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高校入試 採点ミス 改善策でマークシート・デジタル採点 千葉

  • 2023年07月19日

千葉県の公立高校の入学試験で相次いだ採点ミス

見つかったのは127校のうち98校。ミスは933件に上り、本来合格だった6人が一時不合格とされていました。

千葉県教育委員会は、第三者委員会から受け取った提言をもとに、再発防止の改善策を発表しました。次回の入試はどうなるのか、詳しくお伝えします。

(千葉放送局記者・坂本譲)

発表された改善策は

千葉県教育委員会は7月19日、次回の入試に向けた改善策を発表しました。主な内容は以下の通りです。

● 学力検査問題の回答方法は、短答を含む記述式と、マークシート式の併用型とする。

● 記述式部分の採点は、デジタル採点システムにより、別の採点者がそれぞれ採点を行った後、結果を突き合わせて確認を行う。

合否のボーダーライン付近の答案点検を実施する。

採点・点検を行うための臨時休業日を追加で設定できるようにする。

● 採点・点検は、原則としてすべての学校において同一の方法で行う。

県教委による発表(7月19日)

答案はすべて専用の機械で読み取り、選択問題はマークシート式で自動的に採点されます。

記述問題は、読み取った画像データを2系統の別のパソコンに送り、それぞれ別の担当者が採点し、その結果を照合して一致した場合だけ点が確定することになります。

県教委のデジタル採点システムの説明資料
千葉県教育庁
学習指導課
石川康浩 課長

人為的ミスを防ぐためには、デジタル活用が有効だという強い提言を受けて導入に踏み切った。マークシートの導入など、入試の形態が変わるので、説明会や研修を通じて受験生や採点者側の不安を払拭していきたい。

採点ミス なぜ発覚?

採点ミスが発覚したのは、受験生の情報公開請求でした。

ことし3月、受験生の1人が情報公開制度を使って、採点された自分の答案用紙を公開するよう請求。

公開にあたって高校が生徒の採点を見直したところ、一部にミスがあることに気づき、さらに、別の複数の受験生でも同じようなミスが相次いで見つかりました。

ことし3月の県教委による会見

これを受けて、県教委はすべての公立高校にすべての受験生の採点を点検するよう指示。

その結果、あわせて933件のミスが発覚し、127校のうち98校で採点ミスがあったことが分かりました。正解とすべき解答を不正解としたり、点数を誤って計算したりするなど、いずれもケアレスミスで、本来、合格だった6人が一時不合格となっていました。

どんな採点ミス?最多は国語

NHKは千葉県教委に情報公開請求を行い、採点ミスの詳しい内容を調べました。

採点ミスは、英語、国語、社会、数学、理科の5教科すべてで起きていて、中でも最も多かったのは、「国語」の文章中から適切なことばを抜き出す問題でした。

実際に採点ミスが多発した問題はこちらです。この問題だけで32件が見つかりました。

この問題「Ⅱ」の正解は、「意識と非意識の二重プロセス」でした。

しかし、「意識と『無』意識の二重プロセス」「意識と『不』意識の二重プロセス」など、一文字間違っていても正解とするなどの採点ミスが、相次いでいたということです。

次に多かったのは「理科」の生物分野の問題です。ここでは30件の採点ミスがありました。

正解は「合弁花」。「合べん花」「ごうべんか」など、ひらがなを交えて回答しても正解なのに、不正解とするなどの採点ミスがあったということです。

数学では、プラス・マイナスの符号が間違っているのに正解とするなど、採点ミスが22件にのぼる問題もありました。

また、全933件の採点ミスのうち、正解と不正解の誤りが503件、小計・合計の誤りが321件、配点・部分点の誤りが109件であることもわかりました。

第三者委員会が改善策の報告書

こうした多くの採点ミスの発生を受け、県教委は外部の有識者などからなる第三者委員会を設置。ことし6月、委員会は原因究明や改善策について報告書をまとめ、県教委に提出しました。

