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ウクライナから千葉に避難 支援は届いているか

  • 2022年04月13日

日々深刻化するロシアによるウクライナへの軍事侵攻。攻撃を受けた街の映像に胸を痛めている人も多いのではないでしょうか。連日ウクライナから避難してきた人が日本に到着し、生活を始めています。千葉県内だけで少なくとも29人。日本全体では500人を超えています。
しかし、異国の地での避難生活に不安を抱えている人も少なくありません。日本にいる家族を頼って松戸市に避難してきた女性や家族を取材すると支援が十分に届いていない実態が明らかになりました。

(千葉放送局東葛支局記者 杉山加奈)

100万円を超える費用 親族いる避難民にも支援を

明宏さん・オルヤさん夫婦と息子

3月2日、千葉県松戸市に住む会社員の明宏さん(54)は、ウクライナに里帰りのため一時帰国していたウクライナ出身の妻のオルヤさん(37)と0歳の息子、それにオルヤさんの親族のクリスさん(33)とその娘レラちゃん(4)を日本に避難させるため、1人ポーランドに向かいました。ポーランドで家族と再会し、現地でPCR検査を受けられるクリニックを探して全員検査を受け、18日に日本に到着しました。

その後は明宏さんの家で、クリスさんとレラちゃんも一緒に暮らしています。

オルヤさん(左)クリスさん(右)

ウクライナから日本に避難するまでにかかった費用は、あわせて100万円以上。すべて明宏さんが負担しました。

日本までの避難費用は100万円を超える

避難にかかった主な費用
・渡航費 およそ70万円
・ホテル代 およそ17万円
・PCR検査およそ2万円×5人分=10万円
・通信費(海外ローミング2台)およそ5万円
・その他食費などでおよそ10万円

ポーランドでは避難民などがホテルに宿泊しているため、価格の高いホテルしか空いておらず、費用がかさんだといいます。

ウクライナから避難してきた人の受け入れをめぐり、政府は日本に親族や知人がいない人たちに生活費として1日あたり2400円を支給することなどを決めました。しかし、日本に親族や知人がいる場合は、まずはその親族や知人にサポートしてもらうことが前提となっています。

政府の支援
・親族や知人がいない場合の支援
1日あたり12歳以上は2400円、2人目以降は1600円、11歳までは1200円を支給など
・親族や知人がいる場合は、親族などのサポートが前提

クリスさんは日本語が話せず、就職の見通しも立っていないため明宏さんが生活のサポートをしています。今後も毎月10万円ほどの生活費を負担することになる見通しで、明宏さんは政府などに対して、支援を広げてほしいと訴えています。

明宏さん

「これまでの渡航費や生活費はすべて自己負担で、どこにも頼ることができていません。今後の生活に不安があります。政府には親族や知人がいる人にも支援の幅を広げてもらいたい」

クリスさん

「いつウクライナに帰れるか分からないので、日本語を勉強して日本で働きたいですが、今後の生活が心配です」

軍事侵攻で子どもの心に傷 精神的なケアを

幼い子どもを抱えて避難

避難をしてきた人たちを苦しめているのは金銭的な負担だけではありません。

オルヤさんとクリスさんは、軍事侵攻が始まってからは地下のシェルターで2週間、毎日サイレンが鳴る中、眠れない日々を過ごしたといいます。

オルヤさんはストレスで母乳が出なくなってしまい、避難の際には満員電車の中で粉ミルクを作るなど、なんとかしのいできました。出産と育児のために里帰りは、1年ほどを予定していたため服など多くの荷物を持って行っていましたが、ほとんどを置いていかざるを得ませんでした。

ウクライナに残る家族が心配で、毎日連絡を取っています。

オルヤさん

「おばあちゃんがすごく心配です。いつ会えるかわかりません。毎日心配しています」

クリスさんは夫をウクライナに残してオルヤさんの家族を頼って日本に来ました。しかし、言葉の壁がある上、知り合いも少ない日本での生活に不安を抱えています。今、特に心配なのは4歳の娘レラちゃんの精神的なケアです。

クリスさん

「娘のメンタルについて心配しています。日本で消防車などのサイレンを聞くとすごく怖がります。娘はパパのところにもどりたい、戦争が終わってほしいと毎日泣いています。日本でどうやって娘を育てていくか心配しています」

今は明宏さんが、レラちゃんのために医療機関を探していますが、費用や通訳がハードルになっていて思うような医療を受けることができていません。

明宏さん

「彼女たちは戦争にさらされて、かなり強いストレスを受けています。特例として保険証を持ってない人たちの医療費を免除するなど、ご配慮をお願いしたい」

千葉県内のウクライナ避難民への支援

千葉県内では、これまでに29人のウクライナから避難してきた人たちを受け入れています。
県内のウクライナ避難民への支援内容と窓口です。

千葉県
・一時滞在先として2つのホテルおよそ100室の提供
・県営住宅75戸の提供 
相談窓口 千葉県国際交流センター 千葉県外国人相談 043-297-2966

千葉市
・市営住宅の16戸の提供
・ガスコンロや照明器具、カーテンなど、生活立ち上げに必要な家財道具も用意
・市営住宅に入居するまでの間の一時滞在施設を提供
相談窓口 千葉市国際交流協会 043-245-5750
メールでの問い合わせ ccia@ccia-chiba.or.jp

柏市
・市営住宅4戸の提供
・衣類など生活用品を整えるための当面の費用として1世帯あたり10万円を支給
・生活保護と同じ程度の生活支援金を毎月支給
・翻訳機の貸し出し
・日本語教室への参加支援
・その他、特定活動(1年)のビザが発給された場合の国民健康保険証の発行など
相談窓口 柏市企画部共生・交流推進センター 04-7167-0941

松戸市
・市営住宅5戸の提供 使用料3か月無償
・一時的な生活支援金15万円を支給
相談窓口 松戸市国際交流協会 047-711-9511

船橋市
・市営住宅5戸程度の提供
・音声翻訳機の貸し出し
・プリペイドSIMカードを無償で貸し出し
・買い物など日常生活の通訳・同行支援
・日本語教室への参加支援
相談窓口 船橋市外国人総合相談窓口 050-3101-3495

通訳のサポート
Group for Providing Communication & Life Support for Refugees from Ukraine
ロシア語(ウクライナ語)と英語と日本語の通訳者8名が、ウクライナからの避難民の方々に有志で通訳サービスを提供。
相談窓口 木更津市国際交流協会 天内くみ子さん 090-4929-3109

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NHK首都圏ナビ【首都圏支援情報】

取材後記

ウクライナから避難してきた方たちの取材を進める中で、支援のはざまに置かれている人がいることがわかりました。明宏さんは毎日夜仕事を終えてから、クリスさんの就労先やレラちゃんの医療機関の情報を収集し、調整に奔走しています。オルヤさんとクリスさんの幼い子どもをかかえながらの避難は大変心細く不安なものだったと思います。ウクライナに家族がいる中で、不安が消えることはないと思いますが、少しでも日本で落ち着いた生活ができるようになることを心から祈ります。
いつまで続くかわからない避難生活、避難してきた人たちに支援は届いているのか、支援者に経済的、精神的な負担がかかりすぎていないか、引き続き取材を進め情報を発信してきたいと思います。

  • 杉山加奈

    千葉放送局東葛支局 記者

    杉山加奈

    2018年入局  事件・司法担当を経て千葉県北西部の行政を担当。 ウクライナ避難民の支援について継続的に取材。 

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