千葉県の新年度・2024年度の予算案が県議会に提出されました。
総額2兆円を超える一般会計のうち、重点的に配分されたのは災害対策です。2023年9月の記録的な大雨を受けて災害対策を拡充し、「防災県」の確立を目指すとしています。
どのような対策が進むのか、担当記者が解説します。
(千葉放送局記者・木原規衣)
千葉県の年間予算って2兆円もあるんだナ。どんな使い道が考えられているの?
2024年度の一般会計の総額は2兆1000億円余りで、このうち約1/4の5200億円余りは県庁や県警などの人件費なの。
そして、社会保障費が3500億円余り、過去の借金の返済などにあたる公債費が2300億円余りとなっているんだよ。
それだけで半分の1兆円くらいになっちゃうね。
だけど、残りの1兆円で、私たちの地域や暮らしに関わる事業が組まれているよ。
半分ほどの4900億円余りは、中小企業の支援をはじめとする地域の経済対策に充てられているの。
また、新型コロナ対策の経費としては約1500億円が計上されているよ。
経済対策とコロナ対策をあわせると、1兆円のうち6500億円くらいになるね。
でも、これらの予算は前年度より減少しているよ。新型コロナ対策は半分程度まで削減され、経済対策も微減しているの。
一方で、新年度に増額されるのが「防災」だよ。2023年9月の記録的な大雨被害も受けて、「“防災県”を確立する」ことを重点に掲げ、前年度から100億円増の450億円余りが計上されたよ。
予算が厳しい中で、増額は大きなことなんだね。どんな防災の事業が想定されているの?
次のような事業が盛り込まれているよ。
●「土砂災害警戒区域」の指定を進めるために現地調査を実施(増額)
●田んぼに一時的に雨水をためて洪水を防ぐ「田んぼダム」の拡大を後押し(新規)
●防災情報を発信するホームページを充実(新規)
●一宮川などの河川の護岸工事や調節池の設置(増額)
このうち、「土砂災害警戒区域」の指定に関する予算は、前年度の4倍ほどの12億円余りに大きく増額されたよ。
4倍!どうしてそんなに増えることになったの?
実は、2023年の1年間に千葉県内で起きた土砂災害は275件で、全国の都道府県別で最多だったんだよ。
全国最多!9月の記録的な大雨の影響が大きいのかナ?
そうだね。全体の8割ほどは9月の記録的な大雨によるものだよ。
でも、大きな問題となっているのが、土砂災害のうち85件はリスクがあると事前に予測されていたのに、「土砂災害警戒区域」に未指定だったエリアで起きていたことなの。
リスクがあるのに「警戒区域」に未指定ってどういうこと?
県は、高精度の地図情報の地形などから、土砂災害のリスクがあると予測される地域を洗い出していて、そこから現地調査を行った上で「土砂災害警戒区域」に指定しているの。
現在、「警戒区域」に指定されているのは県内で1万1000か所余り。
だけど、現地調査が進んでいなくて未指定になっている地点が、県内全体で約9000か所に上ることが分かったんだよ。
9000か所!リスクがある地点のうち4割くらいは「警戒区域」に未指定ってことになるナ。
千葉県長南町の市野々(いちのの)地区では、9月の大雨の際に「警戒区域」に指定されていない8か所で土砂災害が発生したの。
ここでは、一部の地点が「警戒区域」に指定されているけど、多くは未指定になっているよ。
次の地図では、ピンク色で示されているのが「リスクが予測されているものの未指定」のエリア、黄色で示されているのが「警戒区域」だよ。
多くのエリアが「未指定」になっているね。
この地区では、土砂災害によって道路が寸断されたり、土砂が川に流れ込んで川の水があふれたりする被害があったとされているの。
住民の1人は「大雨の際には、土砂災害のリスクがあるとは知らず、これまでにない被害で驚いた。事前に警戒区域に指定してもらいたい」と話していたよ。
「警戒区域」に指定されていないと、なかなかリスクを知ることができないのかナ。
県では、現地調査を行う予定の「未指定」のエリアも「ちば情報マップ」というホームページで公表して、住民にリスクを知ってもらおうという取り組みを進めているよ。
県としてどのように防災対策を進めていくのか、幹部に話を聞いてきたよ。
千葉県防災危機管理部 添谷進 部長
地域の防災力を高めるには自助と共助が重要です。まずは県民の皆さんに、リスクや日頃の備えの必要性を知ってもらい、適切な避難行動につなげてもらえればと思います。
能登半島地震もあったし、いつ何が起きるか分からないから、災害への備えは万全にしておきたいね。
「首都圏ネットワーク」での放送内容は「NHKプラス」で、2月21日(水)午後7時までご覧いただけます。