熱海土石流 想定超えた土砂
“盛り土”との関係検証必要

今月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流。
県は盛り土の影響などで想定を超える土砂が出て、えん堤を乗り越えたとみられるとしています。
市は盛り土と土石流との関連を検証する必要があるとして、今後調査する考えを示しました。

高さ10mのえん堤 乗り越える

熱海市伊豆山の逢初川近くで土石流が発生しました。

もともと逢初川の上流部では、川底に土砂が堆積し川沿いの住宅地などは土砂災害警戒区域に指定されています。

県は高さ10メートル、長さ43メートルの砂防えん堤を建設して対策をとっていました。

しかし、今回、土石流が発生した最も上流の部分では盛り土がされた場所が崩れました。

静岡県によりますと、少なくとも5万立方メートルの盛り土が流れ出たと推定されています。
その結果、盛り土が崩れた場所から下流に500メートルほどの場所にあった砂防えん堤を乗り越えて、大量の土石流が住宅地に流れ込みました。

県は盛り土の影響などで想定を超える土砂が出て、えん堤を乗り越えたとみられるとしています。

崩壊部分の一番上が“盛り土”

今回の土石流で崩壊した部分の一番上にあたる場所にあったのが“盛り土”でした。

崩れた土砂の半分ほどを占めると推定される量が流れ出ました。

盛り土と土石流の関係はどうだったのか。

業者から土の運び込みなどの届け出を受けていた熱海市は「土石流と盛り土との因果関係については今後専門家に検討してもらう必要がある」としています。

国土交通省によりますと、熱海市伊豆山で起きた今回の土石流で上流側の崩れた盛り土については平成19年に熱海市に対して、神奈川県小田原市の業者から「静岡県土採取等規制条例」に基づいて土を運び込むための届け出が出されていたということです。

また、この業者は森林法に基づく伐採も届け出ていて、この場所の木を伐採したあと、別の場所から土砂を運び込んでいたということです。

熱海市長「盛り土との因果関係 検証してもらう」

熱海市の斉藤栄市長は、6日の記者会見で「盛り土の詳細については私も報告を受けていない。土石流と盛り土との因果関係については専門家に検証してもらう必要があると思う」と述べ、今後、調査を進める考えを示しました。
一方、静岡県は「崩れた場所に盛り土があり、もともとの森林が開発されたことは間違いないが、民間企業の開発をめぐっては県と熱海市との間に手続きについての権利関係もあるので、今は開発について詳細を公表できる段階ではない」としています。

県は土砂の状況を24時間体制で監視

今後の雨に備え、静岡県はさらに土砂が崩れるなどの二次災害を防ぐための対策を進めています。

具体的には逢初川の上流部で崩れた盛り土について、そのさらに上部にはいまも不安定な土砂が残っていることから、被害が拡大するおそれがあるとして、地滑りなどを感知するセンサーを設置し、土砂の状況を24時間、監視しています。

これに加えて今後の雨にも備え、7日、専門家も交えた委員会を立ちあげ対策を進めることにしています。

対策は1か月以内にまとめる方針で、専門家の意見をもとに川の下流にブロックをおいて土砂をせきとめることなどを検討するということです。

菅首相“捜索・救出 生活再建の支援に全力”

棚橋防災担当大臣は6日、土石流が起きた熱海市を視察したあと総理大臣官邸を訪れ、現地の状況などについて菅総理大臣に報告しました。

このあと棚橋大臣は記者団に対し、菅総理大臣から安否不明者の捜索と救出や、生活再建の支援に全力を挙げて取り組むよう指示を受けたことを明らかにしました。

そのうえで「熱海市長などからは、ライフラインとしては特に水道と道路の復旧が緊急の課題だと要請があり、菅総理大臣から最大限ライフラインの確保に努力するよう指示をいただいた」と述べました。

加藤官房長官「少ない雨量でも警戒を」

加藤官房長官は6日午後の記者会見で「土砂災害警戒区域や河川の氾濫により浸水が想定される区域にお住まいの皆さんには警戒をしていただく必要がある。被災地を含む静岡県伊豆では、これまでの雨で地盤が緩んでいるところもあり、少ない雨量でも土砂災害の発生のおそれもあるので厳重な警戒をしていただきたい」と述べました。

そして「熱海の土石流は直前の大量の降雨のみでなく、長時間にわたって降り続いた累積の雨量が原因となったと考えられ、被害がすでに発生している地域はもちろん被害が発生していなくても大雨に関する警報が出されている地域にお住まいの方は、自治体からの避難情報や気象情報に十分注意し、早め早めにみずからの命を守る行動をとっていただきたい」と呼びかけました。

“所有者は盛り土や崩れる危険性 認識せず”代理人の弁護士

今回の土石流の最も上流側の崩れた盛り土があった土地の登記簿によりますと、平成18年の時点では小田原市の不動産業者が所有していましたが、平成23年に熱海市の男性に権利が移っています。

男性の代理人の河合弘之弁護士によりますと、男性は平成23年に崩れた盛り土の場所を含むおよそ40万坪の土地を購入したということです。

崩れた場所については傾斜で段になった畑だと認識していたものの、盛り土があることや崩れる危険性については認識していなかったということです。

購入したいきさつについて河合弁護士は「男性は資産家で不動産の購入を持ちかけられると、使いみちが決まっていなくてもいい値段だと思ったら買っていた。今回の崩れた場所も買ってどうするかは決めていなかった。購入を持ちかけた人物とは連絡が取れないようだ」と説明しています。

死者7人 安否不明者27人に

7日で発生から5日目となります。亡くなった人は7人となり、県や市は安否のわからない27人の氏名を公表していますが、このほかにも行方がわからない人がいるという情報が警察に寄せられていて確認作業が進められています。

3日に熱海市の伊豆山地区で起きた土石流では7日で発生から5日目となり、警察や消防、自衛隊は2次災害に警戒しながら大量の泥を手作業でかき分けるなどして捜索や救助活動を続けています。

6日新たに3人の死亡が確認され、今回の土石流で亡くなった人は7人となりました。また6日、このうち1人が小磯尚子さん(61)と確認されました。

一方、120棟余りが被害を受けた今回の土石流では依然として、安否不明の人がどれくらいいるのかはっきりしていません。

県や市は住民台帳をもとにした調査などで6日午後7時時点で27人の安否がわからないとしてその氏名を公表しています。この27人とは別に警察に通報があって安否がわからないという人が6人いるということです。さらに警察には安否不明だという人の情報がほかにも寄せられているということで、確認作業が進められています。

県では安否のわかっていない人について心当たりのある人は熱海市役所災害対策本部0557-86-6443に、また警察では熱海警察署0557-85-0110に連絡してほしいと呼びかけていて、情報の収集と安否の確認を急ぎたいとしています。