東京電力福島第一原発にたまる処理水について、8月24日午後1時ごろ、基準を下回る濃度に薄めた上で、海への放出が始まりました。
水揚げ量・日本一の千葉県・銚子漁港の漁業関係者の声と、熊谷知事が記者会見で述べた内容を詳しくお伝えします。
24日朝の銚子漁港は、キンメダイやイセエビなどが水揚げされ、漁から戻ってきた漁業者や仲買人などでにぎわいました。
処理水の放出が決まった影響なのか、私が水揚げしたものは、23日から卸価格が3割ほど安くなってしまいました。
旬でもあり高く売れる時期だけに、なぜこの時期に決定したのかと思います。
安全性が確保されていると言っても、どうしても風評被害は出てしまうのではないでしょうか。
せっかく釣ってきた魚が安くなってしまっては、やる気が起きなくなります。
放出は仕方のないことだと思うが、しっかり検査をして、今までと変わらず安全なんだということを、何らかのかたちで証明してほしい。
そうすれば、胸を張って売ることができます。
千葉県の熊谷知事は、24日の定例記者会見で処理水の放出について考えを述べました。
政府は科学的根拠に基づく報告書をもとに、判断したと受け止めている。漁業者の懸念に寄り添い、モニタリングや情報発信、それに、影響があった場合の支援を政府の責任で行ってほしい。
千葉県は原発事故の補償期間がほかの県に比べて短く、違う扱いを受けているので、風評被害への対応については、ほかの県と同じように扱ってほしい。
また、香港政府による、千葉を含む10の都県からの水産物の輸入禁止について問われ…。
食は生活に直結する問題で、外交カードとして使うことなく、科学的根拠に基づく説明が必要にある。
現時点で輸入禁止が行われるような状況にはなく、政府の外交で解決してほしい。
22日には、放出を2日後にも始めることが、政府の関係閣僚会議で決定されました。
この日も銚子漁港は、大勢の漁業者や仲買人などでにぎわいました。
漁業関係者からは、風評被害を懸念する声や、影響を慎重に見極めようという声が聞かれました。
放出は、勘弁してもらいたいです。
この時期は、三陸沖でマグロやカツオの漁をするのですが、風評被害で魚の値段が下がるのではないかと心配です。
電気代や燃料代も値上げばかりですので、国の充分な補償を望みます。
東日本大震災の直後は、銚子でも風評被害で魚が売れないということがありましたが、今回放出する水は基準値を下回っているので、大きな影響はないと思います。
国の方針なので従うしかないですし、なるようになるでしょう。
銚子漁港で水揚げされた魚の買い付けや流通などを担う、120ほどの企業が参加する「銚子水産流通業組合連合会」のトップ、宮内隆さん(71)は、安全性について国が十分に周知を行うべきだとしています。
組合連合会として、処理水の安全性は十分確認できたと考えているが、一般市民の理解には限界がある。風評被害による買い控えなどが起きる可能性がある。
安全性を示そうにも我々の力は微々たるもので、国には、銚子で獲れる魚は安心安全だと国内外に発信してほしい。
政府の決定を受けて、千葉県の熊谷知事はコメントを出しました。
処理水の海洋放出は、専門家による科学的根拠に基づく報告書を踏まえ、政府が判断したものと受け止めています。
県はこれまで、政府に対し、処理水の安全確保や関係者への丁寧な説明を、繰り返し要望してきました。
今後、政府においては、
▼処理水の安全性の確保
▼科学的根拠に基づく正確な情報発信
▼影響が懸念される農林水産業や観光業などへの対策
について、確実な対応をお願いしたいと考えています。
政府の決定を受けて、銚子市の越川信一市長はコメントを出しました。その概要をお伝えします。
漁業関係者が反対を表明する中で、処理水の放出を8月24日にも開始する方針が決定されたことを大変残念に思います。
原発事故により大きな風評被害を受けた銚子市では、今回の処理水の放出により、再び風評被害が広がることを懸念する声が上がっています。風評が広がれば、地域経済の大きな打撃となり、東日本大震災以降の風評からの信頼回復に努めてきた関係者の努力を無にしてしまうことになります。
依然として漁業関係者の十分な理解が得られない状況の中で、処理水の放出時期が決定されたことは残念であり、今後は国が責任を持って漁業者の理解構築を図るとともに、責任を持って風評被害に対処していくことを強く求めます。
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処理水の海洋放出 方法は?影響は?【Q&Aで詳しく】8/22版