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サル痘 国内初確認 症状 ワクチン 治療薬は? WHOは緊急事態宣言

  • 2022年8月3日

「サル痘」についてWHO=世界保健機関は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、国内でも感染が確認されています。厚生労働省は欧米などに滞在した人で発しんなどの症状がある場合は念のため医療機関を受診するよう呼びかけています。
ワクチンや治療薬など国内の備えや専門家の見方などをまとめました。(8月18日更新)​​​​​

サル痘 欧米や南米などで増加 感染者3万5000人超に

WHOが8月17日に報告した内容によりますと、サル痘の感染者は欧米や南米などで増加していて、これまでに92の国と地域で3万5000人を超えたほか、12人が死亡したということです。
感染が確認された人の多くが男性で、感染のほとんどが男性どうしによる性的接触で起きているということですが、女性や子どもへの感染も報告されているということで、各国に対して感染者の追跡調査の徹底などを呼びかけました。

WHOは、現在、新型コロナウイルス、それにポリオの感染拡大について緊急事態の宣言を継続していて「サル痘」は3つ目となります。

また、サル痘という名称が「特定の集団や動物への偏見につながる」という指摘が出ていることなどから、WHOは新たな名称の候補を一般から募り、協議を行ったうえで決定する方針だということです。

国内でも感染を確認

〇国内1例目
東京都や厚生労働省によりますと、都内に住む30代の男性がサル痘に感染していることが国内で初めて確認されました。
男性は、7月中旬にヨーロッパから帰国したあと7月15日にけん怠感を感じ、25日に医療機関を受診したあと、検査で陽性が判明したということです。
都によりますと、男性は渡航先でサル痘と診断された人と接触歴があり、都は、渡航先で感染したとみられるとしています。
さらに都は、保健所を通じて行動歴などを調査した結果、1人が接触者として特定されたと公表しました。接触者に症状はなく、いまのところほかに接触者はいないということです。

〇国内2例目
また、都は28日、北中米に住む30代の男性が都内に滞在中に「サル痘」に感染していることが確認されたと発表しました。国内でサル痘の感染が確認されたのは2人目です。男性の状態は安定しているということです。
男性は日本に入国する前にけん怠感があったため、都は海外で感染した可能性が高いとしています。
行動歴を保健所が確認したところ、1人が接触者として特定されました。男性が7月下旬に入国したあと1メートル以内での接触歴があったということです。この接触者には発熱や発疹などの症状はないということです。

都の担当者は「今後、感染が拡大していく可能性は低い」としています。サル痘は日本では8月10日までに4人の感染が確認されています。

 

政府は、世界のすべての国や地域を対象に「レベル4」まで4段階ある「感染症危険情報」のうち「レベル1」を出しました。政府は、海外への渡航を予定したりすでに滞在している日本人に、十分注意するよう呼びかけています。

また、厚生労働省は欧米などに滞在した人で発しんなどの症状がある場合は、念のため医療機関を受診するよう呼びかけています。

“いつ感染者が確認されてもおかしくなかった”

岡山理科大学 森川茂教授
〇WHOの緊急事態宣言について
「人から人への感染がここまで広がったことは初めてで、多くの国に感染が広がり、患者数の増加に歯止めがかかっておらず、国際的な協力体制がないと対応が難しくなっている。宣言をしたのは妥当な判断だと思う」

〇国内の感染確認について
「感染者が確認された国が世界で75か国まで広がっていた中で、日本から海外へ出張や旅行ができる状況だったので国内でもいつ感染者が確認されてもおかしくなかった。入国の際に症状が出ていなければ、検疫では見つけられなかった可能性が非常に高い。今回のケースについてまだ詳しいことは分からないが、例えば、海外から帰国後、数日以内に発症したというのであれば広がらずに収束させることができると思う」

厚生労働省 “自治体と協力して体制強化”

治療薬やワクチン、医療機関での受け入れ態勢などの整備を進めている厚生労働省は「どこで患者が見つかっても速やかに検査や治療につなげられるよう自治体と協力して体制を強化していきたい」としています。
治療薬やワクチン、検査などの具体的な対応は次の通りです。

「治療薬」 天然痘治療薬のテコビリマットを

治療薬については国内で承認されている薬がないため、サル痘と症状が似た天然痘の治療薬、「テコビリマット」という飲み薬を研究目的として投与できる仕組みを作っています。投与を受けられるのは現時点で、東京の国立国際医療研究センターと大阪のりんくう総合医療センター、愛知の藤田医科大学病院、それに沖縄の琉球大学病院の4か所です。

「ワクチン」 天然痘ワクチン使用を承認するか審議

ワクチンについて厚生労働省は、サル痘に対しておよそ85%の発症予防効果があるとされる天然痘のワクチンをサル痘に使用することを2日、正式に承認しました。
今後の感染状況などを踏まえ、患者と接触するリスクが高い医療従事者や、検査の担当者、保健所職員のうち、希望者を対象に予防のために接種を行うか、検討することにしています。

厚生労働省によりますと、天然痘ワクチンは国内で十分な量を備蓄しているということです。

「検査」 都道府県の地方衛生研究所で

検査については、厚生労働省はすべての都道府県の地方衛生研究所で実施できる体制を整備し、自治体に対して感染が疑われる患者がいれば速やかに報告するよう求めています。

感染が確認された場合は、全国に58か所ある感染症の指定医療機関などで優先的に受け入れ、患者の家族など感染したリスクが高い人がいれば毎日、保健所を通じて健康状態の確認を行うことも求めています。

サル痘の症状 今回の感染では

サル痘は、天然痘ウイルスに似た「サル痘ウイルス」に感染することで起きる病気です。国立感染症研究所やWHOなどによりますと、サル痘のウイルスの潜伏期間は通常、7日から14日間で、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日から5日間続き、その後、発疹が出るということです。

発疹は、典型的には顔面から始まって体じゅうに広がります。徐々に膨らんで水疱(水ぶくれ)になり、うみが出て、かさぶたとなり、発症から2~4週間で治癒します。

多くの場合は、軽症で自然に回復しますが、肺炎や敗血症などの合併症を引き起こすことがあり、年齢が低いほど重症化する可能性があるとされています。

ただ、今回広がっているサル痘では様相が異なっています。WHOが出した資料によりますと、今回の感染拡大では発疹が性器や肛門の周辺など一部にとどまっているケースや、発熱などの前に発疹が出るケースが特徴的だということです。入院したケースはほとんどないとしています。

また、すべての人に免疫がなかった場合などに、1人の患者から何人の人に感染するかを示す「基本再生産数」は0.8とされ、2を超えるとされる新型コロナウイルスなどと比べて、それほど感染力が強いわけではありません。

岡山理科大学 森川茂教授
「国や行政機関の対応としては、患者の隔離や濃厚接触者の調査、また、濃厚接触者がいる場合は21日間は発症しないかを調べることなどを徹底すれば、感染拡大は最小限に抑えられる。
新型コロナウイルスのように飛まつによって簡単に感染するウイルスではないので心配しすぎる必要はないが、患者さんが直接、触れた場所に触れると間接的に感染リスクがあるので、アルコールの消毒などの対策が有効だ」

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