家庭への子育て支援の一環だ。関係団体などからの要望として「子どもが私立に通う保護者の負担を少しでも軽減してあげたい」ということもあった。
国が実施していた事業も踏まえて、今回、事業化した。

国は実証事業として平成29年度から、年収400万円未満の世帯であることなどを条件に、年間10万円を助成していたが令和3年度で終了。

Q.公立中学校の教育の質を上げるのが先では

公立中学校に関しても予算を相当程度計上している。
また区市町村でも努力をしていると思う。
今回の助成が私立中学校や、その生徒を極端に優遇するものではないと考えている。

Q.私立中学の学費が上がるのでは

学費は、学校側が適切に判断するべきものだが、学費上昇は保護者へのインパクトになる。今回の助成と連動して直ちに学費が上昇するということがないように注視していく。
都としては日頃から、各種事業などを通じて、学費上昇の抑制を促しており、懸念を払しょくしていきたい。

Q.格差が広がるのでは

助成の金額が大きくなれば、そういう指摘も当たってくるかもしれないが、私立に誘引したいという意図はない。指摘は十分に受けとめなければならないが、この事業の意義を丁寧に説明していきたい。

「悪い政策ではない」

都の幹部の1人は「悪い政策ではない」と胸を張る。

都庁幹部
「なぜこんなに批判を受けるのか。そんなに悪い政策ではない。庁内で議論したときも、そこまで反対意見は出なかった。都内では4人に1人は私立中学校に通っており、もう公立では受けきれない。それに、いじめや不登校の子どもが私立にも行きやすくなり、選択肢を増やすことになる。

東京特有の状況を考えれば、こうした支援があってもいい。都としては結婚から出産、育児など切れ目なく支援するという全体を見てほしい」

都議会からも意見

今回の助成をめぐっては都議会からも、さまざまな意見が聞こえた。助成を求めていた都議は「国の事業がなくなり困っていた保護者は助かった」などと評価した。

一方、別の都議からは「国が廃止した支援を都につけかえてくるのは絶句だ」という批判や、「小池知事もこらえてほしかったが、こらえきれなかった」との指摘もあった。

都庁の幹部は「それが政治だね」とこぼした。

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