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アフガニスタン タリバン復権2年 じゅうたんに込めた思いとは

  • 2023年08月14日

千葉県松戸市に、アフガニスタンの「じゅうたん」を販売する店があります。アフガニスタンでは2年前の8月、イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧して暫定政権を発足させ、女性の教育や就業などを相次いで制限。このじゅうたんには、そんな祖国の状況を憂い、仕事を失った女性たちの力になりたいというアフガニスタン出身の男性の思いが込められています。

(千葉放送局成田支局 佐々木風人)

アフガンの“ドライフルーツ専門店”で

千葉県松戸市の住宅街にある、この店。日本で唯一の、アフガニスタンのドライフルーツを販売する専門店です。

アフガン名産の黒マルベリー

アフガニスタン名産の黒マルベリー(桑の実)や、グリーンレーズンなど、店に並ぶドライフルーツは10種類以上。味と品質が評判を呼び、県外からも注文が集まるといいます。

バブリさん

店主のバブリ・アシュラフさん(41)。アフガニスタン出身で、駐日アフガニスタン大使館の職員として働くかたわら、「日本との懸け橋になりたい」と6年前、妻とともに営業を始めました。

アフガンニスタン製のじゅうたん

ドライフルーツに加え、ことしから新たに販売を始めたものがあります。それが、アフガニスタンの伝統工芸でもある、じゅうたんです。現地で女性たちが糸をより、丁寧に織りあげました。

タリバン復権 女性の権利は

2年前の8月15日、アフガニスタンではイスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧し、その後暫定政権を発足させました。イスラム法を独自に解釈した統治を進め、女性の教育や就業などを相次いで制限しています。ILO=国際労働機関によると、女性の就業者数は、タリバン復権前と比べて25%減少したということです。

バブリさん
「タリバンになってから、毎月のように女性の権利に制限が進んでいます。はじめは『学校へ行くな』、そのあとは『仕事へ行くな』『この仕事をするな』。すごく悪化しています」

祖国の状況に胸を痛めたバブリさんは、去年、現地の仲間と、カブール市内で使われなくなっていた工場を見つけ、じゅうたん工場を立ち上げました。

カブール市内のじゅうたん工場(画像提供:アフガンサフラン)

働くのは、全員が女性です。仕事を失った教師や元警察官、大学に通えなくなった学生などおよそ50人が、1か月に10枚ほどのじゅうたんを製作しています。

アフガニスタンでは、じゅうたんづくりなどの手工芸を伝統的に女性が担っていて、女性たちが収入を得るために、取り組みやすいのだといいます。

現地の仲間と打ち合わせをするバブリさん(左)(画像提供:アフガンサフラン)

バブリさんも定期的に現地に足を運び、模様の注文などを行っています。

工場で働く女性のひとりが、思いを話してくれました。

元警察官の女性(画像提供:アフガンサフラン)

じゅうたん工場で働く元警察官の女性
「タリバンが実権を握ってから以前の仕事に行けなくなったので、ここでじゅうたんを織っています。アフガニスタンでは、社会の半分を占める女性が権利を奪われ、普通に働いて、普通に生活することができません。日本の皆さんにぜひじゅうたんを使ってもらい、私たちを助けて欲しいです」

この女性は、夫も働けない状況が続いていて、女性が工場で得た収入が家計を支えているといいます。

日本に届いたじゅうたん バブリさんの思いは

遠く離れたアフガニスタンから日本に届いたじゅうたん。表現されているのは、アフガニスタンの豊かな自然や暮らしぶりです。

現地に生えているアーモンドの木や松の木。

遊牧民が飼っている犬。

この丸い模様は、古くから人々の生活を支えてきたという、ラクダの足跡をモチーフにしています。バブリさんは「混乱が続いているアフガニスタンは、自然豊かなとても美しい場所だといういうことも、じゅうたんを通して伝えたい」と話します。

来店客には、じゅうたんに実際に手で触れてもらいながら、そんなアフガニスタンがいま、どんな状況になっているのかを伝えています。

来店客

「話を聞いて、女性が日本では考えられないような待遇で生活していることを知りました。小さい力ではありますが、何か協力できれば」

バブリさん

「仕事をなくしているアフガニスタンの女性たちのいまの状況を、日本の皆さんに知って欲しいです。見るだけでもいいので、店に足を運び、じゅうたんを通してアフガニスタンのことを少しでも感じていただけたらと思います」

取材後記

「アフガニスタンにどんなイメージを持っていますか?」。取材中、バブリさんに問われ、私が最初に思い浮かべたのは、バブリさんが手に持つ美しいじゅうたんとは真逆の、アフガン戦争、荒涼とした砂漠、そしてタリバン…。率直にそう話すと、バブリさんは「アフガニスタンは、山脈が連なり濃厚な風味のフルーツもたくさん採れる、自然豊かな土地なんですよ」と教えてくれました。
自然豊かなアフガニスタン、そして、そんな国で仕事を奪われた女性たちがつくったじゅうたん。バブリさんの話を聞いたあとに改めて眺めると、同じじゅうたんが最初とは違って見えました。 

  • 佐々木風人

    千葉放送局成田支局

    佐々木風人

    アフガニスタンはまだ訪れたことはありません。タリバン復権後、日本で難民申請をしたアフガン出身の男性の話を聞いたり、バブリさんの店に足を運んだりして、勉強中です。

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