【全文】岸田総理大臣 インタビュー
経済は 外交・安全保障は
政治の信頼回復は

経済や外交など内外で課題が山積する中で国会論戦が本格化するのを前に、岸田総理大臣は、NHKの単独インタビューに応じました。全文は以下の通りです。

電気・ガス料金対策


Q)
総合経済対策について、岸田総理は「前例のない電気料金の負担緩和策」を盛り込むと表明している。来年の春以降、電気料金がさらに2~3割値上げされるとも指摘されているが、具体的にどのような制度で、どの程度の負担軽減を図られるのか。いつからの電気料金が対象になり、家庭・企業の双方が対象になってくるのか。


電気料金については、世界的なエネルギー価格の高騰によって、ヨーロッパの一部では、昨年に比べて2倍から3倍に上がっている。その中で、わが国の電気料金は、価格の上限制度があったり、長期契約制度を活用することなどで、昨年比で2割から3割プラスという状況になっている。欧米より抑えられているものの、国民生活に大きな圧迫になっているという状況だ。そしてウクライナ情勢や、世界的なエネルギー高騰の流れは、まだ続くかもしれない。そうしたことを考えたとき、電気料金は徐々に上がっていくのではなく、階段式に上がっていく制度になっているので、来年の春、2割から3割、また上がることになるかもしれず、それにしっかりと備えておかなければいけないという問題意識を持っている。今の「電力請求システム」を活用し、国民1人1人に、どれだけ価格が抑えられたのかが目に見える形でお届けできるシステムを考えていきたいということで、今、関係者と調整を行っている。1人1人の請求書の中で、価格がどれだけ抑えられたかを実感してもらえる制度をつくっていきたい。

Q)
負担がどれくらい軽減されるのか、目安はあるのか。

その水準を今、与党でも調整している。来年の価格上昇の水準も、しっかりと見通しを立てた上で、それに見合う価格の低下や、どこかまで深掘りするべきかといった議論を、今与党でも詰めているところだ。

Q)
いつの電気代から対象になる?

電気料金については、すでに今までも、さまざまな制度を活用して価格を抑えているわけだが、次の価格の引き上げは、来年4月に多くの電力会社で行われるのではないかということが心配されている。その段階までには、しっかりと価格を抑える制度を動かし始めたい。

Q)
ガス料金の高騰も指摘されている。ガソリン価格への高騰対策を現在行っているが、ガス料金、ガソリン価格の高騰対策に、どのようなメニューを盛り込むのか。

都市ガスについては、与党において、幹事長あるいは政調会長レベルで議論を積み上げている。私も公明党の山口代表とも議論し、しっかりと詰めたい。それからガソリンについては、すでにことしの5月から毎月3000億円の国費を投入し、大体、スタンド価格で30円程度価格を引き下げる取り組みを続けている。来年1月以降、どうするか、総合経済対策でしっかり詰めたい。

Q)
ガス料金、山口代表と詰めるとのことだが、岸田総理としては、やるべきだという問題意識、考えはあるのか。

都市ガスについて、ぜひしっかりと与党で詰めてもらい、どういう形で、どういった負担軽減につなげていくのか、具体的なものを、これから詰めていきたいと思っている。

Q)
エネルギーに加えて食料品の価格高騰も上昇が続いている。生活に直結する課題だが、経済対策の中でどのようなメニューを考えているのか。

食料品についてはすでに、輸入小麦を価格据え置きにし、配合飼料についても負担の高騰を抑えている。肥料についても支援金を用意するなど、さまざまな取り組みを行ってきた。これからの総合経済対策では、農産物、肥料、飼料、こうしたものの国産化をしっかり進めることによって、農業構造を強化していく。小麦や大豆、あるいは飼料、こうしたものの作付けを応援していく交付金を用意していくほか、飼料についても国産化を進めていく。また堆肥などを使った肥料の拡大にも支援を行っていくことなどによって国産化を進め、構造を強化していく。こうした取り組みを総合経済対策の中に盛り込んでいきたい。

