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東京都 都立高校入試でスピーキングテスト 公平・公正?課題も多く

  • 2022年10月28日

受験生や保護者が気になる入試について。11月27日、都立高校の入試で「スピーキングテスト」が行われます。グローバル人材の育成を図るため、「使える英語」教育に力を入れる東京都が「話す力」をはかろうというテストで、初めて実施されます。
現場を取材すると課題も見えてきました。

中学校の現場では

都内の公立中学校で行われている英語の授業です。教師の質問に、生徒どうしが積極的に英語で意見を交わします。

中学3年生

やっぱり将来高校・大学に行って、大人になって自分が英語を幅広く使えるようになるのがポイント。

三鷹市第三中
進藤大岳教諭

なるべく口を多く使う授業を意識しています。文法からいくと正解を考えてしまうので、まずは口でたくさん話をしてから文法はあとからかぶせる。

スピーキングテストとは?

今回、導入される「スピーキングテスト」。
「書く」、「読む」、「聞く」、「話す」の4つの技能のうち、これまで唯一、テストにはなかった「話す力」が都立高校の入試ではかられます。

テストでは、イラストの状況を英語で説明したり、自分の考えを話したりして、専用のタブレットに解答を録音します。

東京都教育庁 瀧沢佳宏指導推進担当部長
「世界の一員であるというそういう意識であったりそれから多文化共生の精神というものを育成、導入することによってようやく普段の学習と、それからそれに対応した評価、あるいは入試のあり方というのが、やっと実現する」

公平・公正保たれる?不安の声

期待の一方で、テストに公平・公正さが保たれるのか、不安の声もあがっています。

こちらの塾では、専用の教材を導入して、本番さながらに練習を重ねています。
テストでは、解答の音声データは、教育サービスの大手企業を通じてフィリピンにいる英語の指導資格を持つ講師が採点する流れになっています。
海外で採点されるうえ、書いたり読んだりする設問のように決まった解答がないことに受験生は戸惑いを感じています。

塾の生徒

自分で全部考えるし、人によって答えが違うから、暗記じゃないので大変。今までやったことないスピーキングテストで基準もわからないし、どう点数がつくのかわからない。

不受験者・実施体制は?

テストの公平・公正さをめぐって、保護者は別の不安を感じています。
中学3年生の息子がいる高柳恵美さんです。
テストを受けなかった受験生の扱いが入試になじまないのではないかと考えています。今回、体調を崩したり、今後、都内に引っ越したりして、テストが受けられなかった場合、同じレベルの受験生の点数が加点される仕組みになっています。

これにより、テストを受けなかった受験生が受けた人よりも高い点数をとる「逆転」が起きる可能性があるのではないかというのです。

高柳恵美さん
「学校によっては割と多い人数が不受験者にあたるっていうのをちょっと知りました。ちょっとびっくりした」

さらに、ネットなどで調べると、試験監督を務めるのがアルバイトだとわかり、一層、不安を募らせています。

高柳恵美さん
「義務教育課程にある子どもたちが全員受けるよって言われているテストなのに、安心とか安全が守られないんじゃないか」

スピーキングテスト 課題多く

実施まで1か月を切ったスピーキングテスト。その課題について都庁担当の生田隆之介記者が解説します。

アナウンサー

これからの時代に英語を話せることは大事ですが課題も多そうですね。

記者

受験生や保護者から指摘されたのは、次の3点です。

(1)採点の基準や方法の不透明さ
(2)不受験者の扱い
(3)テストの実施体制

入試で最も大切な公平・公正さをどう担保するのか。都の担当者に聞きました。

東京都教育庁 瀧沢佳宏指導推進担当部長
(1)採点方法は?
資格を持つ専任者が明確な基準に基づいて、複数人で行ってそして評価を確定する。万全の態勢をとりながら公平公正な採点を実施していきたい

(2)不受験者は?
意図的に不受験をしたことによって得点が与えられるような仕組みではない。特別な状況背景がある方々に向けた対応としては、合理的で最善のものであるというふうに判断して、この仕組みにした。

(3)実施体制は?
非常に大きな規模の試験ですので、業務の中にはそのような雇用で(アルバイト)実施をするという部分も含まれている。(スタッフ)全員についてそれぞれの職層に応じて研修を行う。

新しい取り組みでありますし不安に感じるというのはある意味で当然であると、引き続き丁寧に説明を続けていきたい、その責任を感じています。

アナウンサー

対策については、考えられているようですね。

記者

はい。ただ、導入に慎重な複数の専門家は、「入試に求められる公平性、公正性、機密性などを担保するのには、採点や試験監督などを行う大勢のスタッフへの入念な訓練や能力のチェックが必要だ」としてテストまで1か月に迫った中でもやれることはやってほしいと話していました。

英語の「話す力」をはかるテストは、大学入学共通テストで導入が検討されたほか、岩手県では実際に導入もされました。

しかし、採点にかかる教職員の負担や、採点の不公平感などが課題となり、本格導入には至りませんでした。グローバル化が進む中、世界で活躍する人材を育成しようという都の狙いは理解できます。

ただ、受験は、子どもたちの人生を左右する大切なもの。テストが1か月後に実施されるにあたって、受験生が少しでも不公平感や不安を抱くことがないよう、丁寧な説明を尽くし、万全の準備を整えてほしいと思います。

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