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アルツハイマー病 新薬レカネマブ 有効性や安全性は?臨床試験結果

  • 2023年1月17日

アルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」は製薬大手の「エーザイ」などが開発しています。最終段階の臨床試験を行っている国際的な研究グループは、2022年11月29日、この薬に症状の進行を遅らせる有効性が確認されたとする論文をアメリカの医学雑誌に発表しました。この薬の仕組みや臨床試験の結果、承認に向けた動きについてまとめました。
(1月17日更新)

アルツハイマー病と「レカネマブ」働きの仕組み

アルツハイマー病になった患者の脳では「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまっていて、これによって神経細胞が壊れると考えられています。

製薬大手の「エーザイ」がアメリカの製薬会社「バイオジェン」と共同でアルツハイマー病の治療薬として開発を進めてきた「レカネマブ」は、「アミロイドβ」が固まる前の段階で人工的に作った抗体を結合させて取り除こうというものです。

神経細胞が壊れるのを防ぎ、病気の進行そのものを抑える効果が期待されています。ただ、壊れてしまった神経細胞を再生させることはできないため、発症する前の「軽度認知障害」の段階や、発症後、早期に投与することが重要だとされています。

「レカネマブ」医学雑誌に発表した臨床試験結果

「レカネマブ」の最終段階の臨床試験を行っている「エーザイ」と、東京大学やイエール大学などの研究グループは2022年11月29日、アメリカの医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に臨床試験の結果を発表しました。

〇臨床試験
50歳から90歳までの早期のアルツハイマー病の患者およそ1800人を対象に行われ、薬を投与するグループと偽の薬を投与するグループに分けて、患者の認知機能の変化などを調べました。

〇認知機能の低下は
それによりますと、薬の投与を始めて1年半後の時点で比較すると「レカネマブ」を投与したグループでは、偽の薬を投与されたグループより認知機能の低下がおよそ27%抑えられ、症状の進行を遅らせる有効性が確認できたとしています。

〇アミロイドβの量
またアルツハイマー病の原因とされる脳にたまる異常なたんぱく質、「アミロイドβ」の量も薬を投与されたグループでは大幅に減少したということです。

〇安全性
一方で、薬を投与された患者の17.3%の人で脳の出血が、12.6%の人で脳の腫れが報告されたということです。これは、偽の薬を投与された患者よりも高い割合で、研究グループは今後も長期的な安全性の確認を行っていくとしています。

研究に関わった東京大学の岩坪威教授は「症状の進行を遅らせるはっきりとした効果が確認された画期的な成果だ」と話しています。

国際的なアルツハイマー病の会議で報告の内容

また、研究グループは、日本時間の30日、アメリカで開かれている国際的なアルツハイマー病の会議でも今回の臨床試験の結果を報告しました。

〇臨床試験
「レカネマブ」を投与したグループと、偽の薬を投与したグループで認知機能の低下に変化があるかを調べました。

〇認知機能の低下は
そしてデータを詳しく分析した結果、レカネマブを投与したグループでは偽の薬のグループと比べて認知機能の低下を7か月半、遅らせるとみられることが分かったということです。

〇軽度な症状の持続
さらに別のシミュレーションでは「レカネマブ」の投与によって、アルツハイマー病がより軽度の状態で持続する期間がこれまでよりも2年半から3年1か月、延長される可能性が示唆されたということで、グループではこうしたことから「介護負担の軽減につながる可能性がある」としています。

〇安全性
一方、安全性について臨床試験の期間中に死亡した人の割合はレカネマブを投与したグループで0.7%、偽の薬を投与したグループでは0.8%と、ほとんど差はなかったということです。
また、その後の試験では、レカネマブを投与されたあわせておよそ1600人のうち2人が脳の出血で死亡したと報告されましたが、エーザイは、死亡した2人にもともと重大な合併症があったこどなどから「レカネマブによる死亡ではないと評価した」としています。

米FDAが「迅速承認」 国内でも承認申請

「レカネマブ」は、日本時間の2023年1月7日、アメリカのFDA=食品医薬品局に深刻な病気の患者に対し、より早く治療を提供する「迅速承認」という仕組みで承認されました。

エーザイの内藤晴夫CEOは会見で、アメリカでの薬の価格を患者1人当たり年間、日本円にしておよそ350万円に設定したことを明らかにし、アメリカでは薬の投与の対象となる早期のアルツハイマー病の患者が3年後には10万人になるという見方を示しました。

さらに「エーザイ」は1月16日、厚生労働省に「レカネマブ」の承認を求める申請を行ったと発表しました。「エーザイ」は国内では「ことし中の承認を目指したい」としています。

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