ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. 多頭飼育崩壊か 飼い主を虐待容疑で書類送検 千葉県八街市

多頭飼育崩壊か 飼い主を虐待容疑で書類送検 千葉県八街市

  • 2022年06月20日
撮影:NPO法人アルマ

ペットが増えすぎ、適切に飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」。これに陥り、飼育していた犬200頭あまりを虐待したとして、千葉県八街市の飼い主が書類送検されました。何が起きていたのか。

(千葉放送局記者 武田智成)

物虐待で飼い主 書類送検

書類送検されたのは千葉県八街市に住む60代の女性。

容疑は2022年3月、221頭の犬を劣悪な環境で飼育し衰弱させるなど虐待した動物愛護法違反。
飼われていたのは雑種の小型犬221頭。2階建ての住宅の中は、ふんや尿が適切に処理されおらず、多くの犬が皮膚や目に炎症を起こすなど、不衛生な環境が原因とみられる病気にかかっていたという。

住宅の中は・・・ 撮影:いぬ助け

調べに対し、飼い主は「ふん尿を放置していた上、狂犬病の予防注射も打っておらず、虐待と思われてもしかたない。正直、こんなに増えると思わなかった」と供述しているということです。 

多頭飼育崩壊

動物保護団体 金子理絵代表

飼育状況について、現場の住宅を訪れたことがある動物保護団体「CACI」の金子理絵代表はペットが増えすぎ適切に飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」の状態に陥っていたと指摘しています。

金子理絵代表
「不妊手術などが適切に行われておらず、雄と雌が一緒に飼育されていたことが、これだけの繁殖につながった原因ではないか。ふん尿まみれで世話がされていない状態は、ネグレクト=飼育放棄で動物の虐待にあたる。コロナ禍でペットブームと言われているが、飼い主は責任を持って飼育しなければならない。」

多頭飼育を巡っては全国で問題になっています。環境省が都道府県・政令指定都市・中核市の125自治体を対象に多頭飼育の苦情状況を調べたところ、平成30年度1年間に全体で2149件、平均で20.5件あったということです。1世帯に対して苦情が複数寄せられた場合は、苦情の原因となっている世帯を1件と算定しているということです。
苦情があった世帯の飼育頭数をみると、▽2頭以上10頭未満が51%▽10頭以上30頭未満が26%▽30頭以上は6%でした。10頭未満であっても、問題が起きていることがわかります。

多頭飼育が引き起こす問題を具体的にみますと、環境省は大きく3つ挙げています。①飼い主の生活状況の悪化②動物の状態の悪化③周辺の生活環境の悪化で、場合によっては、複数が同時に生じることがあるとしています。今回の八街市のケースでは、少なくとも②と③の問題が起きていたとみられています。

環境省は2021年3月、自治体や関係機関に向けた対策のガイドラインを作成しています。それによると、事態が深刻化する前に問題を察知して対応することが重要だとしていて、発生を未然に防ぐため近隣の住民や民生委員などと連携し、チェックシートを活用するなどしてリスクの高い飼い主を早めに見つけ、アドバイスや指導につなげることを求めています。
そして、問題が見つかった場合は飼い主と相談し、ペットの不妊手術や譲渡を進めることや必要な場合は飼い主を社会福祉の生活支援につなぐことが必要だとしているほか、解決したあとも、適正に飼育できているか地域での見守りを続けるなど、再発防止に努めるよう求めています。

行政が指導も改善せず

八街市のケースでは、近隣の住民からは犬の鳴き声やふんのにおいなど苦情を訴える相談が地元の自治体などに相次いで寄せられていました。
住民や県などによりますと飼い主は、およそ10年前にこの住宅に引っ越し、飼育していた犬は当初、数頭でしたが次第に増え、いわゆる多頭飼育の状況になっていたといいます。
犬の鳴き声は数10メートル離れていても聞こえ、夜中になると響くため、睡眠の妨げになることもあったということです。
また、ふんや尿のにおいも強く、周辺の住宅にまで届いていたといいます。
こうした苦情を受け、市や県は飼い主に対し犬の数を減らすなど飼育環境を改善するよう繰り返し指導しましたが、目立った改善は見られなかったということです。

飼育されていた犬たちは

飼育されていた犬はその後どうなったのか。
県は飼い主に所有権を放棄するよう働きかけ、221頭のうち199頭は動物愛護センターに引き取られ、動物保護団体などの協力を得て、新たな飼い主を探しているということです。また、12頭は飼い主の家族が引き取り、2頭は県内の里親に引き取られたということです。現在、飼い主は8頭を飼育しているということで、保健所が引き続き指導を行うことになっています。

  • 武田智成

    千葉放送局

    武田智成

    2018年入局。日々、事件や事故、裁判などを取材。実家で飼っている猫の名前はあずき。由来は肉球があずきに似ていたから。

ページトップに戻る