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“ときめきを忘れない” 俳優 藤田弓子さん 元気の源

  • 2023年3月15日

俳優の藤田弓子さん。NHK連続テレビ小説で初めてカラー放送された作品「あしたこそ」のヒロインです。それから55年、今でもドラマや映画・舞台と幅広く活躍されています。
今年は20年ぶりにミュージカルにも出演!現在77歳。元気の源は一体何なのか?
藤田さんが大切にしているという「ときめき」をテーマにお話しを伺いました。

テーマは「いつも何かにときめいていよう」

藤田さん
「“ときめき”というと恋や愛と言われがちですが、それだけではありません。何かにドキドキワクワクする、そこに行くだけでほっとする、いろいろな意味の“ときめき”。お友達と話していると、『若い頃はときめいていた』というけれど、歳を重ねた今こそときめく気持ちを大切にしたいです」

ときめき①「20年ぶりミュージカルに挑戦!」

今年2月に上演された「ギラギラ~六本木不死鳥ホスト伝説~」。
主人公は、賀集利樹さん演じる伝説のホスト・七瀬公平です。
華麗なショーが売り物の人気店ということで、きらびやかなシーンが特徴的なミュージカルです。

藤田さんは小林旭さん演じるキャバクラオーナーの妻、佳子役で出演。末期のガンに侵されながらも家族の絆を取り戻そうとする姿を熱演しました。
舞台後半、死期が迫る中、その思いを息子に託すシーンでは、ソロ歌唱も披露しました。

●ミュージカルに挑戦しようと思った理由 

藤田さん
「いつも同じような仕事ばかりしていると慣れてしまう。慣れた芝居ほど面白くないものはないです。だから、出ている方も大変な思いをしながらチャレンジして、その姿を皆さんに見て頂きたいと思いました」

●ミュージカルをやるからには絶対歌いたい! 

藤田さん
「実は稽古を重ねる中で舞台構成が変わり、ソロがなくなる可能性もあったのですが、『絶対やらせてください』とお願いしました。慣れないことに挑戦することで、朝ドラに出たときのキラキラした気持ちを思い出しました」

「とはいえ、歌はセリフのようにはすんなり覚えられない。しかも共演者は歌もダンスもプロの方たちばかりで『私は素人です』なんて絶対言えません。とにかく全力でがんばって力づくでつっきりました」

●憧れの小林旭さんと共演! 

藤田さん
「近所に映画館がたくさんあり、小学生の頃から一日中映画を見て育ちました。その当時小林旭さんは銀幕の大スター。その小林旭さんと共演!しかも夫婦役!!ときめきが止まりませんでした」

●1回1回が勝負! 

藤田さん
「私は昔からドラマも映画も、仕事はすべてオーディションだと思ってやっています。撮影が終わったあと、監督や共演者の方に『またね』って握手して頂けると合格。知り合いだからまた次も呼んでもらえるという甘い世界ではないと思います。だから、呼んでもらえるのであれば全力で応えたい。今後もいろいろなことにチャレンジしていきたいです」

いくつになっても挑戦を続ける藤田さん。普段は一体どのような生活をしているかというと、30年ほど前に静岡県伊豆の国市に移住。東海道新幹線の三島駅から私鉄で20分ほどのところに住んでいます。

●伊豆に住むことになった理由 

藤田さん
「東京出身で東京大好きの母が、ある日『弓子、どこか東京じゃないところに行かない?東京は、政治や経済や文化の中心地でプロが集まる場所。住むにはもっといいと所がほかにあるはずだから』と言い出し、2~3日で今の家を探してきたんです。小高い山の頂上で360度見渡せる、目の前に富士山どっか~ん!『ここにしましょう』って即決しました」

現在は、夫で構成作家の河野洋さんと二人暮らし。お互い歳を重ねる中で「終活」を意識することが増えてきたといいます。

ときめき②「断捨離はしない!むしろ増やす」

藤田さん
「家具だってお茶わんだって本だって、すごく好きで買ったもの。亡くなった時には全部それに囲まれて死にたい。増やすのは実は物ではありません。友達です」

●藤田弓子流!友達を作るコツ 

藤田さん
「『じゃあまたね』と別れないことです。近所で買い物をしていたら、『弓子さんでしょ。テレビ出てますよね』と声をかけられたことがありました。お話ししていると、『うちそこで居酒屋やってるんだけど、あなたたちお酒飲むっていうから来てくれない?』って言うんです。とてもいい感じの方だったので『はい、行きます』と行ってその日の夜行きました」

