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東京 中央区 タワーマンションの防災訓練に密着!

  • 2022年11月21日

都市部を中心に増える「タワーマンション」。
とくに東京の湾岸エリアは人口増加が著しい一方、災害リスクが指摘されています。
そんな中、中央区で大規模な防災訓練が行われました。
訓練に密着すると、タワーマンション特有の課題や必要な備えがみえてきました。
(ひるまえほっと/小村美記)

タワーマンションで300人規模の防災訓練

取材したのは東京都中央区勝どきにあるタワーマンション。地上43階建て、およそ500世帯が暮らしています。
10月上旬、マンションの敷地内で開かれたのが「防災祭(ぼうさいさい)」。総勢300人近くが参加し、消防車体験や煙体験など18もの訓練が行われました。

階段を上れ!「健脚さんチャレンジ」

特にタワーマンションでの在宅避難にむけた重要な備えが「備蓄の運搬」です。
そこで非常時にエレベーターが使えなくなったことを想定し、居住者が24キロの重りを背負って43階建てのタワーマンションの非常階段を駆け上がる訓練が行われました。その名も「健脚さんチャレンジ」。
中には子供を背負って参加する父親もいました。

「火災時は住民で初期消火を」

地震が起きた際に、タワーマンションで特に心配なのが「火災」
訓練で指導にあたった東京消防庁臨港消防署の板橋 正季係長は「一般的なマンションに比べて消火に至るまでの時間がかかるため、居住者自身が消火器を使って初期消火をすることが特に重要」と強調していました。

なぜなのか。消防隊のはしご車のはしごは、一般的なもので30メートル。それ以上の階には、はしご車からの放水ができません。
そのためタワーマンションなどの高層建築物には、上層階で消防隊が活動しやすくするために、非常用エレベーターや地上から、消火に必要な水を送るための連結送水管などが設置されています。

防火戸への意識が重要

また、火災が起きた際、煙感知器で火や煙を感知したら各階の廊下に備え付けられている「防火戸」が自動や手動で締まる仕組みになっています。この「防火戸」の存在をきちんと知っておくことも大事です。

特に沿岸部のタワーマンションは、風などの影響で15階以上の窓が開けられない構造になっていることが多く、煙は逃げる場所がなく、人が階段を駆け上がるよりも速い速度で建物内を上がっていきます。
そこで、煙が充満するのを防ぐため防火戸が作動することが重要ですが、防火戸が閉まるといつもと違う景色になるため、普段とおりに避難階段まで避難することが難しくなる可能性があるのです。
まずは防火戸の存在を認識し、いざというときに冷静に行動できるようにすることが重要だということです。

また、板橋係長は「防火戸に限らず、火災が発生した場所の扉を閉めることで炎や煙が広がる時間を遅くすることができるので、避難の際には扉を閉めることを心掛けてほしい」と話していました。

訓練で防火戸の開け閉めの方法を学んだ男性は「防火戸の存在を初めて認識した。災害時に防火戸が閉まって、いつもと違う景色であればパニックになると思う。改めて、考え直さないといけないなと痛感した」と話していました。

コミュニティ醸成の重要性

マンションの所有会社に聞くと、このタワーマンションでは、防災を考える上で、日ごろの居住者同士のコミュニティをどう作るかが課題だといいます。

マンション1階のエントランスには、「コミュニケーションボード」と呼ばれる近隣の地図が表示されていて、居住者が情報を自由に投稿できるようにしています。普段は住民たちがおすすめの店などを投稿して交流を図りますが、災害時には、避難所や救援物資の情報などを共有するためにも使われます。

さらに、いま活用されているのが、入居者専用のSNSです。おすすめの店を紹介するなど住民同士の会話が生まれていました。

タワーマンションの所有会社・防火防災担当の重田 稔さんは「日ごろの積み重ねによって、実際にいざ災害が起こったときに、入居者どうしで助け合いができればと考えている。今後もこういった取り組みを継続して進めていきたい」と話していました。

【取材実感】
訓練に密着すると、タワーマンション特有の課題や必要な備えがみえてきた今回の訓練。
タワーマンションに住んでいない私でも、ためになることがたくさんあり、日ごろから防災意識を持ち続けたいと改めて実感した取材でした。
(ひるまえほっと/防災士・リポーター 小村美記)

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