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“涼しい”勝浦市 なぜ猛暑日なし 気温低い理由は 観光 移住で注目 千葉

  • 2023年08月18日

最高気温が35℃を超えない町・千葉県勝浦市。

ことし7月の全国の平均気温は、100年余りで最も高くなりました。そんな記録的な暑さの中でも、勝浦市では記録が残る過去100年以上、一度も「猛暑日」がありません

なぜなのか?その理由を探りつつ、東京から勝浦への移住者にも話を聞きました。

(千葉放送局記者・浅井優奈)

都心より2~3℃涼しい!

東京都内から東京湾アクアラインを経由して車で1時間半ほど。外房にある千葉県勝浦市は、漁業や農業、それに観光が盛んな町です。

この勝浦市、記録が残る1906年以降、一度も35℃を超える「猛暑日」を記録していません

観測史上、最も気温が高かったのは34.9℃(1924年8月)。東京都心と最高気温を比べると、その差は一目瞭然です。

【最高気温の1か月平均(平年値)】

勝浦26.7℃(7月)、29℃(8月)

東京都心29.9℃(7月)、31.3℃(8月)

18日午前10時の気温 周辺地域で勝浦だけ30℃以下
(気象庁のホームページより)

なぜ気温低い? 理由は“海底”に

なぜ勝浦の気温は低いのか?気象や気候変動を研究している、千葉大学環境リモートセンシング研究センターの市井和仁教授に尋ねました。

浅井記者

なぜ勝浦は、ほかの地域より気温が低いのでしょうか?

市井教授

海底の地形や、風の流れが重なり合って、夏の間はスポット的に気温が低い状況になっているんだと思います。

浅井記者

海底の地形が、なぜ涼しさに影響するんですか?

市井教授

深い海底には日光が届きにくいため、冷たい水がたくさんありますよね。

勝浦市沿岸の海底の深さは、陸から10キロほどの沖で約200メートルと、急に深くなっているんです。

勝浦の海
市井教授

夏には、この海域に吹きつける南風が、日光で暖められた海面近くの水を押し流し、深い海底から冷たい海水が上がってきます。

この冷たい海水で、風が冷やされて陸地まで届き、気温が低くなっていると考えられます。

ちなみに、冬の間は北風になるので、周辺のほかの地域と気温は変わりません。

観光客も“涼しさ”実感

観光客も、海からの風に涼しさを感じると話します。勝浦市内で最も大きな観光地の1つ「かつうら海中公園」で聞きました。

千葉市在住

千葉市内よりも海風が涼しく感じられます。

都市部では、コンクリートの照り返しもあって外で遊ぶのが大変ですが、勝浦は風が涼しくて、遊びやすいと思いました。

都内在住

都内は暑くて子どもが外で遊べる時間がほとんどないので、きのうから勝浦に来ています。

日中も海などに行って、やっと外で遊ばせられました。

都内在住

東京より過ごしやすい気温で、夏でも遊ぶにはいいなと思いました。アクセスもいいのでまた来たいです。

移住の問い合わせが急増!

地元では、涼しさを地域おこしにつなげようと、「避暑地」としてアピールしています。

7月から市役所の前に黒板を設置。市の職員が毎日その日の最高気温を書き込み、通りかかった人たちに涼しさをPRしています。

涼しさで誘致した観光客に楽しんでもらおうと、「かつうら海中公園」の再整備を進め、去年には、飲食店などが入る新たな施設をオープンさせました。

勝浦市のホームページより

公園内の「海中展望塔」を訪れた観光客の数は、今年7月の1か月間で約1万3000人。去年の同じ月より2000人ほど増加し、新型コロナの感染拡大前の水準も上回りました

さらに、移住者の誘致にもつなげようと、移住した人を対象とした補助金の情報などを伝えるホームページで、去年から東京都心の最高気温との比較を掲載しています。

8月7~13日では最大で5度近く低い

こうしたアピールを始めたところ、移住の問い合わせが急増。昨年度1年間には前年の約1.6倍となる400件余りとなりました。

勝浦市企画課
喜瀬 知有良さん

東京から勝浦は1時間半で来られるところなのに、これだけ涼しさが違う地域です。まずは勝浦が涼しいということで興味をもってもらい、勝浦に来て欲しいです。

東京からの移住者は

実際に移住した人に話を聞きました。3年前に都内から家族4人で移住した齋藤祐之介さん(38)です。

齋藤さん一家

移住後、勝浦で「ブリトー」の専門店を開いた齋藤さん。店にはクーラーを取り付けず、訪れた客に自然の空気と食事を楽しんでもらっています。

営業中には、併設しているキャンプ場で子どもたちを遊ばせ、元気いっぱいに自然とのふれあいを楽しんでいます。齋藤さんは、仕事の合間などにハンモックで休憩するのが気に入っているということで、木漏れ日が差し込む中、吹き抜ける風を感じていました。

齋藤さん

毎年、扇風機だけで生活できるくらい涼しいです。都内で子どもたちを公園で遊ばせていた時には、熱中症の心配がありましたが、夏でも外でのびのびと遊べる環境にあるのがすごくいいと感じています。

豊かな自然の中で生活や子育てをしたいと移住を決めましたが、夏の涼しさに大きなメリットを感じています。

「猛暑日なし」今後は?

「涼しい」勝浦市は今後も続くのでしょうか。千葉大学の市井教授は、いずれ「猛暑日」を記録する日もあるのではないかと指摘しています。

浅井記者

勝浦の涼しさは将来も続くのでしょうか?

市井教授

地球温暖化などによって地球全体の平均気温が上昇しているので、いずれは勝浦でも「猛暑日」を記録する可能性があります。

ただ、地形は変わらないので、ほかの地域よりも比較的涼しい状況は続くと思われます。

取材後記

勝浦に観光に来ている人たちが、みなさん「都会と比べて涼しい!」と口をそろえていたのが印象的でした。

取材当日は勝浦も最高気温が30度を超える予報で、本当に涼しく感じるのか?と思いながら向かいました。しかし、実際には確かに海からの風がひんやりしていて、放送局がある千葉市内よりも涼しく感じました。

北海道から千葉に異動して半月、今回初めて勝浦を訪ねましたが、きれいな海と温かい人たちが印象的でした。これからも勝浦の動きを取材していきたいと思います。

  • 浅井優奈

    千葉放送局記者

    浅井優奈

    2018年入局。函館・札幌での勤務を経て、8月から千葉へ。 遊軍担当として地域の話題を取材しています。

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