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レッサーパンダは絶滅危惧種 風太のもうひとつの貢献 千葉

  • 2022年09月02日
風太(風子さん提供)

2本足で立つ姿で一世をふうびした千葉市動物公園のレッサーパンダ「風太(ふうた)」。ことし7月で19歳になりました。
みなさんは、レッサーパンダが絶滅危惧種に指定されていることをご存じでしたか?
美しい立ち姿で動物園のアイドルになった風太の、もうひとつの大きな貢献を知って欲しいと願うファンが、このほど一冊の本を書き上げました。

(千葉放送局記者 渡辺佑捺)

風太一家:5世代、15年の物語

風太一家を観察し続けている中野志保さん(44)です。みずからを「風子(ふうこ)」と名乗り、SNSなどを通じて、レッサーパンダや風太一家の魅力や情報を発信しています。

「風子」さんがこのほど書き上げた本です。都内の自宅と、千葉市内にも部屋を借り、行き来をしながら15年間にわたって風太一家を観察してきた記録です。

渡辺記者

「風太の本を出すのは、初めてですか?」

風子さん

「はい。このために4コマ漫画を初めて書きました。千葉市動物公園に行くと、いつもなら半日くらいいるんですが、執筆期間中は2、3時間で我慢して帰って作業しました」

渡辺記者

「2、3時間でも十分長いと思います(笑)。一番、力を入れたのはどこですか」

風子さん

「風太というと、立つレッサーパンダというイメージが強いと思うのですが、レッサーパンダは実は絶滅危惧種なんです。そして、風太は繁殖にとても貢献してきたことを知ってほしいんです」

渡辺記者

「具体的にはどんなことですか?」

風子さん

「レッサーパンダは、動物園同士で工夫しながら血が濃くならないようにスタッフのみなさんが一生懸命、繁殖をさせているんです。レッサーパンダにとってもきっとストレスがかかることだと思います。でもそういうことを乗り越えて頑張っている日常を描くことで、繁殖も大変なことなんだと気づいてもらえるといいなと思います」

本の1コマ

国際自然保護連合のレッドリストによると、レッサーパンダは絶滅危惧種に指定され、「過去3世代(推定18年)でおよそ半減していて、今後も減り続ける」と予測されています。

風子さんのいうように、ことし2月には、風太の孫の「みい」のお婿さんにあたるオスのライムが、繁殖を目的として千葉市動物公園から群馬県桐生市の桐生が岡動物園に搬出されました。

 

渡辺記者

「風太一家の繁殖について、風子さんはどんな気持ちで見ているんですか?」

「飼育員の方から、風太の息子にあたるクウタとメイメイの赤ちゃんが生まれたよ、と教えてもらったときに、とてもほっとしたことを覚えています。モニター越しに、メイメイと赤ちゃんの姿を見てすごく感動して泣いてしまいました」

渡辺記者

「本では、クウタの双子の兄のチイタが、静岡県浜松市の浜松市動物園に引っ越ししたエピソードも書かれていましたね」

風子さんが撮ったクウタ(右奥)とチイタ(左手前)

風子さん「チイタとクウタは珍しく本当に仲のよい兄弟だったんです。チイタが引っ越しをした次の日の朝、クウタが一生懸命チイタの姿を探していて、これほどまでにつらい思いをするんだとびっくりしました。そわそわしていたり、木の上でぐったりして落ち込んでいるようにも見えて、なおさらわたしたちで見守っていきたいと思いました。このエピソードを書いたあとは、3日くらい執筆できませんでした」

渡辺記者

「どういう人たちに読んでもらいたいですか」

風子さん「小学生くらいのお子さんとその親御さんと、一緒に読んでもらいたいですね。特に動物が好きな子どもたちに、いろいろ考えてもらいたいです。かわいいだけでなく、動物のいろいろな側面を知ったら、動物園がもっと楽しくなるのではないかと思います。あとは、レッサーパンダに限らず、マニア気質なひとにも読んでもらいたいです。15年間レッサーパンダを追ってきた成果を詰め込んだので、マニアックな部分でおそらく面白いと思ってもらえるんじゃないかという自負があります」

いつまでも元気で

渡辺記者

「風太は、ことし7月には19歳を迎えました。体調不良で少しお休みの期間もありましたね」

風子さん「去年も歯の治療で休んでいたのですが、ことし4月ごろから食欲がなくなりお休みしていたのはとても心配でした。いつ復帰できるか心配して毎日過ごしていましたが、飼育員さんに『風太さんきょうは元気ですか』と聞くと『元気にしてますよ。ごはん食べましたよ』と話を聞くだけでとても安心しました」

千葉市動物公園ツイッターより

風子さん「風太は、元気で居てくれるだけで本当にうれしい気持ちになります。風太らしく、人生を生きて欲しいです。そして願わくば、いつか千葉市の市民栄誉賞を受賞してくれたらいいなと思っています」

取材後記

風太くんブームはいまから15年以上前。わたしもテレビや新聞で風太くんを見て、レッサーパンダという動物を知りました。千葉市動物公園に風太くんがいるということを知ってから風子さんに出会い、活動を追ってきましたが、レッサーパンダが絶滅危惧種に指定されている動物であることは全く知りませんでした。高齢になって、立つことは難しくなりましたが、レッサーパンダの名声を高め、そして種としての繁殖に貢献してきた風太くん。これらの功績を多くのひとに知ってもらいたいと思いました。そしてこれからも元気に過ごす風太くんを見守っていきたいです。

  • 渡辺佑捺

    千葉放送局 記者

    渡辺佑捺

    2021年入局。風子さんのSNSは毎日チェック。風子さんが撮影したレッサーパンダたちに癒やされています。

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