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  • 2022年12月9日

長野市の公園が閉鎖に 1軒の住民「子どもの声が騒がしい」と訴え

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長野市の住宅街にある公園をめぐり、長年、1軒の住宅の住民から子どもの声が騒がしいなどと訴えがあったことを受けて、市は公園を閉鎖することを決めました。 
市は「よりよい方策について話し合いを続けたが、解決策を見いだせなかった」としています。専門家は、公園を整備する時だけでなく、整備後も住民たちの立場や考えの変化に応じて、合意を得ることの必要性を指摘しています。

問題の経緯 1軒の住民から苦情

長野市青木島にある「青木島遊園地」は、平成16年に整備されたおよそ1400平方メートルの公園です。法律に基づいて市が整備した公園ではなく、地域住民からの要望を受けて民有地を借りて整備されました。

問題の経緯は次の通りです。

周囲には、学童保育施設「児童センター」のほか小学校や保育園もあり、日中は保育園児が、夕方は小学生たちが多数訪れて遊んでいました。

整備当初から、1軒の住宅の住民から、多くの子どもが一斉に遊んでうるさいとか、敷地に入ったボールを取りに来た子どもたちに、植え込みを傷つけられたなどと苦情が寄せられ、市は、平成20年度から21年度にかけて、公園の入り口や遊具の場所を変えたり、消灯時間を早めたりしたほか、ボールを使うことを禁止しました。

その後もこの住民からの苦情は続き、保育園児は訪れなくなり、児童センターも去年3月、子どもたちに公園で遊ばせるのをやめ、訪れる人はほとんどいなくなりました。

公園は、「児童センター」が維持・管理してきましたが、利用者のいない公園の整備は続けられず、維持・管理の担い手もいないとして、ことし1月、長野市に公園廃止の要望書が提出されていました。

市は翌2月に、今年度で公園を廃止することを決め、12月末までに閉鎖して、遊具や樹木の撤去を進めることにしています。

住民と児童センターの館長は

今回の決定に対して、地元では。

近くに住む40代の母親

子どもたちの遊べる所がなかなかないし、緑があって貴重な場所なので、近くの住民の気持ちも分かりますが、残してほしいです。

 

公園の隣にあり、利用する子どもたちが公園で遊んでいた児童センターの館長は次のように話しています。

児童センター館長 
「送り迎えの時に保護者に静かにするよう呼びかけてきました。子どもは外で大勢で遊んだほうが楽しいと思いますし、地域の皆さんも残してほしいと思っているのでとても残念ですが、いろいろな事情があるので、やむを得ないと思います」

騒音の悩み訴えていた住民は

騒音の悩みを訴えていた住民は、NHKの取材に対し、次のように話しています。

住民 
「事前の説明がないまま公園が設置されたうえ、隣接する児童センターが50人から60人ほどの子どもたちを一斉に遊ばせるなどしたことで生活環境が変わってしまった。児童センターや保育園などには18年間、改善を求め続けたが、担当者も交代するなか改善がみられず、我慢できない日々が続いた。自由に遊ばせるのと好き勝手にするのは違うと思う。うるさく感じるということには理解してほしい」

ネットの反応は?

子どもの遊ぶ声を受け入れようという意見です。

小学校が目の前の家で育ったけど、子供の声やチャイムの音うるさいなんか思った事ないけどな。むしろ楽しそうに遊んでるの見るの微笑ましかった位。
お年寄りの騒音に対する苦情はわからないではないですが子供たちの声は地域の将来を支えるエネルギーとして理解していただきたいものです。運動会の拡声機の音も最近は聞こえなくなった。
「子供の声がうるさいと言っている人たちも一度は子供でした。我慢するのはお互い様。昔は大人たちが地域の子供の成長を見守り大切にしたのに…」   

一方で、騒音に悩んでいると訴えた住民の気持ちがわかるという声も。

うちも家の近くに学校あって土日も7時頃からうるさい。土日だと4、5時で止まるけど一日中うるさいであろう公園廃止全然アリだと思う。
昔、小学校の校庭に道路挟んだ場所の職場にいた。運動会やブラバンの練習時は窓を閉めてても正直うるさいと思ったよ。だから子どもの声や行事の音が騒音ではない、とは思わない。

ほかにも、昼間、家にいないときはいいけど休みで家にいるときにはうるさく感じるという声もありました。 
そして、こんな意見もありました。

子供は将来を担う存在で、今は騒ぎ、遊び、誰かに迷惑をかけることが彼ら、彼女らの仕事。それは誰しもが通った道。そこに示せる寛容さが欲しいとも思うし、反対にご老人の心痛にも歩み寄れる道があればいいなとも思う。廃止じゃなく、何か対策はなかったのかな。

市の対応「解決策見いだせなかった」

長野市公園緑地課 平澤智課長 
「児童向けの施設が複数隣接し、比較的規模も大きいため、騒音が出やすい特殊な公園だ。よりよい方策について話し合いを続けたが、解決策を見いだせなかった。残念だが、苦しい判断で閉鎖を決断した」

9日に開かれた市議会の一般質問。

議員から公園の存続を求める意見が出たのに対して、荻原市長は、閉鎖する方針に変わりはないという考えを示しました。

長野市 荻原市長 
「18年間という長い期間は、多くの住民の子どもの居場所を確保したいという思いの表れだ。地域の話し合いの結果廃止の要望が出され、非常に苦しい判断だったがこのまま手続きを進める。子育て支援に力を入れる一方住民の声に耳を傾けるのが行政の役割だ」

市によりますと、子供たちは代わりの遊び場所として、近くの小学校の校庭や別の公園を利用できる状態だということです。 
また、荻原市長は「SNSなどで個人を攻撃するような書き込みが見受けられ大変危惧している。そういったことがないよう皆さんにお願いしたい」と呼びかけました。

専門家「整備後も合意形成を」

長野市が公園を閉鎖することについて、都市計画などが専門で子どもの遊び場に詳しい関東学院大学の中津秀之准教授は、公園を整備する時だけでなく、整備後も住民たちの立場や考えの変化に応じて、合意を得ることの必要性を指摘しています。

関東学院大 中津秀之准教授 
「公園の利用者の声に、働いているときには在宅時間が少なく気付かなくても、引退して自宅にいるようになってから、騒音と感じるケースも多い。こうした訴えに耳を傾けて継続的に合意形成を図ることが重要だ。 
○合意が得やすくなるポイント 
地域にふだんからいろいろな会話ができる人間関係があれば、子どもの声もあまりストレスや怒りにつながらないのではないか。また、行政にも、住民の意見を受け止めながら、調整する仲介役としての役割を果たすことが求められる」

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