「将来 子供持つ」若者の46%「学費考えたら産む想像できない」

政府が議論を進める「少子化対策」。
若い世代はどう考えているのか、日本財団が18歳前後の若者に行った調査では、「将来子どもを持つと思う」という回答は46%で、その半数以上が「金銭的負担」や「仕事との両立」が壁になると答えたことが分かりました。

日本財団は2022年12月に、17歳から19歳までの1000人を対象に、働き方や子育てなどの価値観についてインターネットで調査を行いました。

その結果、「将来子どもを持ちたい」という回答は59%でしたが、「実際に将来子どもを持つと思うか」については、
▽「必ず」もしくは「多分」、「持つと思う」が合わせて46%、
▽「多分」もしくは「絶対」、「持たないと思う」は合わせて23%、
▽「わからない」「考えたことがない」は合わせて31%でした。

このうち、「持つと思う」と答えた人に、子どもを持つうえでの「障壁」を複数回答で聞いたところ、
▽「金銭的な負担」が69%と最も多く、
▽「仕事との両立」が54%となりました。

女性では
▽「精神的な負担」が37%、
▽「身体的な負担」が36%と、男性より10ポイント以上高くなり、
男性では
▽「時間的な負担」が44%と女性より高くなりました。

実施してほしい少子化対策を複数回答で聞いたところ、
▽「教育無償化」が39%、
▽「子育て世帯への手当・補助金の拡充」が33%と続いたほか、
▽「育児休暇の取得促進」や、
▽「保育所などの受け皿の整備・拡充」も20%を超えています。

日本財団は「子どもを持ちたいと考える若い人も、金銭的負担や仕事との両立が壁になると考えている現状を重く受け止める必要がある。精神的な負担など子どもを産み育てることへの不安は多岐にわたっており、幅広い支援が必要だ」としています。

学生の半数が奨学金受給 返済に関する勉強会も

大学生の2人に1人が奨学金を利用する今、社会に出た若い人の中には返済が重い負担になり、子どもを持つことまで考えられないという声もあります。

日本学生支援機構の調査では、奨学金を受給している大学生は1990年度には21.8%でしたが、2020年度には49.6%と2人に1人が利用しています。

こうした中、1月、労働問題に取り組むNPO法人が東京 新宿区で開いた奨学金の返済に関する勉強会には、オンラインを含めおよそ80人が参加しました。

最初に弁護士が病気などの理由で返済が厳しくなった場合について、返済期限の猶予を申請したり、返済期間を延ばして月々の返済額を減額したりする方法があることなどを説明しました。

このあと互いの状況を語り合うワークショップが開かれ「奨学金の返済で、貯金もやりたいこともできない」とか「生き方の幅が狭まっている」といった不安の声が聞かれました。

参加した25歳の女性は「夢を持って社会人になったのに生活が苦しい。手取りも15万円ほどで、『子育てもしたいけれど考えられないよね』という話を友達とよくします。それが普通の会話なので、悲しくなる時があります」と話していました。

奨学金返済が壁「学費考えたら産む想像もできない」

勉強会に参加した中には、奨学金の返済が壁となり、将来子どもは絶対に持てないと考えている人もいます。

都内に住む25歳の女性は、教員になる夢をかなえたいと、地元を離れて教職課程がある都内の私立大学に通いましたが、兄弟もいるため、自身の学費と1人暮らしに必要な生活費は奨学金400万円を借りて賄いました。

無事に教員免許を取り卒業後は高校の教員として働き始めましたが、手取りおよそ20万円の給料から月に1万7000円ずつの返済が始まりました。

その後、体調を崩して退職を余儀なくされると、貯金はすぐに底をついて奨学金の返済が難しくなり、一時は知人に借りて対応したということです。

女性は「400万円は大きな額だと思っていましたが、学生時代は大学を卒業して真面目に働けば返せるだろうと思っていました。まさか自分が体調不良になって仕事を辞めると想像していなかったので、真っ先に奨学金どうしようと考え、死んで何とかしなければと、思い悩んだこともありました」と振り返りました。

女性はその後転職し、生活は安定しつつあるといいますが、今後、返済は18年間続き、自分が生きていくための衣食住を確保していく以上の余裕はないと感じていて、将来子どもは絶対に産まないと決めているといいます。

女性は「子どもはすごく好きで、見かけると『かわいいな』と目で追ってしまうほどですが、自分の奨学金を返さなければいけないのに、子どもの学費のことを考えたら産む想像もできないです。お金を借りなければ進学ができない人が多い現状を知ってほしいし、お金の不安や子どもの学費への心配が解消されないと考えは変わらないと思う」と話していました。

学生が求める“国に進めてほしい少子化対策“

将来、子どもを育てることに不安を抱える若い人が少なくない中、少子化問題などを学んできた学生たちからも、求められる対策についてさまざまな声が聞かれました。

中央大学文学部のゼミで家族の在り方や少子化問題を学んできた学生たちに、国に進めてほしい少子化対策を聞いたところ、4年生の男子学生は「子育てにかかるコストは、みんなが不安を抱えている少子化の根本的な部分だと思うので、いちばん対策が大事なのかなと思う」と話していました。

そのうえで、別の4年生の男子学生は「財源がないのは承知しているが、子どもは国の将来に直接関わると思うので、未来に投資するために少子化対策にもっとお金を使ってほしい。漠然とした不安があるので、大きなインパクトのある大学の学費無償化などがあれば、前向きになれるのではないか」と話していました。

また、3年生の女子学生からは「子どもを産んでも仕事を諦めてなくていいような働き方の工夫が必要」といった声が上がるなど、安心して子育てができる環境づくりを求める意見が相次ぎました。

一方で、別の3年生の女子学生からは「漠然とした不安をきちんとことばにしないと政治家には伝わらないので、その不安を自分たちの中でも理解してことばにしていく必要があると思う」といった声も上がり、世代を超えてともに議論していく重要性も指摘していました。

専門家「多様な若者に合わせてきめ細かな対策を」

家族社会学が専門で、中央大学で少子化問題などを教える山田昌弘教授は「30年前の若者と比べると、今の若者は将来への不安が大きい。非正規雇用が広がり、正社員でもなかなか収入が伸びず、社会保障もどうなるか分からないという経済的な不安だらけの中、社会に出て行かなければならない。将来、経済的に安定した中で子どもを育てられるという保証がなければ、少子化にストップをかけることは難しい」と指摘しています。

そのうえで求められる対策として「児童手当の拡充など子育て家庭への支援も必要だが、経済的な理由から結婚したくでもできない人も増えているので、奨学金返済の軽減策など、若い人向けの対策も必要だ。いちばん不安が大きい高等教育の費用の負担軽減も、少子化対策の大きなポイントになる」と話しています。

そして「今の若者は働き方も含め非常に多様で、正社員どうしの夫婦もいれば、2人とも非正規で働くカップルも増えている。結婚しない人もたくさんいる。若い人の立場に合わせてきめ細かな対策を取らないと少子化対策にはならない。若者はこうだと決めつけるのではなく、さまざまな声を吸い上げて対策を打っていく必要がある」と話していました。