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関東地方の利用者少ない線区の収支は 営業係数などJR東日本公表

  • 2022年7月29日

JR東日本は人口減少に加えて新型コロナの影響で地方鉄道の利用者が減少する中、「線区」と呼ばれる区間ごとの収支の状況を初めて公表しました。公表された線区について100円の運賃収入を得るためにいくらの費用がかかるかを示す「営業係数」と「赤字額」について関東地方の線区の2019年度の状況をまとめました。

JR東日本 35路線66区間の収支を公表

JR東日本は1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人未満の利用者が特に少ない、35の路線、66区間を対象に、区間ごとの収支の状況を初めて公表しました。

収支は新型コロナの感染拡大前の2019年度と、2020年度の2年分が公表され、いずれもすべての区間で赤字でした。
66の区間の赤字は2019年度では、あわせておよそ693億円に上ります。

〇赤字額最多の線区
このうち赤字額が最も多いのは、羽越本線の新潟県の村上駅と山形県の鶴岡駅の区間で、2019年度の赤字額は49億900万円となっています。

〇採算が最も悪い線区
また、100円の運賃収入を得るためにいくらの費用がかかるかを示す「営業係数」では、2019年度は、久留里線の千葉県の久留里駅と上総亀山駅の区間が1万5546円と最も採算が悪くなりました。

関東地方の公表線区 営業係数と赤字額(2019年度)

公表された線区について、100円の運賃収入を得るためにいくらの費用がかかるかを示す「営業係数」と「赤字額」は新型コロナの感染拡大前の2019年度で以下のようになっています。関東地方の線区の状況です。

輸送密度2000人未満 区間ごと収支データ(2019年度 関東地方分)
線名 区間 営業係数 赤字額
久留里線 木更津~久留里 1200円 9億6700万円
久留里~上総亀山 1万5546円 3億4200万円
内房線 館山~安房鴨川 1029円 14億600万円
外房線 勝浦~安房鴨川 805円 12億2000万円
鹿島線 香取~
鹿島サッカースタジアム
1070円 8億6700万円
水郡線 常陸大宮~常陸大子 1571円 12億1000万円
常陸大子~磐城塙 5033円 5億200万円
烏山線 宝積寺~烏山 955円 7億円
上越線 水上~越後湯沢 1352円 15億7200万円
吾妻線 長野原草津口~大前 2367円 4億6500万円

【久留里線】
〇営業係数
千葉県の木更津~久留里 1200円
千葉県の久留里~上総亀山 1万5546円
〇赤字
千葉県の木更津~久留里 9億6700万円
千葉県の久留里~上総亀山 3億4200万円

【内房線】
〇営業係数
千葉県の館山~安房鴨川1029円
〇赤字
千葉県の館山~安房鴨川 14億600万円

【外房線】
〇営業係数
千葉県の勝浦~安房鴨川 805円
〇赤字
千葉県の勝浦~安房鴨川 12億2000万円

【鹿島線】
〇営業係数
千葉県の香取~茨城県の鹿島サッカースタジアム 1070円
〇赤字
千葉県の香取~茨城県の鹿島サッカースタジアム 8億6700万円

【水郡線】
〇営業係数
茨城県の常陸大宮~常陸大子 1571円
茨城県の常陸大子~福島県の磐城塙 5033円
〇赤字
茨城県の常陸大宮~常陸大子 12億1000万円
茨城県の常陸大子~福島県の磐城塙 5億200万円

【烏山線】
〇営業係数
栃木県の宝積寺~烏山 955円
〇赤字
栃木県の宝積寺~烏山 7億円

【上越線】
〇営業係数
群馬県の水上~新潟県の越後湯沢 1352円
〇赤字
群馬県の水上~新潟県の越後湯沢 15億7200万円

【吾妻線】
〇営業係数
群馬県 長野原草津口~大前 2367円
〇赤字
群馬県 長野原草津口~大前 4億6500万円

吾妻線の群馬県の長野原草津口と大前の間は「輸送密度」が320人で2019年度の赤字額が4億6500万円に上りました。
このうち長野原町にある長野原草津口駅では、28日の午後2時から30分ほどの間にホームにいた人の姿はまばらで、午後2時39分に出発予定だった4両編成の列車の乗客は数人でした

高校生

毎日使うので無くなってしまうと困る。無くなるであればバスをしっかり走らせてほしい。

88歳男性

赤字、赤字と言われると、利用するのが申し訳ない気持ちになるけれど簡単に無くしてしまうのは困る。

高校生

(赤字は)すごい額だなと思う。バスが出るのであれば廃線になってもしかたないと思う。乗っている人はいつもかなり少なく、がらんとしている。

嬬恋村 未来創造課 熊川明弘課長
「路線の廃止や廃線を前提とはせずにJR東日本と群馬県、そして、沿線の市町村で活性化のための協議会を作り乗車率の向上や利用促進に取り組んでいる。村内の高校に通学で利用している生徒もいるので、存続させていくために話を進めていきたい」

“沿線自治体と議論進める必要がある”

地方鉄道をめぐっては7月25日、国土交通省の検討会が「輸送密度」が1000人未満の区間などを対象に、バス路線などへの転換も含め、協議を進めるべきとする提言をまとめています。
JR東日本は区間ごとの赤字の状況を明らかにすることで今後の地方鉄道のあり方についての沿線自治体などとの議論につなげたい考えです。

JR東日本 高岡崇執行役員
「運行費用のコストダウンに取り組んできたが、厳しい経営状況が続いている。地方路線の利用を増やすため、地域と一緒になって議論を活性化させていかなければならない。地域によっては鉄道が最適な交通手段ではない区間もあると考えていて、沿線の自治体と建設的な議論を進めていく必要がある。国土交通省の検討会で新たな協議会をつくるべきだという提言がとりまとめられたので協議会ができた場合は活用していきたい」

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