「現八と信乃 尊い!」「 馬琴先生天才すぎる~!」
放送中の連続テレビ小説「らんまん」のワンシーンです。ヒロインの寿恵子さんが夢中になって読んでいたのが、曲亭馬琴作の「南総里見八犬伝」。江戸時代に書かれた全98巻にのぼる長編小説です。現代でも映画やドラマ、漫画化されるなど、200年という時を超えて愛され続けています。
実は、お話の舞台は千葉県!戦国時代の安房国(あわのくに・現在の千葉県南部)です。さらに、地域には「八犬伝博物館」があり、作品の世界にどっぷり浸ることができるんです。
独身時代の寿恵子さんの部屋、よく見ると・・・物語の絵も飾られていました。まるで“八犬伝オタク”のごとく、明治の女性が激推し!する世界に触れてきました。八犬伝にちなみ、スタッフが現地で見つけた8つの推しポイントをご案内します。
連続テレビ小説「らんまん」
【毎週月曜~土曜】
総合 午前8時~8時15分
*土曜は1週間を振り返ります
【毎週月曜~金曜】
BSプレミアム 午前7時30分~7時45分
【毎週月曜~金曜】
BS4K 午前7時30分~7時45分
八犬伝博物館があるのは、館山市。物語の題材となった戦国大名・里見氏の居城跡です。博物館は、昭和57年、摸擬天守の中にオープンしました。
駐車場もありますが、この日は、JR内房線→路線バス→徒歩で向かいました。館山駅から路線バスで約10分、バス停から歩いて約10分で到着。(お城までいい運動になりました!)
館山市を見渡す場所に立つお城が、そのまま博物館になっています。まるで物語の世界に入っていくようなワクワク感!
博物館は、「南総里見八犬伝」の作者・曲亭馬琴の紹介、登場人物や名場面を描いた錦絵の展示、江戸から現在にわたる人気ぶりについてなど、様々な視点から八犬伝の世界を紹介しています。
展示の中で、まず心をわしづかみにされたのは、当時の本の表紙。1冊ごとにデザインが異なるのですが、モチーフとして多く描かれているのが「犬」。この犬たちの姿がとってもキュート!まるまるとした子犬の集団や、雪の中で遊ぶ様子、足あと🐾の模様などなど。
ドラマの寿恵子さんもこの本に囲まれていたなあ、と思いながら、この愛らしい表紙に当時の女性たちもキュンときたのかも・・・と想像して、親近感がわいてきたのでした。
「南総里見八犬伝」は、全98巻106冊にわたる、アクションありファンタジーありのいわば冒険活劇で、登場人物も多く物語が複雑に絡んできます。(いつか全編読破に挑戦したい!)
らんまんでも、万太郎さんと寿恵子さんが、草花の図鑑を分冊で作っていくことを「八犬伝方式」と呼んでいましたね。
さて、八犬伝のストーリーとは?106冊にもわたる壮大な物語を要約するのは難しいのですが、とても簡潔にまとめると…
房総の戦国大名・里見氏の娘が、敵を倒した飼い犬とともに洞穴にこもる。しかし自害して果てることとなり、亡くなるとき、身に着けていたお守りの数珠の紐が切れ、「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の8つの玉が空高く飛び散る。その後、各地にその玉を持つ8人の勇者が誕生し、里見氏の危機を救うべく戦う物語。
小説のモデルとなった里見氏は、安房国を治めた実在の大名ですが、物語は、ほぼフィクションです。この名作を生みだしたのが、江戸時代の人気作家・曲亭馬琴(1767~1848)。文化11年(1814年)に刊行が始まり、完結を迎えたのは天保13年(1842年)。28年もの歳月を費やして作り上げられました。
馬琴がこの物語を書き始めたのは48歳で、完結時は76歳になっていたそうです…!年を重ねてからの挑戦だったことを、展示解説で知り驚きました。しかも、執筆の最後には失明して書くことがままならなくなりましたが、口伝えで創作を続けたといいます。
さらに馬琴は、物語の舞台に選んだ房総の地を、実際に訪れたことはなかったとされています。歴史書などを参考に考証を重ね、想像力をいかんなく発揮し、時代を超える壮大なフィクションを作り上げたのです。
江戸時代の出版当時から、八犬伝の人気はすさまじかったようです。完結の8年前には、歌舞伎でも上演されて人気がさらに沸騰。名場面や登場人物の錦絵も次々と作られたそうです。
特にへえ~と思ったのが、日本酒の宣伝用の錦絵。八犬士を七福神に見立てて描かれています。いわば、お酒の広告ポスターです。
お芝居になったりCMになったり、グッズが発売されたり。まるで現代の人気アニメで、江戸も今も変わらない・・・と感心したのでした。
「南総里見八犬伝」は、昭和48年から2年間、NHKの連続人形劇「新八犬伝」として放送され、人気を博しました。
坂本九さんの語りを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。博物館には、当時、実際に劇で演じていた、辻村ジュサブローさん(当時)作の人形3体も展示されていて、表情や着物の美しさにしばし見とれてしまいました。
人形劇の映像はこちらで👇
NHKアーカイブス「新八犬伝」
展示室から階段をのぼって天守閣の最上部へ。ここから城下を360度展望することができます。
四方が開け放たれて解放感バツグン!暑い日でしたが心地よい風が通り抜けて、しばし涼むことができました。
博物館では、八犬伝が大好きという来館者の方々とも出会いました。横浜市から訪れたという女性は…。
らんまんでも、寿恵子さんが大好きだと言っているのを見ました!私は、昔、NHKの人形劇を見て八犬伝のファンになったのですが、ここで展示を見ていて、久しぶりに当時の場面やセリフがよみがえりました。
博物館のみなさんも、まさか朝ドラに八犬伝が登場するとは思っていなかったといいます。
ドラマで寿恵子さんが八犬伝大好きというのを見て、びっくり!
スタッフの間でも話題になっていました。本や錦絵も出てきてうれしくなりました。ぜひ、実物のかわいらしい本の表紙を見に来てください!
また、同じ城山公園内にある館山市立博物館では、物語の題材になった里見氏についての展示もあるので、実際の歴史とともに楽しんでいただけたら、と思います。
八犬伝博物館で開催中の企画が「南総里見八犬伝総選挙」。物語の登場人物49人+1匹がエントリー。この中から自分の”推し”を3人選んで投票するものです。抽選で名産品などのプレゼントも当たるそう!
10月9日(月・祝)まで、インターネットで投票を受け付けていますが、八犬伝博物館でも投票できます。ちなみに、自分は、完全に独断でイケメンだと思う登場人物を選んで投票しました…!
「らんまん」の寿恵子さんを通して出会った「南総里見八犬伝」。舞台となった千葉では、200年の時をこえて、生き生きとした物語の世界が受け継がれ、その息吹を訪れる人に伝えていました。
館山城(八犬伝博物館)
●場所:千葉県館山市館山362番地先(館山城)
●開館時間:9:00~16:45 (最終入館16:30)
●休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始
●観覧料金:一般400円 小・中・高校生200円(団体料金あり)(※館山城と博物館本館の共通券)