柏駅東口に残る「そごう柏店」の跡地。
閉店から7年以上が経過した中、柏市は86億円で購入することで地権者と合意したと明らかにしました。
市の購入は駅前の活性化につながるのか。閉店前の懐かしい姿とともにお伝えします。
(千葉放送局東葛支局・間瀬有麻奈)
「そごう柏店」は、高度経済成長の流れでデパートの地方展開が進む中、1973年10月にJR柏駅の東口前にオープンしました。
しかし、周辺地域にできたショッピングモールなどに顧客を奪われ、売り上げはピーク時の1/5に。オープンから43年後の2016年9月30日をもって閉店しました。
閉店の際には多くの市民が集まり、別れを惜しみました。
デパートの象徴だったのは、最上階の「回転展望レストラン」。
客席のフロアは1時間で1周。中華料理を食べながら柏の市街地から都心のビル群まで望めるとあって、多くの人たちの思い出の場所となっていました。
閉店後の建物・跡地の利用方法は当時から決まっておらず、地域経済への影響が懸念されていました。
さらに柏駅東口は整備から半世紀が経過。ほかの建物の老朽化も著しく、建て替えのための敷地も必要になっていました。
市は2022年に「柏駅東口未来検討委員会」を設置し、駅東口のあり方を議論する中で、跡地の活用方法についても検討を開始。
議論の結果を踏まえ、市は2023年5月に「柏駅東口未来ビジョン」を公表しました。
この中では「今後のまちづくりに必要な要素」として、▼人を惹きつける魅力、▼広がりある高い回遊性、▼みどり豊かなゆとりある空間の3つを挙げ、駅前の将来像を描きました。
そして2023年6月、太田和美市長は、柏市が跡地を購入する考えを示しました。
駅前に求められている“緑豊かでゆとりある広場空間”や、駅前エリアの全体最適に向け、建て替えを促すきっかけにもなる敷地の早期確保を進めます。
商業活動が停止している旧「そごう柏店」本館敷地の取得に向けて、必要な検討、調整及び交渉に着手いたします。
(市議会での発言より)
2024年2月20日、太田市長は記者会見の中で、3年間で86億円をかけ、地権者の「三井不動産」から跡地を購入することを明らかにしました。
収益が見込めるタワマンの建設や、ほかの事業者への売却もありうる中で、まちづくりに協力してもらう形でまとまった。
市によりますと、地権者との間で以下の内容に合意したということです。
●地上の建物は地権者が解体し、さら地(5200平方メートル余り)にする
●さら地となったあと、市は86億円で地権者から土地を取得
2024年度中に売買契約を済ませ、解体工事をへて、2026年度には土地の引き渡しが行われる見込みだということです。
購入費用について市は、2024年度から3年間で86億円を捻出するとしています。その財源については、次のように説明しています。
●総額8億円の国の補助金を要望予定
●残りの78億円は、主に「都市整備基金」「土地開発基金」の取り崩しで賄う
市は、この土地を駅前ロータリーなどの整備で活用するほか、周辺の別の商業施設を建て替えるための用地としても使うことを想定しています。
跡地の購入は、市にとって公共空間の充実を図る上で最低限必要な措置だったと思う。
次なる50年、子どもたちの未来に向けて、魅力ある柏のまちづくりにつなげていきたい。
「そごう柏店」跡地の取得と、それに伴う駅前の再整備によって、市は投入する費用を上回る効果を生み出せるのか。今後も注視していく必要があります。