縄文ロマン旅 千葉県千葉市
- 2024年5月9日
千葉市には、縄文人が暮らした痕跡が残る貝塚が120カ所あります。その数なんと、日本一!ということで今回は、NHK千葉放送局のご近所でいにしえのロマンを感じてきました。
(千葉放送局・田村有葵子)
縄文ロマンを「学ぶ」
千葉市の加曽利(かそり)貝塚縄文遺跡公園には、日本最大級の貝塚があります。
貝塚部分は全体で南北300メートル以上あり、特別史跡に指定されている範囲で発掘調査されているのは約8.6%。ロマンはまだまだ眠っています。
案内してくれたのは、ボランティアガイドの小川延英(おがわのぶひで)さん。
こちらでは2000年にも渡って繰り返し人が住んでいたそうで、貝や魚が豊富にとれる東京湾から近く、住みやすい地域だったようです。
はまぐりやあさりなど、おなじみの貝もありますが・・・全体の8割以上を占めるのが写真左上のイボキサゴ。巻貝の一種です。
ちょっと小さくてなかなか食べられないですよね。これは料理のだしに使っていたんじゃないかと考えられています。
だしですか!8割以上とは、当時たくさんとれて人気の貝だったのですね。どんな味がするのでしょう・・・
一説によると、肉や魚、どんぐりと一緒に煮てうまみと塩気を加えていたんだとか。
実はイボキサゴは今でも捕れるので、市内の飲食店で味わうことができるんです。
田村さん、ぜひ行ってみて!
縄文ロマンを「味わう」
そう聞いて行かないわけにはいきません!まずたどり着いたのは・・・市内の居酒屋さんです!
まずは何も加えていない、イボキサゴそのものの味をいただきます!
最初に磯の香りがふわーっとして、おいしい貝のだしを感じます。少し苦味もあり、サザエのつぼ焼きの汁のようなうまみを感じました。
イボキサゴのだしを使った「だし茶漬け」は、滋養強壮によさそうで体にしみ渡る優しい味でした。
とってもおいしかったです!
イボキサゴのだしは和食以外にも!
市内のイタリアンレストランでは、イボキサゴがパスタに!
塩気が絶妙で普段食べているスパゲッティのボンゴレに近い味ですが、それだけではない凝縮されたうまみを感じました。
とってもおいしいです!縄文人はグルメだったんですね・・・!
そう思います。イボキサゴは臭みがなく濃厚な味です。白ワインなどで味を調えると、和食にも洋食にも使いやすい。
昔はレストランがあるこの場所でも、イボキサゴが捕れたと聞いています。すばらしい歴史を持つ貝で、千葉を盛り上げていきたいです。
縄文ロマンを「創造する」
最後に、縄文時代に憧れを持つ人たちを訪ねました。
こちら「加曽利貝塚土器づくり同好会」の皆さん。週3日集まり、趣味で土器や土偶を作っています。
縄文土器の模様やデザインには、自然への感謝や祈りがこめられていると言われていて、会では出土された土器の模様を出来る限り本物どおりに「再現」することに努めています。
まさに今、その「再現」に取り組んでいる最中という会員に出会いました。八代順子(やしろじゅんこ)さんです。
八代さんのご自宅にはたくさんの作品があるというので訪ねました。
八代さんは、土器の模様を研究するのが日課。模様に込められた縄文人の願いに、思いをはせます。
模様にはそれぞれに意味があって、こんな意味があったんだと分かりますとすごくわくわくします。こうして考えていると、時間を忘れちゃうんです。もう12時・・・朝になってたりします。
熱中されている皆さんの表情がキラキラ輝いているのが印象的でした。悠久のときに思いをはせる旅でした。
「ひるまえほっと」での放送内容は5/14(火)までご覧いただけます。
編集後記
今回初めてお伺いした加曽利貝塚縄文遺跡公園。近隣の地域では「貝塚」が地名や学校名にもなっています。現在では住宅地の中にある公園は、市民の憩いの場となっていました。犬の散歩をするご夫婦、追いかけっこで遊ぶ小学生、、、その地面にはいにしえの貝殻が!!それだけでワクワクがとまりません。
最初に貝塚を案内してくださった小川さんは、中学生の頃この場所で発掘の様子をご覧になってその頃からずっと縄文ロマンに魅了されていると話してくださいました。加曽利貝塚土器づくり同好会の皆さんも、模様の意味がわかればわかるほど、面白くなってくるとのこと。八代さんはご自宅玄関の外から縄文土器を並べて出迎えてくださいました。
取材中驚いたことの1つは、縄文土器を再現する作業においては、定規などは使わずにフリーハンドで再現するとのこと!なぜなら縄文時代に定規や分度器はなかったからと、八代さん。出土された土器の資料を読み込み集中して、おそらく当時のやり方で再現する、その難しい作業の最中に模様の意味が理解できたりすると、それも夢中になる理由の1つだと教えてくださいました。またその名の通り、土器の一部には縄で模様がつけられているものがありますが、模様をつけるその縄も手作りです。「土器を作りすぎてこんな手になってしまったの」と、手のひらをみせてくださった八代さんの手はツルツル・・・指紋がかなり薄くなってしまったのだそうです。
大人をこんなにも熱中させるなんて・・・そして、皆さんのキラキラされている表情のすてきなこと!学ぶことができ、食べることができ、つくることもできる縄文ロマン、その奥深さと魅力を存分に感じた旅でした。またイボキサゴ、食べに行きたいです。取材にご協力いただいた皆さん、ありがとうございました!