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コロナ5類の影響 専門家見解は 入院調整 治療費 変異ウイルス対応

  • 2023年1月12日

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザなどと同じ「5類」などに見直した場合、行政による入院調整や治療費の負担、変異ウイルスへの対応、濃厚接触者への呼びかけなど、どのような影響がでるのでしょうか。厚生労働省の専門家会合のメンバーらがまとめた見解の詳細をまとめました。

新型コロナ「2類相当」変更の影響について見解

新型コロナウイルスは感染力の強さなどから感染症法で厳しい措置をとることができる「2類相当」に位置づけられていますが、オミクロン株が主流となって以降、致死率や重症化率が低下したことなどから、厚生労働省は分類の見直しに向けた議論を進めています。

こうしたなか、厚生労働省の専門家会合のメンバーらは、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを季節性インフルエンザなどと同じ「5類」などに見直した場合、どのような影響が出るかについて見解をまとめ、11日の会合で示しました。

インフルエンザと同様の対応にするには

見解では、現在の新型コロナについて感染者が重症化したり死亡したりする割合は徐々に低下しているものの、オミクロン株になってウイルスは広がりやすくなっているうえに、感染者数の増加で死亡者数が極めて多くなってきているとしています。
1年を通じて流行を繰り返すなど予測が困難なことなどから、「季節性インフルエンザと同様の対応が可能な病気になるにはもうしばらく時間がかかる」と評価しています。

「5類」などに変更された場合の影響

厳しい措置をとることができる「2類相当」から「5類」などに変更された場合についての見解です。

●入院調整
患者が増加したときに行政による入院調整が行われず地域を越えた調整も難しくなることが特に懸念される。

●治療費の負担
治療費が公費で負担されなくなり、感染者が検査や治療を受けない、受けられない可能性がある。

〇濃厚接触者
濃厚接触者に対して、法律に基づいた行動制限の呼びかけができなくなることについてはすでに事実上行われておらず影響は少ない。

〇自宅外の待機施設
感染者が自宅以外で待機するためのホテルなどの施設が確保されなくなることは、1年間に2000万人以上の感染が確認されている現在では、感染拡大を抑える観点からは寄与する度合いは低くなっている。

特措法の対象から外れた場合の影響

見解では、新型コロナウイルスが特措法の対象ではなくなった場合の影響についても検討しています。

●対策が実施されない可能性
都道府県知事が行っていた感染対策の呼びかけの法的根拠が失われることで、「新型コロナは終わった」とみなされ必要な感染対策が行われなくなる可能性がある。

●新たな変異ウイルス対応
対策本部が廃止されることで、感染力や病原性が著しく上がった新たな変異ウイルスが現れた場合に迅速な措置ができなくなる可能性がある。

●ワクチン接種率の低下
ワクチンに関する対策が縮小される可能性があり、接種の際に自己負担が発生すれば接種率が低下する可能性がある。

法律上の扱いに関わらず求められること

そして見解では、新型コロナの法律上の扱いにかかわらず、今後も求められることとして次の内容などをあげています。

◇ 感染者がほかの人に感染させないための行動を促すことが必要であること。

◇ 医療がひっ迫したときに調整を行う機能を維持すること。

◇ 必要な予防接種ができる体制を維持すること。

◇ 新たな変異ウイルスによって医療に深刻な影響が出るおそれがある場合には、接触機会を減らす対策を考慮すること。

提言では、患者が増加したときに入院調整が行われなくなることなどが懸念される一方、濃厚接触者に法律に基づいた行動制限の呼びかけができなくなる影響は少ないなどとしていて、位置づけの変更は必要な準備を進めながら行うべきだとしています。

“適切な対応を継続しなければ医療に大きな影響”

専門家会合 脇田隆字座長(1月11日)
「オミクロン株は重症化率が低いが感染性が高い。感染症法上の類型を見直しても適切な対応を継続しないと、医療には大きな影響が出てしまう。感染症法上の類型にかかわらず、市民が納得感を得られる施策をすべきで、感染者や接触のあった人がほかの人に感染を広げない行動、規範、ガイドラインを示して、人びとの自主的な健康習慣としていくべきだ。ただ、病原性が高まり、感染力も高まった変異ウイルスが出現した場合、感染の広がりを抑える対応も必要だ。流行状況をモニタリングし、変異ウイルスによって医療に深刻な影響が出る場合は対策をすべきだ」

分類の見直し 今後どう進められるのか

新型コロナについて、政府内では、感染症法上、季節性インフルエンザと同じ「5類」への引き下げを早ければ2023年、来年春にも行う案も出ています。一方で厚生労働省の専門家会合では、新型コロナはインフルエンザと同等と判断できる条件を現時点で満たしていないとする指摘も出ています。

今後、分類を5類に変える場合、厚生労働省は専門家で作る感染症部会にはかったうえで省令改正を行う必要があります。厚生労働省は1月中旬にも感染症部会開く見通しで、年明けの感染状況をみたうえで、見直しの方向性を判断するとしています。

倫理・法律の専門家 強制力を伴う措置 見直し提言

一方、新型コロナウイルス対策として行われている強制力を伴う措置について、国に対しこうした措置を速やかに見直すよう求める提言を倫理や法律の専門家がまとめました。

提言では、感染症法に基づいて行われる入院勧告に従わない場合に罰則があるなど、強制力を伴う措置の対象とされているものの、現状では措置の有効性と人権の制限のバランスが釣り合わず、必要最小限度を超えた人権の制限を容認している状態が続いているなどと指摘していて、速やかに見直すよう国に求めています。

その上で提言では、障害者や高齢者について接触によるケアが不可欠で、制限がもたらす影響は見過ごせないとして施設での面会や付き添いが速やかに再開できるよう実態調査や指針の策定を行うよう求めています。

また、新型コロナの感染対策で最大限の措置をとらざるを得なかった時期に導入され広がった、現時点で有効とは言いがたい過度な対策などをとりやめるべきことを明確に示す必要があるとしています。

提言をまとめた東京大学医科学研究所の武藤香織教授は「社会を少しずつもとに戻していくにあたって、過剰な対策や人々の行動への過剰な介入をやめるよう呼びかける必要がある」と話しています。

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