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あおちゃんに心臓移植を 円安などで費用5億円超に 両親など寄付募る

  • 2022年11月15日

佐藤葵ちゃん(1)は、重い心不全で心臓移植が必要です。国内では早期移植が望めないとして両親はアメリカで移植を目指すことを決めました。ただ、円安などの影響で費用が高くなり5億円以上が必要だということで、支援者でつくる「あおちゃんを救う会」と両親が募金活動を始めました。その結果、およそ1か月で目標額が集まったということです。子どもの臓器移植をめぐる現状、葵ちゃんの状況や両親の思いです。(12月13日追記)

重い心不全で補助人工心臓 根本的な治療には移植が

1歳の女の子、佐藤葵ちゃんは、生後まもなく心室の壁に穴が開いているのが見つかり、2回心臓の穴をふさぐ手術を行いました。
手術は成功しましたが、重い心不全で心臓から血液を十分に送ることができない状態になってきたため、2022年6月、補助人工心臓の装置を取り付けました。

小さい子どもの場合、体の外にある装置で血液の循環を補助する体外式の補助人工心臓しかなく、装置の不具合や血栓ができるのに備えるため、医療スタッフが24時間近くにいることが必要で葵ちゃんは病院から外に出ることができません。
いまは母親の清香さんが病院に寝泊まりして付き添っているということです。

補助人工心臓を長期にわたって装着していると脳梗塞や脳出血などが起きるリスクが高くなり、根本的な治療のためには心臓移植が必要になるということです。

“国内では早期移植を望めない” 米で移植を目指す

葵ちゃんは、埼玉医科大学国際医療センターに入院していますが、国内では早期の移植が望めないとして、両親はアメリカのコロンビア大学病院での移植を目指すことを決めたということで、支援者でつくる「あおちゃんを救う会」と父親の佐藤昭一郎さんと清香さんは11月14日、厚生労働省で記者会見して募金を呼びかけました。

母親の清香さん
「娘は病院から出たことがなくても毎日新しいことを学びながら頑張って生きています。こんな形でお願いするのはわがままだし葛藤がありましたが、ただ娘を助けたいという気持ちです。どうか助けていただけないかと思います」

円安で高額な移植費用がさらに高騰 家族だけでは…

海外での心臓移植は現地の医療費が高額なうえ、補助人工心臓をつけた状態での渡航でチャーター機が必要なため、2021年の段階でも3億5000万円程度かかるとされていましたが、2022年に入っての急激な円安などで、為替レートによるもののおよそ5億3000万円が必要と見込まれるということです。
両親は会見のあと。支援者とともに街頭に立って募金を呼びかけていました。

父親の昭一郎さん
「とんでもない金額が必要になり、家族だけではどうすることもできなくなってしまいました。なんとか娘の命を救いたい。どうかご協力をお願いできればと思います」

新型コロナの影響で子どもの臓器移植は

子どもの臓器移植は、2010年に施行された改正臓器移植法で家族の意思があれば脳死と判定された子どもからの臓器提供が可能になって以降、国内でも行われてきました。

このうち、10歳未満からの臓器提供は去年までの10年間で31件行われていますが、新型コロナの影響でおととし以降は減少しています。2022年9月末現在で心臓移植を待っている10歳未満の患者は43人に上り、待機患者に比べて臓器提供が少ない状況が続いています。

千里金蘭大学 福嶌教偉学長
「海外に渡航しての移植は複数の補助人工心臓の装置やチャーター機などを用意する必要があるうえ、現地で移植を待つ間だけでも1か月に数千万円の費用がかかるなど非常に負担が大きい。子どもの臓器提供は国内でもコロナが拡大する前の年までは増え、そのまま増えれば渡航せずに移植医療が成立するのではないかと考えられるほどだった。お子さんや家族の負担を考えると、国内で移植ができるようになるのが最も望ましく、救急現場でコロナなどで大変な中でも医療者と患者さんの家族との間でコミュニケーションがとれ、臓器提供という選択肢について説明する機会を持てるようにすることが必要だ」

12月12日 目標額が集まり両親は

支援者でつくる「あおちゃんを救う会」によりますと、12月12日の時点で目標の額が集まったということです。葵ちゃんは2023年1月以降に渡航できるよう準備を進めるとしています。
葵ちゃんの心臓移植に必要な費用が集まったことを受けて、両親はオンラインで会見を開き、次のように話していました。(12月13日追記)

父親の昭一郎さん
「募金を呼びかける前は本当に必要な金額が集まるのか不安もありましたが、多くの人から温かいことばや支援をいただき、驚きと感動と感謝でいっぱいです。移植を受けられるまでは感染症などのリスクもあり心配な部分があるので、なるべく早くアメリカへ渡れるように準備を進めていきたいです」

母親の清香さん
「葵は最近よく笑うようになり、好き嫌いやもっと自分にかまってほしいという気持ちがわかりやすくなっていて、成長を感じています。海外での移植については、渡航自体にリスクもある上、環境も変わるので、国内での移植を希望していましたが、現状はすぐには変わらないので娘の命をつなぐためには今回の選択肢しかなかったと思います。移植費用が集まったことでスタートラインに立つことができたので、ここからは家族と医療者で全力で葵を支えていきたいです」

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