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抗原検査キット ネットでの販売解禁へ 医療用と研究用の違いは

  • 2022年8月17日

新型コロナウイルスの抗原検査キットについて、厚生労働省は17日、専門家による部会を開き、インターネットでの販売を解禁することを決めました。
現在も販売されているのでは?と思うかもしれませんが、抗原検査キットには、医療用と研究用の2種類が流通しています。その違いや、検査の精度、在庫状況などについてまとめました。

ネットでの販売も可能に

国の承認を受けている抗原検査キットは、これまで医療現場での使用に加え、薬剤師が使用方法を購入者に説明することを条件に、去年秋から薬局での販売が特例的に認められていました。

しかし、経済社会活動がさらに活発化すれば陰性証明を求められる機会が増えることや、いわゆる第7波で医療機関に患者が殺到して検査を受けにくい状況になっていることなどから、専門家から、安く確実に入手できる体制を確保すべきだなどとする提言が出されていました。

こうした中、17日臨時で開かれた厚生労働省の専門家による部会では、抗原検査キットの販売をインターネットなどでも行うことを認めるかどうかが審議されました。

専門家の意見
「正しい検査方法や陽性だった場合の対応について購入した人への詳しい説明が必要だ」
「医療現場で検査キットが確保できないことがないよう、医療機関への供給を最優先にし、在庫を管理すべきだ」

その結果、厚生労働省は部会での議論を踏まえ、国が承認しているものと同じ検出性能であることなどを条件に特例としてインターネットでの販売を解禁することを決めました。

インターネットでの販売にあたっては、薬剤師などがメールなどで正しい使用方法や感染していた場合の対応について説明することが必要になる見通しが示されました。
また製造メーカーや販売業者、さらに購入した人に向けたガイドラインの策定も終え、すでに業者には通知を出しているということで、早ければ8月中に販売が開始される見通しです。

抗原検査キット 医療用と研究用が

抗原検査キットをめぐっては、現在、国の承認を受けたものと、受けていないものの2種類が流通しています。

国の承認を受けているのは、「医療用」とされ、主に医療機関での検査に使用することに加え、昨年秋から、薬局で一般の人向けに販売することが特例的に認められています。

薬局での販売は、薬剤師が購入者に対し使用方法を説明することが義務づけられています。医療用の検査キットは医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構が審査を行い、その上で厚労省が承認し、使用できることになっていて、「体外診断用医薬品」と必ず明記されています。現在30のメーカーのあわせて56種類あります。

一方、承認を受けていないものは「研究用」の検査キットと称して市場に出回っていて、インターネットなどで販売されています。しかし、国としては性能確認などは行っていません。
中には、国に承認されたものであるかのような表示の検査キットもあり、厚生労働省は「研究用の検査キットは国が認めたものではなく、精度が不明なため、使用しないでほしい」として注意を呼びかけています。

課題は検査の精度

厚生労働省によりますとPCR検査は結果が出るまで1日程度かかります。
抗原検査は15分ほどで結果が出ます。一方でPCR検査と比較すると精度は劣るとされています。
体内のウイルスの量が少ない場合は感染しているにも関わらず、陰性の結果が出る「偽陰性」となる場合もあり、無症状の人が用いることは推奨されていないほか、陰性となっても症状がある場合は医療機関の受診が必要です。

また、検査キットは2度から30度の間で保存する必要があり、温度が保てない場合、結果が正しく出ないおそれがあります。

インターネットで購入する場合、夏の暑い時期は時に、輸送時のトラック内の温度が高くなることから、輸送業者は温度管理を徹底することが必要となります。また購入後、自宅で保管する場合も規定の温度内を保つことができる、涼しい場所で保管することが望ましいとされています。

抗原検査キットの在庫は?

厚生労働省によりますと検査キットの国内の在庫は8月8日時点で、およそ1億5000万回分あります。

ドライブスルーでキット配る自治体も

7月下旬からは発熱外来のひっ迫を防ぐため、国が検査キットを買い上げて自治体を通じて住民に無料で配布する取り組みが進められていて、これまでに2400万回分を買い上げて、8月10日までに徳島県をのぞく46の都道府県に配布したということです。

国はインターネットでの販売が解禁された後も安定して在庫を確保できるよう、毎週、生産量や輸入量在庫量をモニタリングしていくとしています。

専門家「医療機関もメリット大きい」

コロナの検査に詳しい長崎大学の柳原克紀教授は次のように指摘しています。

長崎大 柳原克紀教授
○ネット販売解禁について
今回の『第7波』では検査や受診を希望する人で医療機関があふれ、重症化リスクがある人の診療が遅れてしまう問題も起きている。多くの自治体では、自分で検査して陽性であれば、感染者として登録できる仕組みになっているので、より簡単に検査キットを購入できるようになることは、患者にとっても、医療機関にとってもメリットが大きい。

○「研究用」検査キットについて
「医療用の流通が限られていたので、研究用が広く売られていたが、インターネット販売によって医療用のキットが広く流通し、十分な量が供給されれば、研究用キットの意義は無くなっていくと思う。

○注意点は
これまで、抗原検査キットの販売を薬局で、薬剤師が対面で指導する場合に限っていたのは、定められた手順通りに検査しないと、誤った結果が出る可能性があるからだ。本当は感染しているのに、誤って陰性という結果が出ると、そのまま社会生活を継続して感染を広げてしまう可能性もある。
こうしたリスクを避けるためにも、インターネットで購入した検査キットを使用する場合は説明書をきちんと読み、動画なども参考にしながら正確な手順で行うことを徹底してほしい。

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