千葉県内の市町村の女性首長で、初めて2期目の当選を果たした君津市の石井宏子市長。新型コロナウイルスや、物価高による生活への影響など課題は山積みです。2期目をどうかじ取りするのか。「命と暮らしを守る」を掲げる石井市長に聞きました。
(千葉放送局記者 武田智成)
石井氏は現在、58歳。市議会議員や県議会議員を経て前回、4年前の市長選挙で初当選しました。そして10月の市長選挙で、自民党が推薦する新人を抑えて2回目の当選を果たしました。
選挙戦を振り返ってどうですか?
正直ほっとしています。職員とともに、コロナなどさまざま乗り越えて来ましたけれども、その姿勢に対する評価はいただけたと思います。選挙期間中、非常に肯定的にご意見をたくさんいただきました。ありがとうと言ってくれたり、このまま続けてほしいとか、そういったことの流れではないかと受け止めています。
2期目の市政運営。石井市長が目の前の課題としてあげたのが「物価高」でした。
市としてはどう取り組みますか。
直近だと12月1日から君津市キャッシュレスポイント還元を実施します。市内で600店舗程度対象となって、最大で25%還元します。11月に県が行って、12月からは市が行い今年いっぱいまで続けます。これは物価対策のほか、将来的なデジタル化や、感染症対策にもなり得ます。
あとは、このあとの臨時議会で3学期の給食費無料化を提案します。これまでは2学期まで限定していましたが、3学期も継続して無償化し、対象外となる高校生については1万円を支援します。
さらにユニークなこんな対策も・・・
石井市長「子育て世代に生活支援米を配布しています。米の消費が下がっている中、農家の状況改善と子育て世代への支援として地元産の米を配布しています。これが消費者と生産者、双方の経済対策で、経済を回していくことが大事なので、これがきっかけに君津産の米を知ってもらいたいと思っています」
一期目から、子育て世代の支援に力を入れてこられましたね。
やはり待機児童ですね。今の見込みだと来年度からゼロになる。待機児童をゼロにしていくことと、今、公立の保育園が老朽化しているので、民営化を進めています。私が市を預かるまで、12園中11園公立でした。私になってから民間に移していって、今、民間の保育園は5園になりました。民間の力を借りて、来年度から2園、民間に移管します。さらに公立を集約していく予定で、3つの保育園を一つにして150人規模の定員にします。そこに子育て支援センター機能も入れて、子育てに関わる相談を一点に受けられるような子育て中心となる拠点をつくろうとしていて、来年度から着工に入れればと思います。
武田記者「君津市は、3年前の台風15号で甚大な被害がありました。地元での防災意識も高まる中、被害を防ぐために求められることは何でしょうか?」
石井市長「災害対応能力は台風以降、向上したと思っています。ハード面の整備はもちろん、市民の皆さんは危機感をもっています。コロナで人と人のつながりが希薄になっていますが、もう一度、防災の観点から地域で助け合うことが求められます。それが強靭な地域をつくることにつながると思います。ハード面は我々がやりますが、地域ごとに違う課題やリスクを見極めた上で、どう助け合うか。いわゆる自主防災組織だったり、地域ごとの防災計画を作っていかなくてはいけないと思っています」
君津市の人口はおよそ8万1000人(10月1日現在)ですが、1995年の9万3000人あまりをピークに年々減少して少子高齢化も進んでいます。
選挙では、駅や高速道路の周辺を活性化を掲げましたが、どういう経済対策を検討していますか。
(商業施設の誘致など)民間投資を促していくということになります。正直難しいですが、行政も本気でやっていきたいし、一定の人口はまだあるので、可能性はあります。例えば、インターチェンジ周辺にしても、南房総の玄関口だと思っています。今アクアライン経済効果によって、袖ケ浦や木更津は元気になっています。次は君津だと思っています。
観光業は鍵になると思いますが、今伸び悩んでいる現状もあるのではないですか。
観光業もコロナで浮き沈みがあります。ただせっかく水と緑が豊かなので、これをいかした政策が必要でないかと思います。
具体的にはどんなことですか?
一つは郡ダムの水上スキーです。東京の学生たちが水上スキーをやっています。合わせて、亀山地域には紅葉があり、観光客を誘致してそうした環境をいかした可能性をもう少し力を入れていきたい。この環境を生かさない手はないのですが、君津市は『ちょっと立ち寄るというだけの場所』になってしまっています。そこで体験や宿泊、あとお酒があるのでそのへんを考えてパッケージ化して、目的地としてもらえるようにしたいです。
県内での女性首長は、54市町村のなかで5人となりました(2022年11月)。石井市長は、初めて再選を果たした市町村の女性首長でもあります。
県内でも女性で首長に当選する人が出てきましたね。
非常にうれしいことです。私が市を預かった時に、女だからだめだというのは絶対言われたくないと思っていました。2期目当選できたのはそういう意味でも、うれしいことではあります。ただ、そのあと首長が増えてきたのは時代のニーズです。皆さん挑戦できる環境にもなってきているし、その挑戦に対して市民のみなさんが認めていくということになっているので、これはあきらかに時代のニーズなんだろうと思います。だからこれからはできれば男女であるとか性別を超えて、もちろんLGBTQもそうですけども、人として評価されるというか、そういうふうになっていくだろうと思いますし、もうそういう状況です。
政治家を目指す女性に伝えたいことを聞いたとき、石井市長は、あえて女性という言葉を使わず、「政治家を目指すすべての人に対して」ということで話をしてくれました。
石井市長「自分のこうしたいという志があれば共感する人が増えてきて、その共感がだんだん広がっていくというか、必ずその思いは成し遂げられるのではないかと思います。強い意志をもって取り組んでいってほしいですし、本質的なことを見失わないでほしい。自分は何をやりたいのか、何のためにやりたいのかということだけを見失わなければ、どういう性別であったとしても道は開けてくるのではないかと思います」
「必ず道は開けてくる」。力強く話した表情からは、2期目の市政運営を必ず良い方向に導くという自らにも言い聞かした言葉にも感じられました。今後も石井市政の取材を続けていきます。