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タワマン防災訓練に密着!SNS徹底活用

  • 2023年8月28日

関東大震災から100年。改めて地震への備えを考えたいですね。
「ひるまえほっと」ではコロナ前、コロナ禍と変わる首都圏各地の防災訓練の工夫をお伝えしてきました。
今回は、SNSを徹底活用するタワーマンションの訓練を追いかけ、コロナ後の防災訓練を一緒に考えます。

(ひるまえほっと リポーター/ディレクター 防災士 松尾衣里子)

首都圏で増え続けるタワーマンション

全国のタワーマンションは約1500棟。
そのうち7割以上が首都圏に集中しています。(2022年末時点 東京カンテイ調べ)

こうしたタワーマンションは、大規模なものだと、1500世帯以上あり、いわば1つの村の規模。
いざというときどうやって情報共有し、住人同士が助け合える関係を築くかは重要な課題です。

コロナ禍での訓練の変化

コロナ前の防災訓練は、一斉に参加して行うのが一般的でした。
楽しめるイベントにすることで、参加者を増やして、防災への関心を高めてもらおうと工夫していました。

2019年に取材した、中央区勝どきの43階建てのタワーマンションでは、非常階段で最上階まであがり、タイムを表彰するイベントを企画。
子どもから大人まで150人以上がチャレンジし、盛り上がりました。

しかしコロナ禍、一斉参加型の訓練ができなくなり、始まったのがリモートの訓練です。

2020年に横浜で行われた親子のオンライン防災訓練です。
地震が起きたとき、部屋の中でどう見を守るかを体験したり、自宅の備蓄を見せ合ったりしました。
一斉訓練への参加が難しかった赤ちゃん連れも気軽に参加できると好評でした。

豊洲の44階建てタワーマンションでは、住民がマンションの中で撮影し、災害時の避難方法や、エレベーターに閉じ込められた時どうするかなどを解説する動画を作って配信。
自宅で好きなタイミングで災害時にマンション内でどう行動するかを学べるようになりました。

動画やリモートでの訓練はこれまで参加できなかった人たちも参加しやすくなるメリットも!

コロナ後のタワマン訓練 SNSを徹底活用!

東京・中央区にある52階建て2棟1666世帯のタワーマンションです。
このマンションでは、管理組合と自治会が協力して、独立した防災区民組織(自主防災組織)を作り、年に2回の防災訓練を行ってきました。

5年間活動してきた代表の清水隆史(しみず・たかし)さんは、安否確認に膨大な時間がかかること、上下階での情報共有の難しさなど、タワーマンションならではの課題を感じていました。

清水さん
「皆さんにマンションの下に降りてきてもらって整列して点呼をとっていましたが、もっと実践的な取り組みができないかと仲間内で議論していました」

そこで活用しようと考えたのが、LINEです。
普段はイベントなどの情報を発信しているマンションの公式アカウントを災害時には災害モードに切り替え、安否確認や情報共有に役立てようというのです。

今回は朝9時に首都直下型地震が起きたと想定しました。

SNSで安否確認

揺れがおさまると、清水さんたち防災区民組織のメンバー10人ほどが2階のロビーに集まり、災害対策本部を設置します。

早速パソコンを確認すると

本部メンバー

安否の確認が、リアルタイムで集まっています。

発災直後から、安否の情報が続々と集まってきていました。

結果を自動的に集計し、一覧表にすることができるようにしました。

住民は自分のスマートフォンから安否やマンション内にいるのか外出中なのか、そして支援が必要かどうかなどを入力します。

これまで膨大な安否の情報を集約するのに時間がかかっていましたが、LINEを使うことで、開始10分ほどで、住民の約半数、700件以上の回答を確認することができました。

SNSで救助要請

超高層のマンションでは災害時、エレベーターが使えないと、2階の本部から遠く離れた高層階まで助けに行くのには時間がかかります。

【33階】

そこでこのマンションでは、各フロアで4世帯をフロアリーダーに任命し、フロア内で助け合う仕組みを作ろうとしています。

リーダーはフロア内を巡回して、全ての住戸の安否やフロア内の設備を確認して本部に報告します。

【本部】

そのころ本部に33階の住人から救助を要請する連絡が入りました。
すぐに清水さんは33階のリーダーに現場の確認を依頼しました。

【33階】
フロアを巡回中の33階のフロアリーダーが部屋に確認しに行きます。

フロアリーダー

大丈夫ですか?どこが痛いですか?

要救助者

右足です。

フロアリーダー

非常用エレベーターまで一緒に歩きましょう。

リーダーは足を怪我した住民を非常用エレベーター前に運び、救急隊に引き継ぎます。
要救助者が本部へ連絡してか10分ほどで、移動することができました。

早速本部に報告します。
しかし非常用エレベーター前は電波が悪く、なかなか送信できません。電波が届かない場所があるという課題が見つかりました。

フロアリーダー
「初めての対応だったんですが、普段使い慣れているLINEを使ってメッセージが来ることで(本部が)迅速に対応を促してくださるところはすごく使いやすかった」

「52階建てなので1階から上がってくるのは大変。役割を分散させてより迅速に対策を行えるのはすごくいいシステムなのかなと思います」

SNSで避難誘導

地震発生から10分後、火災が発生した想定で、避難訓練も行われました。

全フロアの人が一斉に避難すると非常階段が大渋滞し危険です。
混乱を避けるため、ここでもLINEを活用しました。

防火設備が整ったこのマンションでは、火災が発生した階とその3つ上までの階の人の避難を優先しそれ以外のフロアの人は一旦自宅で待機するように伝えました。

その結果、混み合うことはなく、必要最低限の人数でスムーズに避難訓練をすることができました。

参加者

館内放送も聞き漏れとかはあると思うので、LINEで来たら助かる。

参加者

自分がここにいない、出張などのときでもSNSから来たら一目瞭然。

LINEの使い方がわからず、訓練に参加できなかった人たちも。
防災区民組織のメンバーが使い方をレクチャーしました。

SNS訓練のよかったところ
・膨大な安否情報をすばやく集計
・本部と高層階で連携がとれる
・文字情報なので誤解による混乱が起きにくい

一方課題は…
・SNSが使えない人の対応
・本部の人手が不足している
・電波が届かない場所がある

訓練に参加した専門家は

マンション地震対応支援協会 特別技術顧問
東京理科大学 火災科学研究所
古賀 一八(こが・かずや)さん

古賀さん
「マンション防災で大切なのは、住民のスイッチを入れること。LINEで一般住民と防災区民組織がつながったことが大きな成果」

「スマートフォンが使えない状況になった場合に備えて、複数の情報ルートを備えることも大切」

 

【編集後記】
SNSを使った新しい防災訓練は、住民の方にもスムーズに受け入れられ、大規模なマンションでの情報共有と助け合いにとても役立つと感じました。普段使っているツールなので、他のマンションでもすぐにまねできそうです。

しかし、今回訓練したマンションでは、防災区民組織のメンバーは約10人。
情報を集める手段が進化しても、実際に動くメンバーが足りないとその情報を処理しきれません。
今回の訓練をきっかけに、本部と住民の方々がつながって、本部のメンバーが増えるといいなあと思いました。

リポーター/ディレクター 防災士 松尾衣里子

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