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10増10減 千葉4区か14区か 野田元総理の選択は?各党は?

  • 2022年12月01日

「悶絶の区割り」。
衆議院の小選挙区を「10増10減」する改正公職選挙法が成立し、みずからの選挙区が真っ二つに分かれることを野田元総理大臣はこのように表現しました。
一方、自民党などからは、今回の区割りの見直しは、『野田王国』ともいわれてきた選挙区の議席を奪還するチャンス、という声もあがります。
次の総選挙に向けて、各政党の「駆け引き」がすでにはじまっています。

(千葉放送局記者 金子ひとみ)

「悶絶しながらの選択に」

立憲民主党の野田佳彦・元総理大臣。
千葉県第2の都市、船橋市の大半からなる衆議院千葉4区の議席を8期連続当選で守ってきました。

いわゆる「1票の格差」を是正するための法改正で、千葉4区は、真ん中の南北に分割線が入り、次の選挙から、新4区と新14区の2つに分かれることになります。

苦悩とかいうレベルではないですね、真っ二つで。それはもうどっちを選ぶと言ったって、簡単ではなく、切ない選択ですよね。

「『地盤、看板、カバンという3バンのない中、松下幸之助さんの助言もあって、20代で県議選に出る際に駅での活動を始めた」という野田氏。
1996年、2度目の衆議院選挙で、わずか105票差、惜敗率99.9%で落選・浪人した際、「1票の重みを痛切に知った」といいます。
このため、平日毎朝6時ごろから2~3時間、選挙区内の駅前に立ってチラシを配り続け、4区に固い地盤を築いてきました。

改正法が成立した11月第3週に配った1337号のチラシのタイトルは「悶絶の区割り」。「起立採決でしたが立ちくらみする思い」、「4区か14区か、悶絶しながらの選択となるでしょう」などと、苦しい胸の内がつづられていました。

4区→新4区と新14区に

変更前の区割り(船橋市HPより)

東京と千葉市のほぼ中間に位置する船橋市。
人口64万人で都内に通勤・通学する「千葉都民」と呼ばれる人も多くいます。
区割り変更前は、市の大半、人口の9割弱が4区、北東部などの1割あまりが周辺の鎌ケ谷市や白井市などとともに13区でした。

今回の区割り変更で、船橋市の北東部は13区から抜けることになりました。
郵便番号がおおむね273から始まる船橋市の西部が市川市の北東部とともに4区に、郵便番号がおおむね274から始まる船橋市の東部が習志野市全域とともに14区です。64万人の船橋市民の人口は、2つの区にほぼ半々となります。

道路左側が新14区、右側が新4区

中には同じ町内で分かれるところもあります。
これまで4区だった飯山満(はさま)町は1丁目は4区のままですが、2丁目と3丁目は14区へと変更となります。
住宅街の中の幅5メートルほどの市道で、選挙区が分かれるところもあるのです。

有権者

ぜんぜん知らなかったです。実感がなくて。まだピンとこないです。

有権者

私たち今4区だけど、それが分かれるわけですか?14区になるの?えーそうなんですか?候補者どうなるんでしょ?難しいね。

“相手が強い方に私がチャレンジするのは当然“

船橋市内でパン屋を営む髙村清太郎さん(41)は、投票用紙に野田氏の名前を書いてきました。野田氏は、ひとりでふらっと髙村さんのパン屋に立ち寄り、コロッケパンやクリームパンを好んで購入しているといいます。
商店街の催しや懇親会を通じて地域の困りごとを伝えたり、国政で分からないことを尋ねたりして野田氏と交流を重ねてきました。

髙村さん

ちょうど選挙権がもらえる20歳のタイミングで、大学行くとき、駅に立ってた政治家からチラシをもらったんです。それがたまたま野田さんだった。当時、僕はバンドで『政治家なんてカネ、カネ、カネ、あいつら何やってんだー』って、何も知らないで歌ってたけど、そうじゃないんだ、と。難しい話もわかりやすく説明してくれる、興味がなかった政治を一番最初に身近に感じさせてくれた人ですね。

