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千葉県全国41位の衝撃!カギを握るのは「首長」のみなさんです

  • 2022年07月27日

『千葉県は全国で41位』
これ、何の順位かわかりますか?
ちなみに近隣の埼玉県は14位、東京都は13位、神奈川県は19位です。
実は、行政分野でのジェンダー平等の達成度についての順位なんです。

(千葉放送局記者 杉山加奈)

全国41位の衝撃!

上智大学の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」の調べによると、千葉県は、行政職員における女性管理職の割合が全国47都道府県中、県職員が39位、市町村職員が41位でした。具体的には、

▽県職員 8%(689人中、女性は55人/課長相当職以上、教育委員会事務局を除く)
▽市町村職員 12.2%(3888人中、女性は474人/課長相当職以上)
(いずれもことし2月1日現在)

杉山記者

近隣の都県に比べても低いこの数字、いったいなぜなんでしょうか。県の担当者に聞いてみました。

千葉県人事課人事管理班 山之内潮 班長
「全国比較でなぜ千葉県が低いかは検証できていません。ただ、県職員の受験者数でも女性が少ないことから、全体比率で見ても少なくなります。家庭の介護や育児のために管理職を望まない人もいます。管理職になると職責が重く、1人のペースで仕事ができなくなったり、議会対応など、必ず管理職が対応しないといけない場面が多くなります」
「引き続き、男女の区別なく適材適所に配置していきたい。また、研修を実施し、意識改革に努め、組織の中枢で働く女性の積極的な登用を進めたい」

女性も「キャリアを諦めないで!」

杉山記者

6月まで千葉市で副市長を務めていた川口真友美さん(現・総務省自治行政局選挙部政治資金課政党助成室長)に話を聞いてみました。

川口さん

千葉市では、女性職員のキャリアを後押しするために、「将来、自分が上位職(補佐・主査)に昇格する姿を想像できる」かどうかについて、職員向けにアンケートを取りました。

千葉市作成
杉山記者

昇格を想像できないと答えたのは、女性のほうが多いですね。

川口さん

理由をみると、『家庭状況(子育てや介護など)に余裕がなくて、仕事との両立に不安だ』と回答した人が、男性より女性の方が割合が高かったのです。背景には、家事や育児、介護の負担がどうしても女性に偏っていることがあります。

杉山記者

なるほど。しかしこの背景は、公務員だけでなく、広く一般に言えるものですよね。公務員ならではの理由というのは、ほかに考えられるのでしょうか。

川口さん

実は公務員は働き続けるための施策はかなり充実していると思います。育休復帰後も、時短勤務をかなり長い期間とることができます。ただそれは一方で、女性の側だけが長い期間、フルで仕事をするのではなくて、ワークライフバランスに重点を置いた働き方を続けてしまうことにつながっています。

杉山記者

施策の充実が、女性側の働き方を固定化させてしまっている可能性があるということなんですね。

川口さん

このため職員のみなさんには、働き続けるだけではなくて、キャリアアップをするため、上位職を目指して1つ1つ確実に経験を積んでいくための環境を整えて、例えば子どもが生まれた後、また子どもが少し大きくなってきた時にどのような働き方ができるのかを考えてほしいんです。

杉山記者

川口さんは副市長時代に、自らが講師となって女性職員を対象にしたキャリアアップ研修を行ったそうですね。

川口さん

私はこどもが2人いますが、1人目が生まれて復帰した時は、母親が子育ての多くを担うものという思い込みがあり、時間外勤務がない職場を希望して、お迎えを全部毎日私が行っていました。ただ、そういう働き方を希望していると、行ける部署も限られますし、自分がもう少しチャレンジしたいというか、面白い仕事ができるところに配属してもらうためには、もうちょっと自分の働き方っていうのを幅を広げないといけないと思いました。

川口さん

2人目が生まれて育休から復帰する時は、夫とお迎えを分担をして、必要があれば週に何回かは必要な残業はしますと、そういう環境を自分で整えて復帰するという話を人事として、自分が配属される職場の幅をもうちょっと広げて復帰をしました。その次に千葉市の総合政策局長に赴任することになり、やはり自分でチャレンジをした経験が、その次の機会につながったと考えているので、『ここまでやってみようかな』というのを少しずつでも、皆さんにもチャレンジをしてもらいたいなということを話しました。

杉山記者

そうは言っても、時短勤務を取ること自体が悪いことではないし、ワークライフバランスを重視する人がいることは問題ないですよね?

川口さん

全くみんなが同じようにキャリアを積んで、夜中まで残業をしていた人しか管理職になれないというのはおかしいと思うんですけども、やり方はどうあれ、やはり一定の経験というものを積んだ上で管理職に上がっていくという姿が望ましいと思いますので、そういう経験を積むためにはどういう風な働き方をしていったらいいのか?ということを考えていかなければいけないと思います。

杉山記者

これからキャリアを積もうと考えている女性職員に対してメッセージはありますか。

川口さん

子どもが小さいうちは体力的にも大変ですし、目の前の生活を回すだけで精一杯になってしまうのは、自分も経験があるのでよくわかります。でも、そこでもう一歩、先を見据えて、本当はどういう働き方をしたいのかということを考えてほしいと思います。「ファミリー・サポート・センター事業」など子どもを一時的に預けられるサービスもありますので、必要なら外の方にお願いをするのも選択肢の1つだと思いますし、どういうやり方があるのかなと、よく考えて自分の働き方を決めてほしいです。

カギは「首長のリーダーシップ」!

