尾身会長「宣言の強い
メッセージが必要と判断」

菅総理大臣の記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は14日朝の分科会で、専門家からの意見によって、政府の方針が見直され、北海道、岡山県、広島県への緊急事態宣言が決まったことについて「政府と専門家との間では視点や立場が違うため、個別のテーマについて意見が異なる場合がある。きょうの議論で、北海道、岡山、広島について、宣言を出すべきと述べた理由は4点ある。1点目は3道県の状況が総合的に『ステージ4』と判断されること、2点目は変異株の影響が強くなり、さらなる感染の拡大が懸念されること、3点目は病床のひっ迫が、数値が示すよりもさらに厳しい状況にあるという判断、そして最後に今の状況を改善するには緊急事態宣言という強いメッセージが必要だと判断したことだ。我々としては率直に述べるのが専門家の責任だと思って意見したが、政府には非常に早い対応で我々の意見を採用してもらったということだと思う」と述べました。

「対策を早く打つというところに課題」

また、尾身茂会長は「今後、緊急事態宣言を解除すると、感染者は必ず増えるので、このリバウンドを防ぐためのまん延防止等重点措置の適用などの対策を早く打つことが必要だ。日本社会には感染者が増えた時に対策を早く打つというところに課題がある。高齢者にワクチンが届くまでの数か月、戦略的な検査などを含めて全力で対策を行ってもらいたい」と述べました。

「全国的なまん延ではない」

さらに尾身茂会長は「全国に緊急事態宣言をという意見は専門家の間での話しとしては出たが、きょうの議論で強く主張した専門家はいなかった。その理由は、今、全国的には1人の人が何人に感染させるかを示す実効再生産数は1前後、0.99くらいになっている。急速に感染が拡大しているところと感染状況が改善しているところがあって、今のところは全国的なまん延という状況ではない。特に人口の多いところから周辺に感染がしみ出すように広がっていくので、北海道、広島県、岡山県のような人口の多いところに緊急事態宣言を出し、元を絶つということだ」と話しました。

「検査をインド株にシフトする必要ある」

尾身茂会長はインドで拡大している変異ウイルスが日本で広がる可能性について問われ、「インドの変異ウイルスについて比較的しっかりした調査が行われているのはイギリスだが、『英国株』が主流だったイギリスでは徐々に『インド株』が増えてきていることが分かっている。『英国株』が主流になっている日本でも今後、『インド株』が凌駕していくというのは可能性としてはあり得る。これまで『英国株』に対して行ってきた検査のリソースを『インド株』のモニターにシフトしていく必要がある」と述べました。

「PCR検査 確率高いところに集中が効果的」

また、尾身茂会長は「広くPCR検査をやる意味は、その時点での感染の状況が詳細に把握できるということだ。実際に広範な検査を行った広島県のデータによって、無症状では陽性率は1%以下だが少しでも症状のある人では陽性率が10倍近く高くなることが分かり、我々が抗原検査キットを活用していこうと決断した契機にもなった。感染防御の観点からすると、確率が高いところに検査を集中することが効果的で、軽い症状がある人や具合の悪い人、そしてその周辺に幅広く検査を行うことは大きなクラスターを防ぐという意味がある」と話していました。

「医療負荷 評価が開催する人たちの責任」

さらに尾身茂会長は東京オリンピック・パラリンピック開催の判断にあたって、医療への負荷について評価が必要だとした自身の発言の真意を問われ、「現在、感染拡大で医療がひっ迫し通常の医療に支障が出てしまっていることに多くの人が不安を感じている。オリンピックであろうともなかろうとも、多くの人が集まれば、新型コロナウイルスでなくても体調を崩す人は一定程度現れる。オリンピックについて遅かれ早かれ関係者が何らかの判断をすると思うが、開催時の医療の負荷がどの程度になるのか事前に評価することはオリンピックを開催する人たちの責任だと考えている」と述べました。