台風やゲリラ豪雨など、水害が多発する季節です。身の回りが浸水したらどこに危険が潜んでいるか、考えたことはありますか?
「AR=拡張現実」という最新技術を使って、子どもたちが水害を疑似体験する催しが千葉県鎌ケ谷市で開かれました。どのような危険が見えてきたのでしょうか。
(千葉局記者・大岡靖幸)
「浸水した体育館から別の避難所に移るため、水がたまった中を歩く」。
ARを活用して子どもたちが体験した水害の状況です。
体育館の映像に浸水の疑似映像が合成され、ゴーグルごしに体育館が浸水したように見えます。
【ARとは?】
日本語では「拡張現実」。現実の世界の映像にコンピューターを使って擬似的に映像や文字などのデジタル情報を合成し、「現実世界を拡張する」技術とされています。実際には存在しないものが、あたかも目の前にあるかのように見え、ゲームやビジネス、教育などさまざまな分野で利用され始めています。この技術を利用したスマホゲームが「ポケモンGO」です。プレイした人も多いのではないでしょうか。
防災教室が開かれたのは、鎌ケ谷市の南部小学校。参加したのは、6年生の児童30人あまりです。
小学校のある地域では、過去に住宅地などで何度も水害が起きているといいます。
子どもたちはまず、地域の地形などの特徴を学び、ハザードマップで自分の家の周辺にどのような危険があるのか確認しました。
そして、自治会長から水害の体験を元にした教訓について聞きました。
実際に大雨が降って水害が発生しそうな時にどうしたらいいのか、日頃から家族と話し合ってください。浸水したらどこにどんな危険があるか、分からなくなる。
そして「AR技術」を活用した体験です。NTT東日本千葉西支店の協力で行われました。
コースの長さはわずか5メートルほどしかありません。しかし、途中には「ロードコーン」が障害物として設置され、まっすぐ歩けないようになっています。
さらに、水が濁っていて障害物がどこにあるのか、見えにくい状況にしています。
実際の水害では、濁った水の下にマンホールや排水溝の穴があったり、自転車が倒れていたりする危険性があるためです。
「浸水したらどこに危険があるか、分からなくなる」。
このことを実際に体験した子どもたち。ひざにプロテクターを付け、傘を使って障害物を探りながら、おそるおそる歩きます。
5メートルを歩くのに1分近くかかる児童もいて、浸水時に歩くことの難しさを実感していました。
何があるか分からないし、転んだら命を落としてしまうかも知れないので、怖いと思いました。
常に災害を想像して、避難の仕方や持ち物を確認しておくべきだと思いました。
地震であれば揺れを体感できる地震体験車などもありますが、浸水や洪水はなかなか体験できないので、とてもありがたかったです。疑似とはいえ、一度でも体験しておくことで、実際の災害でもあわてず対応できるようになると期待しています。
体験教室の終了後、特別に記者も体験させてもらいました。足下が見えない中で障害物を探りながらの歩行は本当に難しく、いい訓練だなと思いました。
頭では分かっていても、体験することで私も初めて実感できました。水害が多発する昨今、こうした最新技術で多くの人たちが水害を疑似体験することで、少しでも被害の防止につながればいいなと思います。