暑さで、眠ろうとしても寝つきが悪かったり、眠りの途中で目が覚めたりするなど、ぐっすり眠れずに疲れがたまっていませんか。今後も猛暑日や“熱帯夜”も予想されますが、睡眠は疲れを取るためだけではなく、熱中症予防にも重要ということです。暑さのなかでも良質な睡眠をとるための情報をまとめました。
この夏、東京都心の猛暑日は8月4日までで13日と過去最多となっています。また、都内では、8月3日までの1週間のうち、夜間の最低気温が25度以上となる「熱帯夜」が6日間あるなど、からだにこたえる夏となっています。
東京・中央区に本社がある大手寝具メーカーによりますと、健康を保つためには、熱帯夜でも十分な睡眠をとることが大切で、そのポイントになるのが、湿度を適切に保つことだといいます。
具体的には、蒸し暑さによる不快感を軽減するようエアコンを使うなどして、湿度を50パーセントから60パーセントに保つよう調整します。
西川株式会社 長谷川夏美さん
「寝室は、人の出入りがほかの部屋に比べると少なく、いざ寝ようと思ったときに寝室の湿度が上昇している状態ということが実は多いです。エアコンをすぐにつけるのではなくて、窓やドアを開けて十分に換気を行ってからエアコンをつけるということだけでも、かなり湿度のコントロールが上手にできるようになります」
また、寝具も触るとひんやりと感じる素材の敷きパッドや、汗の不快感を軽減する乾きやすい麻や綿のタオルケットが、暑い夜には涼しさを感じられ、効果的だといいます。
寝るときの服装も大切で、麻や綿の素材で、長袖、長ズボンのパジャマは汗が乾きやすい上、「寝冷え」も防ぎやすいとしています。
「寝ているときに接触面積が大きいのは背中の部分です。そこに汗や湿気がたまることが不快さの原因になる。敷きパットを1枚加えると、からだが触れている面積に生じた湿気や汗を上手に吸ってくれます」
このほかにスムーズに眠り始めるには、体の内部の温度、「深部体温」を下げることもポイントになります。眠りにつく1時間から2時間ほど前に38度から40度の風呂に入って体を温めると、その後、「深部体温」が下がって眠りやすくなるといいます。
シャワーだけの場合でも、首や足首などを温めると「深部体温」を下げる効果を得やすいということです。
睡眠と暑さの関係に詳しい和洋女子大学の水野一枝准教授は、睡眠不足になると体温調節がうまくできず、熱中症になるリスクが高まる可能性があるため、十分な睡眠をとれる環境を整えることが重要だと指摘しています。
水野准教授は、十分に睡眠がとれない場合の影響として、日中、眠くなるため、仕事や車の運転など日中の活動に支障が出るほか、生活習慣病やうつ病のリスクが高くなること、それに、免疫力が下がるなどの報告があるとしています。
さらに、睡眠時間を減らし、その翌日に運動する実験を行ったところ、体温調節がうまくできなくなるといったデータが得られたということで、睡眠不足になると熱中症のリスクが高まる可能性があると指摘しています。
和洋女子大学の水野一枝准教授
「暑いなかで眠ると深い眠りにはつけません。室温が28度ぐらいまでだとわりと眠れるのですが、29度を超えてくると影響が出てきます。タイマーも最低でも4時間くらいは使わないと効果がないという研究結果を出しているので、睡眠の前半、しっかり4時間くらいは使う、できれば寝ている間はずっと使うことがおすすめです。寒い場合は寝具で調整するのが効果的です。健康状態を良好に保つために睡眠はとても大切なので、しっかり眠れる環境を整えてほしい」