インバウンド対策

Q)
物価高騰と同時に円安も進んでいる。水際対策も緩和されたが、インバウンド需要を喚起するために、どのような策を考えているのか。

インバウンドについては、先日11日に水際対策を緩和した。国内でも全国旅行支援を開始した。インバウンド消費を、ぜひ、コロナ前に戻していくところから始めたいと思っている。まずはインバウンド消費5兆円を目指し、さまざまな政策パッケージを用意する。あわせて円安メリットを活用する政策として、インバウンドももちろん大事だが、半導体とか蓄電池、こうしたものの国内立地だとか、農林水産物の輸出促進を通じ、円安メリットをできるだけ多くの方々に享受していただけるような取り組みを進めていきたい。

Q)
インバウンド消費5兆円を目指す上で、どういった対策を盛り込んでいくのか。

さっき言ったパッケージの中に、さまざまなインバウンドのプロモーションのほか、魅力的なコンテンツをつくっていくことなどを政策パッケージの中に盛り込んでいきたい。こうしたことを通じ、インバウンド消費をより拡大していく。多くの外国からの旅行客に足を運んでもらう。こうした取り組みを進めていく。

Q)
事業者を中心に支援の対象にしていく?

そういった取り組みを行う事業者を応援していくとか、政府みずからがさまざまなプロモーションに協力するとか、具体的にはいろんなアイデアが出ている。そうしたものを、しっかりと後押ししていく政策パッケージを用意したいと思っている。

総合経済対策

Q)
経済対策全体の規模だが、与党内からは30兆円という数字も出ているが、どれくらいの規模を考えているのか。

経済対策、まずは中身として物価高騰対策、構造的な賃上げ、成長のための投資と、さまざまな改革を挙げている。まずは中身をしっかり追求したい。ただ、規模についても大事ではないかという意見がある。規模について言うと、去年の経済対策は、半分以上がコロナ対策で、飲食店に対する支援などの対策費だった。ことしは、コロナとの戦い、ウィズコロナへの移行を、今進めている。状況はずいぶん変わっている。一方で、物価ということを考えると、ことしは大変急激な物価高騰で、国民のみなさんが苦しんでいる。世界的な経済を考えても、アメリカ、あるいは中国で景気減速が懸念されている。こうした経済のリスクもあるわけなので、これにも備えなければいけない。ことしの経済対策は、こういった役割を担っているわけなので、そのあたりもしっかり考えた上で規模はどこまでにするべきなのかといった視点も大事だ。もちろん今、議論している最中なので、私から確定的な数字を申し上げることは控えなければならないが、今言った内容と規模においても、今申し上げたようなさまざまな点を考慮しながら考えていく。内容も規模も両方大事であるということを申し上げている。

Q)
その中で、電気やガスの対策はどれくらいのウエイトを占めるのか。

これは、最初から数字ありきではなく、実際、これからの価格高騰のありようも、しっかり見通した上で、生活を支える上で、どれだけの支援が必要なのかを考えていかなければならないと思う。ただ、電気はその中においても多くの関係者が、特に強く支援を要望している部分なので、力をしっかり入れ、国民のみなさんに届くよう、納得してもらえるような制度を、しっかり政府・与党一体となって作っていきたい。

Q)
電気料金、来年春というタイミングもあると思うが、すでに上がり始めていて、家庭、事業者はなかなか苦しいという声もあるが、できるだけ早く年内の料金にも対応出来るようにという考え方でよいのか。

実際、電力会社が電気料金を上げるのは来年の4月だが、これに先立って負担軽減の仕組みをつくっていく。具体的に、いつからどれだけ価格を下げるのか。政府が応援するのか、国民のみなさんに届けるのか、これをしっかり詰めたい。

Q)
ガスもやるということでよいのか。


都市ガスについては今、議論が行われているところだ。

外交安全保障

Q)
きょう(14日)の未明にも弾道ミサイルの発射があったが、北朝鮮の核・ミサイル開発は進展しているし、ウクライナ情勢も緊迫化している。防衛力の抜本的強化に向けた議論が進んでいるが、防衛費については最低限NATO=北大西洋条約機構の水準程度は必要だと考えるか。財源について「つなぎ国債」も含め、国債で賄う考えはあるのか。

