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名物「タマネギ狩り」中止 その背景に迫る 千葉・白子町

  • 2022年06月10日

不作の影響などでたまねぎの価格が高騰するなか、千葉県白子町では首都圏向けに出荷するたまねぎを確保するため、観光客に人気のイベント「たまねぎ狩り」が中止されるなど、影響が広がっています。その背景を取材しました。

千葉放送局銚子支局 岡根正貢

サラダでおいしい白子産たまねぎ

白子町では特産のたまねぎを、100戸あまりの農家が栽培しています。主に栽培されている「ソニック」という品種は、みずみずしく、辛みが少ないのが特徴で生で食べるサラダに向いているということで、毎年春から夏にかけて地元のほか首都圏に向けて出荷されています。

名物「たまねぎ狩り」が中止に

白子町では、特産のたまねぎをPRしようと毎年5月、およそ30戸の農家の畑で消費者や観光客に収穫を体験してもらう「たまねぎ狩り」が行われています。掘り起こしたたまねぎを、網の袋に詰め込んで10キロ1200円ほどの格安で購入して、持ち帰ることができるこのイベントは人気となっていますが、ことしは、およそ1か月間予定されていた日程が、わずか10日間で中止されてしまいました。

「たまねぎ狩り」中止の背景

「白子町玉葱出荷組合」によりますと、北海道で不作となった影響などで需給がひっ迫し、価格が高騰するなか、首都圏向けの出荷に対応するため、イベントに必要な量のたまねぎを確保することが難しくなったということです。
たまねぎの小売価格は、全国的に平年の2倍を上回る高値の水準が続いています。白子産の生育は順調だということですが、町内の直売所での価格も10キログラムあたり2700円と、例年の2倍以上で販売されているということです。

生産者「毎年楽しみにしている人に申し訳ない」

「白子町玉葱出荷組合」の大矢忠一組合長は、「ことしは高値の影響で10日間でイベントが終わってしまい、毎年楽しみにしている人に申し訳ないことをしてしまいました。価格が正常に戻ったら白子町のたまねぎを大勢の人に食べてもらいたいです」と話していました。

経費値上がりと人手不足 農家にダブルパンチ

たまねぎの出荷がピークを迎えている白子町の農家では、ウクライナ情勢の影響などで輸入される肥料やガソリンなどの経費が値上がりして経営環境が厳しくなっています。
これに加えて、たまねぎの収穫に携わる農家の人手不足が深刻な問題になっています。

農家の仲田吉範さんは夫婦2人でたまねぎの収穫を行ってきましたが、出荷がピークを迎えると体力的につらいということです。人手不足を打開するための対策を検討しました。

苦境打開のカギとなるか「農福連携」

仲田さんは、地元の障害者福祉施設などと協力して、施設の入所者に農作業の一部を担ってもらう「農福連携」を始めました。

障害者の就労を支援するNPO法人の国府田憲治さんは、「障害者にとって外で農作業をすることで、地域に貢献できることはモチベーションになってやりがいを感じている」と話していました。
生産者の減少と高齢化が進む白子町の農家では、過去に例がないほどたまねぎの需要が増えて農作業が忙しくなる中、この「農福連携」を頼りにしているということです。

取材後記

白子町では大型連休になると、道路に面した畑には直売を知らせる旗や看板が立ち並び、たまねぎがたくさん入ったネット袋が山積みになって売られていましたが、ことしはすぐに市場に出されて、その光景を見ることはありませんでした。取材したある農家は「ことしは、たまねぎバブルだ」と話し、一過性のものと見ていたのが、印象的でした。また、農家の労働力不足という課題も抱えながらも、「農福連携」に期待する声は明るく、白子町のタマネギの将来性を改めて感じさせました。

  •  岡根正貢

    千葉放送局銚子支局

     岡根正貢

    30年にわたり地元を密着取材。

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