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牧野博士とめぐる草木の物語 ~小石川植物園~

  • 2023年5月11日

牧野博士とめぐる草木の物語。
今回は牧野博士が研究拠点として在籍した場所、東京・文京区の小石川植物園をご紹介します。植物を通して、牧野博士の面影を探してきました。(撮影:4月上旬)

小石川植物園の正式名称は「東京大学大学院理学系研究科付属植物園」。
東京大学付属の施設で、日本最古の植物園といわれています。一般の人にも開放され、広さはおよそ16ヘクタール。傾斜地や池など、さまざまな地形を利用して5000種以上の植物が教育・研究用に栽培されています。公開温室もあり、植物と虫の関係を調べたり、小笠原諸島など、希少な植物の保護のための栽培も行っています。

園内を案内していただいたのは東京大学名誉教授の邑田仁さん。12年にわたり園長を務め、朝ドラ「らんまん」の植物監修にも携わっています。

髙橋
リポーター

こちらのスギ、大きいですね~

 

邑田さん

このヒマラヤ杉はちょうどこの写真に写っているこの杉のはずなんですれど、昔はこの後ろに、理学部植物学教室の建物があったんです。

明治30年に建てられ、昭和9年まで使われていた東京大学植物学教室。牧野博士の研究室もこの中にありました。太平洋戦争で建物はなくなってしまいますが、その痕跡は残っているといいます。

案内していただいたのは、ヒマラヤスギの後ろのあたり。植物学教室の建物の基礎が残っていました。

 

えっ、こ、これ? これはちょっと気付かないですね。

 

普通に踏んでました。

当時、植物学教室の助手としてひとつの部屋を与えられていた牧野博士、異例のことだったと邑田さんは考えています。

 

非常に活躍していて、分類学という仕事上スペースは必要なわけですよね、標本を広げたり何か本を見たりするのに。

憶測ですけど、とにかく牧野先生こうしなきゃいけないと思うと突っ走る人なので、たぶん図書室に行くと自由に本を取って使う、標本室に行っても自由に標本を取ってきて、並べてしまうっていうようなことで、自分の部屋に閉じ込めておかないと、迷惑したんじゃないかと思われる。

分類学者って一般にそういうその型破りな人が多いので特に牧野先生だけってことでもなかったかもしれないですね。

牧野博士の功績を象徴する場所のひとつが、ツツジ園です。100種あまりが植えられています。植物名が書かれたラベルを見てみると。あちこちに「Makino」と書かれています。

多くの新種を発見し、1500以上の学名をつけた牧野博士。“雑草という草はない”と牧野博士が全国を巡って、学名をつけたことは、今も私たちの生活や研究につながっています。

 

牧野先生は日本にどんな植物があるかっていうのを、すべて明らかにするっていうことを、遠大な目標としていた。名前が付くと、世の中の人が、初めてこういうものがあったのかということに気が付くわけです。それによって庭に植えられたり、研究材料に使われたりする。

さらに、小石川植物園には牧野博士がのこした、とっておきのものが保管されています。東京大学植物学教室から出版された本(図譜)、大日本植物志です。
植物を分類するうえで、その特徴をことばだけでなく、細かく正確に図であらわすことが欠かせません。

牧野博士は「植物画」の名手でもありました。谷に沿った湿地などで見られるという「シコクチャルメルソウ」という植物は、全体に毛があるのが特徴。牧野博士はその植物の特徴を余すことなく伝えようと、ひとつひとつの毛の生え方まであらゆる角度から観察し描いていたのです。

 

もうとにかく、すごい絵の才能です。植物学の才能と共に見たものを描く、それを人に分かるように描く、技術といっていい。

本は11年かけて第4集まで出版、最後のほうには色付けするなど工夫を重ねました。牧野博士の緻密な植物画の存在は、植物の正確な姿を伝え日本の植物学の向上にも貢献していたのです。
植物学をより身近なものにしようとした牧野博士、その思いは、今も小石川植物園に受け継がれています。

 

牧野先生は、自分たちが積み上げてきた植物学が実際に役立つものであるということを知らせてあげたいってことだったと思うんです。

植物園では今も研究を続けていますけれど、ここに来て頂いてその自然に触れて、珍しい植物がこんなにあるのかとか。そもそも植物が生きているということはこういうことなんだっていうのを、ここで見て親しんで頂いたらというふうに思っています。

 

【編集後記】
実は、園内の「シダ園」にも植物学教室の名残があると邑田さんに教えていただきました。
シダ園の「壁」と階段下の「柱」です。戦災で被害をうけた植物学教室の遺された石材を再利用したといいます。

柱には立派な模様がほられていて、牧野博士や多くの研究者も見ていたのかもしれないと、なんだかワクワク、イメージがふくらみました。

この柱に触れると学業アップ、合格祈願?!
新たなパワースポットになるかもしれない、園内の牧野博士の痕跡を探してみてください。

リポーター 髙橋香央里

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