まず、NATOのありようを念頭に、わが国に必要な防衛力をしっかり考えていくということは、従来、申し上げていた。日本の国民の命や暮らしを守るために必要な防衛力の中身、それを支えるための予算、裏付けとなる財源を、ことしの年末の予算編成の過程までに一体となって考えていくという方針を申し上げている。そのために有識者会議もすでにスタートしているし、政府も与党もそれぞれ議論を進めていくということになる。今そういったものを一体で考えているわけだから、財源などについても一体で考えていかなければいけない課題なので、そこだけ私のほうから結論を申し上げることは控えなければならない。内容に合った財源が求められると思っている。防衛力の中身においても、恒久的に必要なもの、あるいは、ある程度の期間、契約を続けなければいけないものとか、さまざまな性格のものがある。そういったものに合った財源をしっかり考えていきたい。

G7広島サミット

Q)
来年5月の「G7広島サミット」について、どういったテーマを打ち出して、どういった成果を上げていきたいか。ロシアのウクライナ侵攻などで核軍縮に向けた状況がかなり厳しさを増しているが、被爆地出身、選出の議員として、どのような成果を上げたいか。

来年、G7の議長国を務めるわけだが、その中で特に広島サミットにおいては、平和というものが大きな課題となる。他国の侵略は許さない。核兵器の威嚇や使用は許さない。国際秩序を崩すようなことは許さない。こうした平和を守るという強い意志をG7で確認をする貴重な機会にしなければならない。そうした思いを被爆地広島から世界に発信する貴重な機会にしたいと思っている。あわせて、G7サミットなので、気候変動だとか、エネルギーだとか、核軍縮・不拡散をはじめとする地球規模の課題についても議論を深めなければならない。日本はG7唯一のアジアからの参加国なので、G7とアジアや「グローバルサウス」といわれる中間国をどうつなげていくのか、どう連携をしていくのかも考える機会にしたい。もう1つの核軍縮についての思いだが、先日のNPT=核拡散防止条約の再検討会議で、残念ながらロシア1国が反対することにより、成果文書が採択されなかった。しかし、このことは裏返すと、ロシア以外の国、中国をはじめ、その他の国すべて成果文書の最終案には、ブロックをかけなかった。そういったことであるので、これからの核軍縮・不拡散を考えるうえで、1つの土台となる文書、この成果文書の最終案というものが、土台となるこの文書であると多くの国が受けとめている。そして改めて、NPT自体が重要だという認識を多くの国々が共有したい。成果文書の最終案に日本も貢献し、いわゆる「ヒロシマ・アクション・プラン」という4項目を盛り込むべく努力をし、盛り込まれた。ぜひこれをたたき台として、現実的、具体的な核軍縮・不拡散の取り組みを進めていきたい。日本もリードしていきたい。

旧統一教会

Q)
旧統一教会の問題をめぐって、消費者庁の有識者会議では、「解散命令」の申し立ても視野にさらに踏み込んだ対応だとか、宗教法人法の改正などを求める声も出ている。その点を踏まえ、どのように政府として対応していく考えなのか。

まず、政府の対応としては、被害に遭われている方を救済する観点から、消費者契約法をはじめとする関連法案の見直し、これをしっかり考えていかなければならないと思っている。「解散命令」などの問題について、宗教法人法をはじめとする関連法案との関係をしっかり確認した上で、厳正に対応していくことを考えていかなければならない。いずれにせよ、有識者の方々から、いろいろなご意見を承っている。その中でどれができるのか。どれを対応しなければいけないのか。しっかり政府としても受けとめ、そして実行に移していきたいと思っている。

Q)
厳正に対応ということだが、調査や「解散命令」の申し立てということも選択肢としては排除せず考えていくのか。

これは法律に従って厳正に対応していくということだ。

Q)
この問題をめぐっては、安倍元総理との関係を調べるべきだという声も一部ではあるが、この点については。

旧統一教会との関係については、そのときの当人の判断、心の問題という問題がある。心の問題であるので、当事者が亡くなってしまった場合、それに対する説明も、また弁明も何もできないということになってしまう。これでは十分な調査はできないのではないか。こういった点を指摘させていただいている。