報告書では、採点ミスの原因について、以下のようにまとめられています。

▼採点ミスの原因

(1)採点者及び点検者の意識
採点や点検に対し、集中力の低下や慣れが生じるなど、採点者及び点検者の意識の面が要因の1つである。

(2)日程、採点期間
多くの学校で、限られた時間の中での焦り、長時間続けての採点業務による疲労や、採点のみに集中できない状況等によって、採点者の集中力や意識の低下が生じ、誤りにつながった。

(3)問題・解答用紙の構成
問題構成や配点の複雑さによって誤りが生じやすくなった。また、解答用紙に小問の得点記入欄が設けられていないため、得点記入が雑になったり、得点集計の際、読み落としや読み誤りにつながったりするなど、小計や集計の誤りの原因となった。

(4)点検
整備されたマニュアルであっても、ヒューマンエラーを防ぐことができなかった。

そして、改善策について次のように提言が示されました。

▼改善策案

(1)マークシート及びデジタル採点システムの導入
● マークシートを導入することで、選択問題の採点誤りをなくすことができる。また、記述問題の採点に注力できるようになり、マークシート以外の採点の誤りの防止にもつながる。
● 記述問題は、デジタル採点システムを導入することで、同一問題について複数の受検者の解答を1つの画面に同時に表示して採点を行うことができるため、誤りを防ぐことが期待できる。
● 全ての問題をマークシート及びデジタル採点システムで採点することで、得点計算が自動で行われるため、小計、合計についても誤りを防ぐことができる。
● 受検者の思考力及び表現力をみることや、中学校等での学習への影響を考慮し、記述式問題は残すべき。記述式とマークシートの割合については、県教育委員会で検討されたい。
● デジタル採点システムの導入により、集計や得点率の算出等に要していた業務が必要でなくなるため、業務負担軽減に繋がるとともに、点検作業のための時間を生み出すことができる。

(2)問題の配列・解答用紙の構成の改善
● 配点や解答方法が同じ問題を可能な限り揃える。併せて、解答用紙についても、問題ごとの小計欄を設ける等、採点者目線での配慮を行う。マークシートやデジタル採点システムを導入した場合は、この課題は解消する。

(3)2系統での採点と、合否のボーダーライン付近の点検の実施
● 採点を2系統でそれぞれの担当が行った上で、採点結果を突き合わせて点検を行う。デジタル採点システムであれば、効率的、効果的に実施することができる。
● 合否のボーダーライン付近の点検を実施し、合否の誤りを防ぐ。

(4)採点業務に集中できる日程の工夫
● 採点業務の合間に授業を行わなければならないなど、採点に集中できない環境を改善するため、採点のみを行う採点日を2日程度設ける。

(5)県教育委員会からの指示(統一のマニュアル)
● 改善策について、中学校や高等学校等への周知の徹底を図るとともに、採点や点検について、県共通のマニュアルを作成し、県教育委員会としての方向性を示す。

委員会座長
真田範行 弁護士

マークシートや機械の導入により、採点の負担を軽減できる。子どもたちの人生を決める部分もある入試でミスが起きないよう、ぜひとも提言を取り入れていただきたい。

県教委の対応は 懲戒処分も

今回の改善策を反映した入試方式は、来年行われる次回の入試から導入されます。

県教委は8月中旬以降、中学校の教員向けに実施要項説明会を行うと同時に、解答用紙のサンプルを受験者に対し公表したいとしています。採点側の公立高等学校には秋ごろをめどにマニュアルを作成し、具体的な採点方法や点検方法を示す予定だということです。

また、今回の高校入試の採点ミスを防ぐことができなかった監督責任として、本来合格だった受験者が一時、不合格となった県立高校の校長3人を、7月19日付けで戒告の処分にしました。採点ミスがあった県立高校の校長や副校長だった192人に対しては順次、指導措置を行うことにしています。

さらに、冨塚昌子教育長は、今回の問題を受けて1か月分の給料の10分の1を自主返納したということです。

  • 坂本譲

    千葉放送局記者

    坂本譲

    県政担当。検討会の真田座長の「子どもたちの人生を決める部分もある入試」という言葉に考えさせられました。

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