日々、千葉の天気についてツイートしているラッカ星人。
「最近、変な天気が多いラッカ…。今年は6月から暑かったナ。予報にない急な雨も多いナ」。現在、エジプトでは気候変動対策を話し合う国際会議「COP27」が開かれています。これにあわせて、千葉局の記者たちがいろいろと取材しているようです。
「記者たちに聞いてみるんだナ!」。
きょうから5日連続で、「ラッカ星人が探る!気候変動のいま」をお伝えします。
まず話を聞きに行ったのは、岡本記者。
今年の夏までは環境省担当記者で、去年のCOP26も取材したんだって。
最近、これまでにない天気が多いと思うんだけど、これって気候変動のせいなのかナ?
自然な変動もあるから、一概に全てが気候変動や地球温暖化の影響とは言えないんだよ。だけど、気候変動が進むと、極端な大雨や猛暑の頻度や強度が増えるとされているんだ。
極端な大雨や猛暑って?
例えば、環境省が公開している「2100年の天気予報」を見てみよう。気候変動対策を取らなかった場合、2100年の天気がどうなるのか予測したものなんだ。
2100年8月の最高気温は…?
東京が43.3℃!?
そうなんだ。
これは今後も世界で気候変動対策が取られず、世界の平均気温が、産業革命前(※)と比べて「4.8℃」上昇してしまった場合の予測だよ。
猛暑だけでなく、大雨のリスクもひどくなるんだ。
例えば、世界の平均気温が「4℃」上昇してしまうと、10年に1度の大雨が起きる頻度は現在の2倍ほどに増加して、さらにその強さは20%ほど増すと考えられているよ。
(※)産業革命から温室効果ガスの大量排出が始まったため。
台風はどうなるラッカ?
3年前に首都圏で大きな被害をもたらした台風19号と同じ規模の台風が、気候変動が進んだ日本に接近した場合のシミュレーション結果があるよ。
その結果では、利根川や荒川などの8つの水系の流域で降水量が増加。
世界の平均気温が「4℃」上昇していた場合、
▼各水系の最大流量は平均29%増
▼氾濫の危険性のある場所は2.28倍に広がるおそれがある
と分かったんだよ。
…防ぐことはできるラッカ?
こうした影響は、世界の平均気温が産業革命前と比べて「1.5℃」以上、上昇してしまうと、後戻りできないレベルまでひどくなってしまうとされているよ。
でも実は、すでに「1.1℃」まで上昇しているんだ。
残りちょっとしかないんだナ…。
そうなんだ。だから世界各国は去年の「COP26」で、「1.5℃」を共通の目標にして、これを上回らないよう対策を取っていくことで一致したんだよ。
世界全体で取り組むことになってるんだナ!
でも、気候変動って本当に悪い影響だけなの?
いいこともあるって聞いたラッカ。
確かに、気温が上昇することによる好影響もあるよ。寒い地域でこれまで育てられなかった農作物を栽培できるようになったり、これまでとれなかった魚がとれたりする現象はすでに起きているんだ。
北海道では、最近は名産だったイカの不漁が続いてるんだけど、代わってこれまであまり水揚げされなかったブリの漁獲が急増しているんだ。そこで、新たに北海道のブリをブランド化しようという動きもあるんだ。
すごいじゃない!ブリも好きだナ。
でも、気候変動による干ばつや異常気象によるリスクは、全体で見ると、こうしたメリットを大きく上回るとされているよ。
ただ、どちらにしても、気候変動が進むと環境が激しく変化することになるよね。大企業や資金に余裕のある事業者は、変化に対応してメリットを受けられるかもしれないね。でも、零細企業や個人で事業を営んでいる人は急な変化に対応できないよね。
気候変動は、こうした弱い立場の人たちが最も強く影響を受けることも大きな問題なんだ。
なるほどね。さっきの試算とか分析は、信頼できる人たちがやってるラッカ?
世界各国の科学者でつくる国連の「IPCC=気候変動に関する政府間パネル」が数年ごとに報告書をまとめているよ。
世界中で出された論文や研究成果を元にして、
▼気候変動の現状や今後の見通し、
▼自然や社会などへの影響、
▼温室効果ガスの排出を削減する対策について、
それぞれ統一的な見解をまとめているんだ。
日本も含めて世界各国の政府が承認している内容だから、異論のない最も信頼できるソースだと思っていいんだよ。
ちょうど去年から今年にかけて、最新の報告書が公表されたよ。
最新の報告書ではどんなことが書かれたのかナ?
