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神奈川 三浦市 小網代湾「海底熟成ワイン」街の活性化に

  • 2022年7月20日

神奈川県三浦市の小網代地区。この地区の小網代湾は、長年漁業が盛んでしたが、今、海底にワインを沈めて熟成させるという取り組みが行われています。その名も「海底熟成ワイン」。ワインボトルを海底に沈めて冬場に半年間熟成させるものです。

水深10メートルほどの海底に…

穏やかな小網代の海。水深10メートルほどの海底に沈められているのが「海底熟成ワイン」です。

ワインボトルは、去年12月から半年間、小網代湾の海底で熟成させていました。6月下旬に、手数料を支払った利用者から預かったものなど、1700本のワインボトルが引きあげられました。瓶をほどよく揺らす穏やかな波や、およそ13度と安定した水温など、小網代湾の海底はワインの熟成に適した条件がそろっているといわれています。

中心はベテランの地元漁業者たち

取り組みの中心となっているのは、長年、地元で活躍してきたベテランの漁業者たちです。新しい特産品を作ろうと、鉄道会社や地域の人々の協力も得て4年前から試行錯誤を重ねてきました。そして、今回、初めて本格的な事業化となったのです。

地元の漁業者 出口浩さん
「去年かなりうまくできたので、これならいけるという確信がありました」

“漁師を経済面で支えたい”

平成4年の時の様子

漁業者たちはもともとワカメの養殖や近海の漁などで生計を立てていました。しかし、近年、海水温の上昇やウニなどに海藻が食べ尽くされる「磯焼け」と呼ばれる現象で、漁獲量が低迷していました。後継者不足にも悩まされるなど、厳しい状況が続いていたといいます。

地元の漁業者 木村俊一さん
「漁獲の減少、下がりっぱなしですので。ほかの面で、漁師が収入を得られるといいなと思っていました」

そこで目をつけたのが、海底でのワインの熟成です。ワインを沈める作業や見回りなどの管理を、漁の手が空く冬の時期の安定した仕事にして、漁業者の新たな収入源にできないかと考えたのです。

地元の漁業者 出口浩さん
「漁師だけじゃなく『こういう副業もできるんだ』って若い子たちが参加できるようなシステムができれば一番いい」

熟成させた1700本のワイン

6月末、ワインの引き上げの日を迎えました。

半年間熟成させたワインを、慎重に海面へ移動させます。漁業のノウハウを生かし、ロープさばきや、舟の操縦などはお手の物。1700本のワインをすべて無事に引きあげました。
若い漁業者たちも、手応えを感じています。

漁業関係者たち
「海底というロマンとか、思いが入っていますし、今すでに愛着すら感じています。楽しんで飲んでもらえたら、うれしいですね」

こうして完成した「小網代湾海底熟成ワイン」。

ワインボトルの表面にはフジツボや藻がついていました

さっそく関係者によるワインの試飲会が開かれました。その感想は…?

すごくまろやかですね。
角がなくなったっていうか。
おいしい。

満足いく仕上がりだったようです。

 

地元の漁業者 木村俊一さん
「何年か地道にコツコツとやって、その中でいろいろな問題点が出てくると思う。そういうものを解決しながら進めていけたらいいなと思う」

三浦市 小網代区長 三上成次さん
「ワインにかけています。ワインを宣伝して、小網代・油壺地区を活性化していきたい」

海底熟成ワインは、地元のホテルでの販売や三浦市のふるさと納税にも使用されるなど、街の活性化に役立てられるそうです。また、8月から熟成ワインの募集が始まるということです。

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