(提供:髙村清太郎さん)

今回の区割り変更で、野田氏がどちらの選挙区を選ぶのか、そのゆくえに気を揉んでいます。

髙村さん

どっちを選んでも応援し続けたいという気持ちはあるんですけど、ずっと名前を書いてきた人間としては、もし書けなくなったら寂しいなというのはありますよね。正直に言えば、名前を書き続けていきたいという気持ちはあります。

新たに4区となる市川市や14区となる習志野市でもチラシ配りをはじめた野田氏。立候補する選挙区をどちらにするのか、苦渋の選択を迫られています。

両方とも本当に長い間応援してくださった方がたくさんいらっしゃるわけで、変な決め方をすると、ずっと応援してくださった方が、『裏切ったな』と思って逆に相手のほうにいく可能性がある。
対戦相手が強い方に私がチャレンジするのは当然だと思うが、ある意味、政治生命に関わるピンチかもしれない。でも逆に言うと、2勝できるチャンスでもある、大きな決断だと思います

一方、自民党は

岐路に立たされているのは、野田氏だけではありません。

木村哲也元衆議院議員

4区で野田氏と議席を争ってきたのが、自民党の木村哲也元衆議院議員です。野田氏と3回戦い3敗しましたが、2017年の選挙では比例復活で当選し、内閣府政務官を務めました。

木村氏

区割り変更で船橋が影響を受けるのはある程度想像してましたけれども、縦に稲妻が落ちたように分断をされるというのが非常に衝撃的で、まさか、と思いました。

2017年の選挙活動

衆議院議員の秘書を経て、生まれ育った船橋の市議会議員を3期務めた後に千葉県議会議員になりました。自民党では「落下傘」候補が挑んできた4区で、2014年、待望の地元候補として、野田氏の牙城を崩すべく立ち上がりました。

木村氏は、国政への返り咲きを狙って、駅前での演説などを続けています。

木村氏

『総理経験者に勝てるわけがない、なんで出るんだ?』『県議を続けて野田さんが年取るまで待てばいいじゃないか?』と、よく言われました。でも、誰かがやらねばなりませんから。待っていたら、私よりももっといい人が出てくるかもしれない。国会議員として早くやりたいことがあった。道路や水門の整備など市議・県議の立場でやりきれなかったことに臨みたかった。

「野田王国」崩すチャンス?

船橋市

小泉元総理大臣による「郵政解散」の2005年、安倍元総理大臣が突然解散した2017年、与党が圧勝したこれら2回の選挙でも、千葉県内で、唯一、自民党が勝てなかったのが4区でした。「千葉県は『保守王国』、船橋だけは『野田王国』」とも形容されます。

自民党千葉県連

自民党の議員からは、「変わらず厳しい」という声がある一方、「これまでよりも戦いやすくなるのではないか」と、区割りをチャンスと捉える見方も出ています。

自民党国会議員

野田さんも年を取るし、新たに選挙区に加わる市川や習志野は自民党の強い地域でもある。どのようなストーリーを持つ候補者を選ぶか、戦略の立て方が非常に重要。

自民党県連幹部

野田佳彦は1人しかいない。野田さんじゃない人が出る方は絶対取らないと。可能性は広がったと思う。難しい船橋でずっとやってくれているので、木村がどっちから出たいか、その意思は重視したい。

木村氏

本音を言えば、野田先生と分かれてというのはなきにしもあらずですが、違う選挙区をわざわざ選んで出ようとは全く考えておりません。最初から元総理大臣と戦う覚悟を決めていますから。
選挙で落ちて浪人すると、パッと会合に呼ばれなくなる。案内が来なくなる。『どぶ板』で会合に出させてもらっても『今日は紹介されなかったなぁ』ということもよくあります。ただ、そんなときでも、支えてくださる町会や自治会が4区にも14区にもいっぱいある。本当に難しいですが、後援会や支援者の意向をしっかり聞きたい。

新しい区割りでの候補者擁立について、自民党は、新たな小選挙区の候補者は地方組織の調整を踏まえた上で決定する方針です。千葉県連では、早急に検討していくとしています。

他党、どう動く?