「『またね』っていうのはないんですよ。特にだんだん歳をとってきたら。この人と話してみたいと思ったら、『今からお茶のみに行く?』とか電話番号聞くとか、こちらからナンパするくらいの勢いでお話しします」

ときめき③「ふるさとをくれた伊豆で文化発信」

藤田さんは移住した伊豆で25年ほど前に市民劇団を設立。週に1度は集まって練習し、年に2回公演をしています。夫の河野洋さんが脚本を担当、藤田さんが演出というスタイルです。

藤田さん
「伊豆の国市に劇場が出来たときにこけら落とし公演のお手伝いをしたことが縁で、何かやってくださいって言ってくださったんでお芝居をやることにしました。団員は一般市民。でも私も夫もプロですから恥ずかしいことはできません。なんだこの程度かって言われないように一生懸命台本を書いて一生懸命教えています」

「公演ではチケット代も頂きます。だってタダでみると、『タダだから』ってことで見る人も意見を言ってくれなかったり、やる側も気合が入らない。入場料があれば、プロも素人もない。だからがんばろうねって、それが励みになりますから」

●これからやりたいのは喜劇 

藤田さん
「みなさん笑いたいってすごく思ってる。特にコロナでマスクしていると、相手が笑っているかどうかもわからない、できるだけ言葉を発さないようにする状況の中、感情はどうなってしまうの?という不安もあります。だから、とにかく思いっきり笑ってほしい、そして家族で一緒に見てもらいたいです」

●藤田弓子流!老いとの向き合い方 

藤田さん
「外に出るときにはきちんとして、明るい色の服を着る。人に見られることを意識すると、背筋を伸ばしてきちっと歩くようになります。私が日本の男性におすすめしたいのはピンク。髪がグレーになっていくとよけいに合うんです。ネクタイやシャツだけでもいいですが、一番いいのは下着にピンク。うちの夫は自分でもちゃんとピンクのパンツを買ってくるようになりました」

「歳はだれでもとる。でもとり方と受け入れ方ですよね。どんな物事でも悪く捉えると、どんどんそちらの方にひっぱられて何を見てもつまらなくなっちゃう。何でもおもしろがってしまえばいい。だって、行くところはみんな一緒なんですから(笑)」

◆視聴者からの質問コーナー◆

【Q1】
「地方で劇団を主宰されていますが、地方の魅力は何ですか?」

藤田弓子さん

水や空気、食べ物がおいしいのはもちろんですが、何といっても人。
私は伊豆をふるさとにすると決めてやってきたわけですが、それを受け入れてくれて、心を開いて話せる仲間がたくさんできたから楽しく暮らせているんだと思います。地域のみなさんに、宝物をたくさんもらいました。

【Q2】
「コロナ禍の若者に伝えたいことは?」

 

たとえマスクをしていたとしても、伝えることを諦めないこと。
劇団でもマスクでの練習が続き、表現力はどうなってしまうのだろう?と不安になったことがありました。でも実際やってみると、マスクをしているからこそオーバーに感情を表現するようになり、表現力は磨かれたと感じました。伝えたい気持ちさえ忘れなければ、その手段は自然と磨かれていくものなのかもしれません。

 

【編集後記】
実は私は藤田さんが伊豆で主宰している劇団の元団員。
どんなときも常に元気で笑顔を絶やさない、プライベートでもテレビの印象そのままの藤田さんに「その元気は一体どこから?」と誰よりも思っていたのは私かもしれません。
「どんな出来事も自分の捉え方次第」「いくつになってもチャレンジすることを忘れない」「人生に“またね”はない」お話しを伺っているこちらも元気百倍!
歳を重ねるのが楽しみになりました。

本庄美奈子リポーター

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