国葬

Q)
「国葬」をめぐっては総理が一定のルールを設けると発言されているが、いつごろまでに具体化される考えか。

「国葬儀」をめぐっては、さまざまなご意見をいただいた。これはしっかりと丁寧に受け止めて、今後につなげていかなければならない。政府としては「国葬儀」の検証を行うと申し上げているが、まずは有識者の方々に論点と意見を整理してもらい、それをもとに国会との関係で、どのようなステップを踏むべきなのか、一定のルールを考えていく。そうしたルールをつくっていくことを考えていきたい。

内閣支持率

Q)
この1か月から2か月の間、内閣支持率については下落が続いているが、この原因をどのように分析し、どのような政策を進めて挽回していきたいか。また局面を打開するために衆議院の解散という選択肢もあるのか。

今、私たちの国は、何十年に一度と言っていいような大きな課題、多くの課題に直面している。その1つ1つに丁寧に向き合っていく。これが政治の信頼回復において最も大事であると思っている。経済の復活に向けても、資本主義自体をレベルアップしなければならない、資本主義のありようから考えなければいけないということで、「新しい資本主義」という経済モデルを訴えさせていただいている。また、国際秩序という点でも、ポスト冷戦時代が終わったと言われて、これからの国際秩序がどうなるのか、大きな議論が行われている。これに日本の外交・安全保障も応えていかなければならない大変大きな課題だ。こうした大きな課題だからこそ、パフォーマンスではなく、ぶれることなく、1つ1つ成果を上げていくことが何よりも重要だ。こうした歴史を画するような大きな課題だからこそ、政治の信頼回復のためにも、丁寧な取り組みを積み重ね、結果を出していきたい。それが最も大事であると考えている。

臨時国会

Q)
来週から予算委員会が始まるが、物価高騰、外交・安全保障、旧統一教会の問題などさまざまテーマがある。どのような国会論戦にしていきたいか。どう臨むのか。

まず何と言っても、国民生活、物価高騰にどう対応するのか、経済の問題、日本経済の再生の問題、これが最も大きな課題であると認識している。あわせて、北朝鮮の弾道ミサイルの発射だとか、ウクライナ情勢を考えるときに、外交・安全保障も大きなテーマになる。そして、旧統一教会の問題、政治の信頼にかかわる問題、国民の救済に関わる問題も大きなテーマになると思う。こうした課題について、予算委員会などで、しっかり議論を深めていく。野党とも議論を深めることによって未来を考えていく。こうした意義ある予算委員会にしたいと思っている。

円安

Q)
円安が急激に進行しており、政府としてどう対応するか。

私の立場から、円安の水準について何か具体的に申し上げることは控えなければならないとは思うが、いずれにせよ、投機も絡んだ急激なこの為替の変動は好ましくないわけで、政府としても、今後ともこうした動きは注視し、必要であれば適切に対応を考えていかなければならないというのが、政府の立場だ。そしてこうした急激な為替の変動が好ましくないということは、先日のG7=主要7か国の財務相・中央銀行総裁による会合でも声明を出して確認することができた。国際社会との連携も大変重要なポイントになる。このあたりも政府として、しっかりと努力をしなければならないと思っている。

日銀総裁人事

Q)
来年4月に日銀総裁人事が任期を迎えると思うが、どういった人物像が考えられるか。

今ですら、どんどん急激な経済の動きが発生している。われわれは、それを目の当たりにしているわけなので、これから来年4月に新しい総裁が就任するまでの間、経済の動きというのは、なかなか予断を許さない。緊張感を持って注視しなければならない課題だ。そうした変化、流れ、さらにはその流れの先に何があるのか。日本の具体的な経済対策とあわせ、どんな日銀総裁が求められるのか、しっかり考えていきたいと思う。来年4月に向け、さまざまな状況を総合的に判断し、適切な総裁を考えていかなければならない。今の段階で具体的に即断することは難しいと思っている。