公明党千葉県本部

チャンスと捉える見方があるのは、自民党だけではありません。出方に注目が集まっているのが公明党です。
2000年に党公認候補が千葉2区で敗れて以来、悲願となる党の公認候補者を千葉県内で擁立したいとしています。

公明党千葉県本部 平木大作代表

『選挙区が増えたら公明党として絶対に手をあげます』というのはずっと自民党さんに言ってきました。ただ、イコール新14区(への擁立)ありきというわけではない。船橋は野田元総理大臣がいらして、いきなり高い壁にぶつかっていくことになりますし、船橋以外にも大きく区割りが変更しているところはいろいろあります。

そうした上で、このように話しました。

平木代表「自民党さんとの話し合いが重要だと思っています。わが党としてどのあたりで擁立したいかという希望はすでに伝えていますが、自民党さんの考えもある。けんかを売るようなやり方は取りたくなく、良好な関係を壊さないよう進めていきたいです」

このほかの政党にも聞きました。

千葉維新の会(日本維新の会県総支部) 藤巻健太代表代行「今は来春の統一選に全精力を傾けているが、4区・14区に限らず、県北西部は維新の会への支持が高い地域で、本部とも相談の上、擁立を検討していく」

共産党千葉県委員会 仁木利則選対部長「新しい選挙区ごとに野党共闘が成立するかどうかがポイントとなる。検討はこれからで、現時点でどの区に共産党の候補を立てるかということは言えない」

国民民主党千葉県連 天野行雄幹事長「本部マターにはなるが、立憲とうまく候補者調整できたらと思う。県北西部は国民の基盤がある大切な地域で、南関東比例の議席のことも頭に入れながら、戦略を練る」

れいわ新選組 多ケ谷亮国会対策委員長「れいわ新選組として、千葉県内で積極的に候補を擁立する方向で検討したい。現段階ではまだ何も決まっていないが、野党共闘に応じる考えもある」

候補者や政党にとっても、有権者にとっても、大きな変化となる14区の創設。3年以内には必ずやってくる次の衆議院選挙に向けて、駆け引きはすでに始まっています。

千葉県全体の今回の区割り変更について、詳しくは👇
「10増10減」区割り 千葉県は13→14選挙区に 衆議院小選挙区

地元の首長らは

4区と14区にかかわる船橋・市川・習志野の各市長が、区割りについてどう思っているのか、定例記者会見の場で尋ねてみました。

船橋市 松戸徹市長「非常に答えるのが難しいですけど、次々と区割りが変わると、住んでいる人たちから『誰のことに注目したらいいんだ』という声があがります。『国は俺たちのことをどう考えているんだ』と。今回、こうなった以上、落ち着いた形で、今後急きょまた変わりますというのは極力避けていただきたい」

市川市 田中甲市長「今までは松戸とくっついていた部分が今度は船橋とくっつく、有権者の市川市民は戸惑いが隠せない。市川市がひとつの選挙区となって国会議員を選ぶ形を取りたいですが、『地政学的に隣の浦安はどうするんだ?、市川と一体となって考えなきゃいけない』となるので、分かれるのはやむをえないのかなと思います」

習志野市 宮本泰介市長「区割りが増えて、より詳細な声を届けることができるという意味では歓迎したい。船橋と一緒になることへの支障はないと思うんですけど、『ナラハチ』とまとめて言われる八千代市と離れるのはおそらく初めてです。花見川や幕張とも旧千葉郡ということで一緒だったのが、そこに線が入る。どういうふうに変わるのか、私にもわからないです」

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    区割りの変更を見据え、初秋から習志野市も担当。〒273-の船橋市西部在住。

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