「気候変動の原因は人間の活動による温室効果ガスの排出」と初めて断定したことは、大きな話題になったね。
これまでは「地球が温暖化するのは自然現象じゃないか」といった意見もあって、ずっと「可能性が極めて高い」とか慎重な言い回しを続けていたんだ。
でも、産業革命以降に急激な気温の上昇が観測されていて、
▼過去2000年以上で例がないくらい高い気温上昇
▼過去10万年で最も地球が温暖だったころの気温を上回ると思われる
▼人間活動と自然影響の両方を考慮して推定した気温とほぼ一致
といった理由から、「人間活動が気候変動の原因だ」と言い切ったんだよね。
「1.5℃」を目指して温室効果ガスを削減しないといけないのは分かったけど、どうやったらいいのかナ?
いろんなことをやらないといけないね。
「1.5℃」の実現には、
▼2030年までに全世界の排出量を半減、
▼2050年までに全世界でカーボンニュートラル(脱炭素)を実現しないといけないとされているよ。
世界中って大変だナ。
そうなんだ。だから、これまで多くの化石燃料を使い、温室効果ガスを出しながら発展してきた先進国は、率先して削減すべきだと指摘する声もあるんだよ。
日本では、二酸化炭素の排出量のうち3分の1が発電に由来するものだから、まずは電力の脱炭素化、例えば再生可能エネルギーの導入が大事なんだ。
千葉でも、銚子市沖で洋上風力発電の計画が進んでいるのは、ラッカ星人もよく知ってるよね?
これから工事が始まっていくんだナ。
でも、日本より中国やアメリカの排出量が断然多いって聞いたラッカ。日本が頑張っても意味ないんじゃないかナ?
確かに、国別の二酸化炭素の排出量では、多い順に中国、アメリカ、インド、ロシアで日本は5番目とされているよ。だから“短期的には”、中国やアメリカの排出を削減することが大事だよね。
でも、2050年には全世界で「カーボンニュートラル」を実現しないといけない。日本も「ゼロ」にするんだから、削減を進めるのは一緒なんじゃないかな。
あと、世界中で削減に向けて研究開発を進めている中で、日本が「中国が減らすべきだ」といって何もしないと、のちのち技術力などでおくれを取ってしまうおそれがあるんだ。だから、より排出量が多い国々を巻き込みながら、日本も削減に向けた投資や研究開発を進める必要があると思うよ。
日本は海外と比べて、省エネが進んでいるから大丈夫っていうのも聞いたラッカ。
確かに、かつてはオイルショックをきっかけに、日本で省エネが進んだとされているね。でも、そのころとは世界の情勢が大きく変わっていて、気候変動対策では十分とは言い切れないんだ。
2019年の1人あたりの年間の二酸化炭素排出量を国別に見てみると、
▼中国:7.1トン
▼アメリカ:14.5トン
▼インド:1.7トン
▼日本:8.3トン
▼ドイツ:7.8トンとなっているよ。
中国の方が少ない!
そうなんだ。中国は洋上風力発電など、再生可能エネルギーの導入にも積極的になってきているし、決して日本が世界各国と比べて気候変動対策が進んでいるとは言えないんだ。
再生可能エネルギーを導入するっていっても、太陽光パネルは環境に悪いって言う人もいるラッカ。
山林を切り崩して設置された太陽光パネルが、各地で問題になっているね。こうした施設は、2012年に再生可能エネルギーで発電された電力を全て買い取る国の制度が始まってから急増したんだ。土地を無理に造成したり、景観を損ねていたりして、環境に配慮しているとは言えないケースもあるよね。
そして、再生可能エネルギーの割合が太陽光に偏りすぎていることも、大きな問題になっているよ。昼間には電力が余ってしまうケースも出ているんだ。今後は、夜も発電できる風力などを活用するとともに、電気自動車の普及にあわせて、電力を蓄えて賢く使うことも考えないといけないね。
ただ、太陽光発電は再生可能エネルギーの中で最も手軽に設置できるものだから、住宅の屋根で自家発電をするなど、エネルギーの特性を生かして導入していく必要があると思うよ。
気候変動を防ぐためにラッカ星人にできることはあるのかナ?
まずは気候変動問題に関心を持つことが大事だよ。現在、エジプトで「COP27」が開かれているから、関連のニュースはぜひチェックしてみてね。
その上で、個人でできる行動もあるんだけど、行動によって効果が異なるし、費用がかかる場合もあるから、うまく考えながら見極めてね。
僕が以前に書いた記事や、専門家などが集まって作ったガイドもあるから参考にしてみてね。
▼57の温暖化対策「見える化」してみた | NHK | News Up
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210907/k10013238301000.html
岡本記者、ありがとう。これから気候変動に関するニュースを意識的に「チェキ・ナッツ」していくラッカ!
明日は、荻原記者に北総地域で広がり始めている「バイオ炭」という気候変動対策について聞くんだナ!