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佐倉市 公立幼稚園“閉園”方針決定に保護者は

  • 2023年07月20日

佐倉市は19日、市内にある3つの公立幼稚園すべてを今年度いっぱいで閉園する方針を決めました。園児の数が定員を大幅に下回っていることなどがその理由です。閉園に反対する保護者などが撤回を求めてきた中での決定となりました。これまでの経緯や、保護者側の意見と市側の見解をお伝えします。

(千葉放送局成田支局記者 佐々木風人)

佐倉市 公立幼稚園 園児の減少で…

佐倉市には、市内に「佐倉」「和田」「弥富」の3つの公立幼稚園があります(和田幼稚園は2020年度から休園)。市側の説明によると、今年度の園児数は佐倉幼稚園が14人、弥富幼稚園は3人で、定員を大幅に下回っています。3歳から5歳の子どもの幼児教育と保育の無償化で民間の幼稚園などを選ぶ人が増えたことや、少子化などの影響だといいます。これを受け市の教育委員会は、今年度いっぱいで閉園する方針を打ち出していました。

6月8日には、これに反対する保護者らが市役所を訪れ、教育長に対して方針の撤回を求める要望書を手渡しました。

この中では、撤回を求める理由について、▼保護者に閉園の方針が示されたのが3月で、決定までの期間が3か月しかない▼公立の幼稚園は民間の幼稚園で受け入れられなかった障害のある児童などの受け入れ先にもなっている――などとしていました。

市は閉園方針決定 条例改正案を市議会へ

しかし佐倉市では、今月19日の教育委員会の会議で閉園の方針を決定。今後、条例改正案を市議会に提出することにしています。

佐倉市教育委員会学務課の話
「ほかの自治体でも公立幼稚園は閉園の動きがあるなか、佐倉市でも今年度の入園児が少ないなど、幼稚園での集団生活を営むのは難しいと判断した。障害のある児童については、民間の幼稚園でも受け入れているので、今後、関係機関と連携して対応したい」

保護者ら「撤回を」

これを受けて保護者らは20日、佐倉市内で会見を開き、改めて閉園方針の撤回を求めました。

この中で、5歳の長男が公立幼稚園に通う森本早苗さんは、公立の幼稚園は民間の幼稚園で受け入れられなかった障害がある児童の受け入れ先にもなっているなどとして、こう訴えました。

森本早苗さん
「残念な思いです。決定までに、なんとか時期を延ばしたり阻止したりできないかと要望書を提出するなどしてきましたが、止めることができなかった。きのうは教育委員会の会議を傍聴し、打ちのめされた思いでした」

「市には私たちの声を聞く姿勢が見受けられない。保護者や地域住民も多くの意見を持っています。そういう方たちのためにも、説明会を開いて、市長や教育長が説明に来て、私たちの声を聞いてほしい」

「私たちはまだ気持ちは変わっていませんので、閉園方針の撤回・見直しを、時間をかけて協議して、市民の声を聞いていただきたい」

公立幼稚園 全国的にも減少

文部科学省によりますと、公立幼稚園の数は幼児教育と保育の無償化が始まった2019年の時点で全国で3400園あまりだったのに対し、去年は2900園あまりまで減少。このうち千葉県では、89園から74園まで減っていました。今後も減少傾向は続くとみられるということです。 

専門家は

幼児教育などに詳しい、「保育システム研究所」の吉田正幸代表に話を聞きました。吉田さんは、幼稚園の運営にかかるコストも無視できない問題だとした上で、次のように指摘しました。

保育システム研究所 吉田正幸 代表
「園児の減少は以前から想定されていたので、その時点で外部有識者を入れた会議を開いて保護者の声を聞いて、障害児の受け入れなどついてもしっかりカバーできるという道筋をつけたうえで、最終的にいつをもって閉園するという議論を早めに行うべきだった」

その上で、公立や私立の別に関わらずすべての子どもが質の高い教育を保証されるべきだとして、こう話します。

保育システム研究所 吉田正幸 代表
「市は、『今後、関係機関と連携する』程度ではなく、閉園で浮いたコストを使って、障害児を受け入れる民間の幼稚園などへの市独自の十分な財政措置や人員の配置を行うべきだ」

  • 佐々木風人

     千葉放送局成田支局

    佐々木風人

    保育園出身。園児だった30年前のことを振り返ると、おぼろげながらも、毎日当たり前のように通っていた園は大切な場所だったと思い出しました。園児の激減という事実はあるものの、市側と保護者側が時間をかけて話し合ったうえで、なんとか納得できる答えを導き出して欲しいです。

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