ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. 千葉・茂原市長選挙 開票結果は 現職・田中豊彦氏と新人・市原淳氏が災害対策など争点に論戦

千葉・茂原市長選挙 開票結果は 現職・田中豊彦氏と新人・市原淳氏が災害対策など争点に論戦

  • 2024年04月21日

2023年9月の記録的な大雨で広い地域が浸水した千葉県茂原市。4月21日に市長選挙が行われました。

5期目を目指す現職・田中豊彦さんと、地元選出の元県議の新人・市原淳さんの一騎打ちとなり、繰り返される水害への対策が争点の1つとなりました。

被災者は1票にどんな思いを込めたのか。開票結果とともにお伝えします。

(千葉放送局記者・荻原芽生)

新人・市原さんが当選

任期満了に伴う市長選挙に立候補したのは、届け出順にご覧の方々です。

保守分裂の一騎打ちになり、繰り返される水害の対策のほか、現職の市政運営への評価などが争点となりました。開票結果は次の通りです。

市原淳(無・新) 1万9201票 当選

田中豊彦(無・現) 1万5066票

新人の市原淳さんが、5期目を目指した現職を破り、初めての当選を果たしました。

市原さんは47歳。千葉県議会議員を2期目の途中で辞職し、市長選挙に立候補しました。

投票率は46.92%で、前回・4年前の市長選挙を10ポイント近く上回りました。過去の投票率は前回が37.34%、前々回は無投票、12年前は43.06%でした。(※投票率は市の選挙管理委員会が発表を修正しました)

被災地・茂原市の市長選挙

2023年9月8日、台風に伴う記録的な大雨で、茂原市では一宮川などが氾濫するなどして約2000棟の建物が浸水や土砂崩れの被害を受けました。

茂原市役所近くの様子(2023年9月8日)

今回の選挙、被災者はどのような思いで一票を投じたのでしょうか。

避難生活が続く被災者は

茂原市内に住む、橋口よし子さん(66歳)は、茂原市本納にある自宅が大雨で浸水し、半年以上たったいまも県営住宅で避難生活を続けています。

橋口よし子さん(左)

当時、水は床上84cmまで上がってきたといいます。

浸水の高さを示す橋口さん

ボランティアの手を借り、水につかった畳や障子、家具などを運び出しました。

当時、自宅前の道路は1メートル以上も冠水。周囲は土地が低く、降った雨が流れずにあふれる「内水氾濫」が繰り返されてきたといいます。

大雨当日の橋口さんの自宅周辺の様子
(撮影:橋口さんの近所の人)
橋口さん

今回被害にあって初めて、対策をいろいろ調べました。いざという時、どこかに水の「はけ口」がなければならないと思います。

少しでも、水害が繰り返さないようにしてもらいたいです。

新人・市原さん「内水氾濫の対策を」

今回の選挙で、橋口さんが支持したのが元県議会議員の新人、市原淳さんです。

市原淳さん(無・新)

水害に対して内水氾濫対策の動きが全くなく、このままでは毎年水害に襲われてもおかしくないわけです。

具体的な対策として挙げるのが「田んぼダム」です。大雨の際に田んぼに水をためることで、川の流量が減り、地域にたまった水が排出しやすくなると説明しました。

茂原市内の田んぼ

茂原市内にある約1400haの田んぼのうち、田んぼダムとして現在活用できるのは47haほど。率にしてわずか3%です。浸水地域を回り、農家からの協力を得て、拡大していく必要性を訴えました。

市原淳さん

茂原市が行うべき内水氾濫の対策はいろいろありますが、私から見たら、まだまだ遅れていると思います。

まずは「田んぼダム」が、この地域にとって一番取り組みやすい対策と考えています。

氾濫した川沿いの被災者は

一方で、別の対策を優先すべきと考える被災者もいます。市内で飲食店を経営する中村正利さん(55歳)です。

中村正利さん(右)

去年の大雨では、茂原市八千代にある店が約1mの高さまで浸水。

浸水の高さを示す中村さん

片付けや泥かきに追われた上、キッチンの設備などがすべて使えなくなってしまい、新調せざるを得なかったといいます。

大雨直後の中村さんの店

店の近くを流れる一宮川は過去にも氾濫を繰り返し、川を管理する県が堤防の改修を進めています。

大雨の際に川の方から水が押し寄せる様子を目の当たりにした中村さん。現在の県の計画で十分なのか、不満を抱いています。

中村さん

暑い中で泥まみれになって本当に大変でした。今のままでは、また同じような雨が降ったら浸水します。

川の能力アップが必要で、とりあえず今すぐできる対策は、堤防の「かさ上げ」だと思います。

現職・田中さん「県は堤防のかさ上げを」

中村さんが支持したのは5期目を目指す現職、田中豊彦さんです。

田中豊彦さん(無・現)

この茂原で、あれだけの豪雨が来た場合、川は持ちません。茂原市は何をやろうとしたか、それは「かさ上げ」です。

16年にわたって市長を務めてきた田中さん。先頭に立って災害対応にあたり、川を管理する県に対し、堤防の「かさ上げ」を求める市民の声を伝えてきました。

熊谷知事(右)に被災状況を説明する田中さん(左)
(2023年9月9日)

今回の選挙で市民からの信任を得られれば、さらに要望を強めていくとして支持を呼びかけました。

田中豊彦さん

市長として公式の場で5年間に11回も、県に堤防のさらなる「かさ上げ」を要望しています。

堤防が「かさ上げ」されると、いわゆる「内水」もポンプアップではくことできるので、河川の整備はやはり必要だと思います。

市原さんが当選 何を語った?

激戦の末、当選を果たしたのは新人の市原さんでした。

市原淳さん

非常に厳しい戦いとなったが、茂原市は変わるべきだという市民の強い思いを感じた。しっかりと水害のシミュレーションを行って、田んぼダムなどの対策を科学的根拠に基づいて進めていきたい。

一方、及ばなかった田中さんは…。

田中豊彦さん

私の力不足で本当に申し訳ない。高齢多選という大きな批判を浴びていたし、若い力を市民が望んだのではないかと思う。

「首都圏ネットワーク」での放送内容は、「NHKプラス」で4月29日(月)午後7時まで配信しています。

  • 荻原芽生

    千葉放送局記者

    荻原芽生

    茂原市担当。2023年9月の記録的大雨の際は浸水現場を取材。

ページトップに戻る