各地のすてきな温泉や銭湯を発掘するコーナー「#いいお湯見つけました」。
今回は、東京・台東区にある銭湯をご紹介します。
サウナや、ユニークな露天風呂があることでも人気の銭湯ですが、実は、40年以上前から時代を先取りした“ある取り組み”をしているんです。
(ひるまえほっと/リポーター 佐藤千佳)
出迎えてくれたのは、店主の梅田清治郎(うめだ・せいじろう)さん。こちらの銭湯の3代目です。
エコ銭湯にしているのは44年ぐらい前からです。
40年以上前から、エコ銭湯!時代を先取りですね。
そうですね。結構皆さん興味深々で。
どのあたりが、“エコ”なのか?秘密を知るべく、まずは浴場に案内してもらいました。
こちらには、10種類の浴槽があり、沢山のお湯を楽しめるのも魅力です。
奥に進むと、サウナも!そして…露天風呂まで!
これは?
“つぼ湯”で、お湯が張ってある状態なので、ざぶーんと入って、ザパーン!とお湯をあふれさせていただいて、贅沢感を味わってもらいたいです。
お湯をあふれさせても、大きな浴槽でお湯を受け止める仕組み。ザパーンと入っても、なんとなく、もったいなくない。
エコの秘密は、これですか?
これ…ではないんです。じゃあ、行きますか!
案内してもらうと…。“エコ”の秘密は、屋上に!
わ~!何ですか、これ!?
太陽の力で、水を温めているんです。
なんと、屋上一面に敷き詰められているのは、1000本のガラス管!
管の中には、集熱板が入っています。ここに地下水を通して、太陽の熱で40℃まで温めているんです!仕上げにガスを使っています。
その温まったお水。ちょっと触ってみてください。
あったかい!すごい!これ、太陽の熱で温まったんですか?
そうです。すごいですよね。
この、太陽の熱でお湯を温める設備は、初代である梅田さんの祖父・清松(せいまつ)さんが、45年前(昭和54年)に導入しました。
オイルショックや、重油の値上げを経験した清松さん。「油が切れたからといって銭湯を休業するわけにもいかない」と、先のことを見据えて考えたのが、太陽熱の利用でした。
設置工事の写真には、清松さんにおんぶされている2歳の頃の梅田さんが写っています。
梅田さんは、小さなころから、そんな祖父の姿を見てきました。
梅田さん、小さい時は、「屋上で遊べないじゃん!」と思っていましたが、今は、すごく恩恵を受けていて、ガスの使用量を減らすことで、計算によると、毎月10万円以上は節約になっているといいます。
「うちにはなくてはならないもの」だという梅田さん。
節約になった分で、お風呂の数を増やすなど、新たに設備投資をし、今も続けられているんです。
新しいものに変えるのは簡単なんですけど、当時のままを利用しながら自分で手直ししていって、先代に“ありがとう”の気持ちで、頑張ってやっています。
10種類の浴槽で、さまざまな温度や趣向のお湯を楽しめるのも、こちらの銭湯の魅力。
すべてが、太陽の熱で温められたお湯です。
今回は、露天スペースにある“つぼ湯”に入湯。
ちょっと珍しい「どんぶり」の形。つぼ湯の温度は、42度です。
ザブーン!とお湯をあふれさせながら入れば、ちょっとだけ贅沢な気分。
自然の力でゆっくりと温められたお湯で、体の芯から温まる、お風呂です。
梅田さん
「お風呂は家庭に、ほぼあるような状態なので、いろんな試みをして、いろんなお客さまを呼び起こせて、癒しを届けられたらと思っています。エコも含めて、今後またより良い銭湯づくりをしていきたいと思っています」
【編集後記】
お風呂の数や、新しいサウナ、軟らかいお湯で人気の銭湯ですが、その秘密「太陽熱を使ったエコ銭湯」ということを知らないお客さんもいました。今回驚いたのは、梅田さんの祖父・清松さんが太陽熱の設備を導入した頃は、日本で太陽光などの再生可能エネルギーが注目されはじめたばかりだったということ!「先見の明」、すごいですよね!
太陽熱でお湯を温め、ガスの使用量を減らすことで、毎月10万円節約となり…年間だと100万円以上節約に。
その結果、サウナや、露天風呂など、新たな設備投資ができて、お客さんに喜ばれ続けているといるという…。
初代のお風呂愛・そしてそれを守り続けてきた2代目、3代目の努力。身も心も温まる、“お湯”の話に、胸が熱くなりました。
リポーター 佐藤千佳
あなたの街の「#いいお湯」を教えてください。
お気に入りの銭湯や温泉など、思い出やエピソードを添えてぜひお寄せください。
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