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円安メリットとデメリット ボージョレ・ヌーボー値上がり 貿易収支は?

  • 2022年10月20日

急速に円安が進んでいます。1990年以来、およそ32年ぶりの水準となった歴史的な円安は「悪い円安」とも指摘されています。エネルギー価格の高騰や輸送費の上昇などに加えて円安が進んだことは、貿易赤字を拡大させ、身近なところではボージョレ・ヌーボーの価格にも影響しているということです。円安のメリットとデメリットについて現時点の動きをまとめました。

ボージョレ・ヌーボーが大幅値上がり

ことしは11月17日に販売が解禁されるフランス産のワインの新酒、ボージョレ・ヌーボーの価格にも影響しています。

ことし最初の航空便が10月19日に羽田空港に到着しましたが、輸入元の会社によりますと、ウクライナ侵攻の影響で輸送費が上昇している上に、円安の影響も重なり、店頭価格は去年より大幅に値上がりする見通しです。

この会社の商品の店頭価格は、375ミリリットル入りが2021年の2.2倍、主力商品の750ミリリットル入りはおよそ1000円値上がりし2021年の1.4倍と、これまでで最も高くなるということです。

ボージョレ・ヌーボーの大幅な値上がりを受けて、ワイン販売店の中には購入費用を抑える客が増えると見込んで「ハーフボトル」の入荷を増やすところも出ています。

東京・渋谷区にあるワイン販売店では750ミリリットル入りの入荷を減らし、375ミリリットル入りの「ハーフボトル」の本数を2倍に増やしたということです。
この店では、8月からオンラインでの予約を始めていますが、値上がりの影響もあって現時点では、去年より予約が少なくなっているということです。

販売店 堺健志郎ワインマネージャー
「手ごろな価格で気軽に楽しめるのがボージョレのいいところなので値上げは痛手で、残念です。ただ、品質は高いと生産者から聞いているので、楽しみにしているお客様にアピールしていきたい」

円安のメリット・デメリット

〇円安のデメリット
円安のデメリットは、原材料を輸入する際のコストが一段とかさむことが挙げられます。
ロシアのウクライナ侵攻以降、原油などのエネルギーや穀物など、原材料価格は高止まりしています。さらに円安で輸入コストの上昇に拍車がかかれば、企業業績を圧迫することになり、家計にも影響が及ぶことになります。

〇円安のメリット
円安のメリットとしては、輸出企業にとって、海外に安く製品を売れるため、価格競争力が高まり、収益が増えることが挙げられます。
また、外国人観光客を呼び込むプラスの面もあり10月11日から水際対策が大幅に緩和され、今後、インバウンド需要の高まりが期待されています。

円安メリット 海外での価格競争力高まり輸出強化も

日本製の家電製品の輸出を強化しようという動きも出てきました。日立製作所は、子会社が手がける冷蔵庫などの白物家電の輸出の割合を2023年3月までに、これまでの5%程度から、10%に引き上げることを決めました。

いまの円安の加速で、海外での価格競争力が高まっていることから、輸出割合を引き上げることを決めたということです。輸出先は、中国や台湾、それに東南アジアで、高価格帯の製品として富裕層を中心に販売を強化する戦略です。

日立グローバルライフソリューションズ 伊藤芳子常務
「円安が進んでいる状況のもとで積極的に海外に日本製品のブランドを知っていただく非常によい機会だ。ビジネスとして円安を享受したい」

貿易収支 上半期は過去最大の赤字 背景に円安も

〇過去最大の赤字
財務省が発表した4月から9月までの2022年度上半期の貿易統計は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が11兆75億円の赤字となりました。
赤字額は去年の同じ時期よりも10兆円あまり増えて、比較が可能な1979年以降で、年度の半期としては過去最大となりました。

〇輸入額 最大(エネルギー価格高騰・円安)
輸入額が60兆5838億円と去年の同じ時期と比べて44.5%増え、過去最大となったことが主な要因です。
原油や液化天然ガスなどエネルギー価格の高騰に加えて、税関が公表しているこの期間の為替レートで円がドルに対して去年より20%あまり下落するなど、円安が加速していることも輸入額の増加につながりました。

〇輸出額 最大(輸入急増補えず)
一方、輸出額は49兆5763億円でした。自動車や鉄鋼半導体電子部品などが伸びて輸出額は去年の同じ時期よりも19.6%増え、こちらも過去最大となりましたが、輸入の急増を補うことはできず結果として貿易赤字が拡大しました。

デメリット > メリット「悪い円安」

日本経済がコロナ禍からようやく回復しつつある状況の中で、さらに円安が進めば、輸入されたモノの価格を押し上げ、企業収益を圧迫し、消費を冷え込ませかねません。いまの円安はメリットよりもデメリットの方が大きい「悪い円安」だという声が強まっています。

経済同友会 櫻田代表幹事(10月19日会見)
「円安はデメリットのほうが多いと感じている。日本のGDPの7割近くを占めるサービス産業が原材料を輸入したりサービスを提供したりする際のコストを考えると、円高の方がメリットがある。円安が日米の金利差やアメリカでのインフレに基づくものだけでなく、日本の経済力や国力に起因するものが少しでもあるとしたら大変心配だ」

日米の金利差拡大 円が売られやすい状況

円安の背景には、記録的なインフレを抑え込むため、大幅な利上げを続けるアメリカのFRBと、大規模な金融緩和を続ける日銀の方向性の違いがあります。

日米の金利差の拡大を見込んで、円を売って、より利回りが見込めるドルを買う動きが加速し、10月20日、東京外国為替市場は、アメリカで大幅な利上げが続くという観測が強まって一段と円安が進み、円相場は一時、1ドル=150円台まで値下がりしました。

市場関係者は「日米の金利差が拡大するとの見方から、じりじりと円安が進んでいるが節目として意識される1ドル=150円台に達したことで政府・日銀による市場介入の警戒感がよりいっそう強まっている」と話しています。

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