この「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」をまとめた上智大学法学部の三浦まり教授は・・・

三浦教授

「採用時の女性割合が増えないと、管理職の割合も伸びていきません。採用時と比べて女性の管理職割合が低い自治体は、育成段階において問題があるといえます。年齢階層ごとに職階別の男女比を算出すると、どの段階で男女に差が生じるのが見えるようになります。妊娠出産などをきっかけに、女性には管理職になるのに必要な経験を踏ませないような人事慣行があるのかもしれません。男性育休や長時間労働是正などの働き方改革を進めることも不可欠です。これらの取り組みをスピーディに進めるには、何よりも首長のリーダーシップが欠かせません

そのほかの指数、千葉県は?

「地域からジェンダー平等研究会」の調べでは、そのほか千葉県は、政治は4位、教育は36位、経済は34位(2022年2月1日現在)。
政治分野はほかの都道府県と比べて進んでいるものの、意外とほかの分野は下から数えた方が早い位置にいることが分かりました。

杉山記者

ただ、政治分野で順位が高いと言っても、ジェンダーギャップはまだまだ大きいです。

《政治》
▽衆参両院選挙区選出議員 全国30位
衆議院 0%(13選挙区中女性0人)
参議院 17%(定員6、うち女性1人)

▽県議会議員の女性割合 13%(92人中女性12人/全国12位/2021年8月時点

▽市町村議会の女性割合 18.4%(男性936人、女性211人/全国6位)

▽女性知事の在職年数 男性66年、女性は堂本暁子元知事の8年(全国3位)

▽市町村長 5.6%(男性51人、女性3人/全国9位/2022年1月時点)

《行政》
▽県の審議会委員の数 30.5%(男性727人、女性319人/全国40位)

▽県の防災会議の人数 19.2%(男性42人、女性10人/全国9位)

▽地方自治法180条5に基づく委員会の人数(選挙管理委員会、監査委員など 教育委員会は除く) 9.5%(男性57人、女性6人/全国45位)

▽県庁採用(大卒程度)に占める女性割合 31.2%(総数385人中、女性は120人/全国42位)

▽県職員の育休取得率 男性132人で9.1%/女性1157人で99.5%(全国25位)

▽市町村の審議会委員の数 28%(男性14444人、女性5642人/全国33位)

▽市町村の防災会議の人数 12.5%(総数1493人中、女性186人/全国6位)

 

《教育》
▽大学進学率 男性59.1%、女性は50.4%(全国38位)

▽小学校の校長先生 23.9%(男性574人、女性180人/全国22位)

▽中学・高校の校長先生 6.7%(男性502人、女性36人/全国31位)

▽小中高の副校長・教頭 22.6%(男性1165人、女性340人/全国24位)

▽都道府県教育委員会の管理職 2.6%(男性38人、女性1人/全国46位)

 

《経済》
▽フルタイムの仕事での賃金 男性100%とすると女性は75.7%(男性33万1000円、女性は25万700円/全国24位)

▽フルタイム以外の仕事での時給 男性100%とすると女性は85%(男性1557円、女性は1325円/全国12位)

▽フルタイムの仕事に従事する割合 男性は79%余、女性46%余(男性60万490人、女性は33万9020人/全国40位)

▽家事・育児などに使用する時間の週平均 男性42分、女性268分(全国18位)

▽企業の社長の人数 14.6%(男性12万2989人、女性2万998人/全国10位)

▽企業役員・法人管理職 12.8%(男性5万1420人、女性7540人/全国41位)

▽農協役員 8.5%(男性495人、女性46人/全国33位)

(※以上は「地域からジェンダー平等研究会」調べ。2022年2月1日時点のデータ)

取材後記

都道府県版のジェンダーギャップ指数を見たとき、千葉県は東京に隣接する都心部なので、47都道府県で見れば進んでいる方だと思っていたので、特に行政分野の41位という順位には驚きました。人口が多いので、女性を1人登用すると割合が増えやすい地方に比べると不利なのではと思いましたが、近隣の埼玉県は14位神奈川県は19位、東京都は13位となっています。

千葉県の担当課からは、「組織の中枢で働く女性の積極的な登用を進めたい」という声がありました。まずは県や市町村が掲げる数値目標が達成されているか、私たち一人ひとりが確認していく必要があると思います。

管理職は、川口元千葉市副市長が話していたように、必要な経験や能力がある人が担うべきですが、性別の偏りがあると結果的に住民サービスにマイノリティーの声が反映されにくくなります。女性管理職が増えていくためには、女性職員自身がキャリアアップを目指せる環境作りが欠かせないと思いますので、引き続き注目していきたいと思います。

  • 杉山加奈

    千葉放送局東葛支局記者 

    杉山加奈

    2018年入局。8月から富山局に異動します。千葉で取材させてくださった皆様、お世話になりました。

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