農水省次官ら3人減給
3人戒告など 接待問題で

農林水産省の幹部職員が、収賄の罪で在宅起訴された吉川元農林水産大臣に現金を提供し贈賄の罪で在宅起訴された大手鶏卵生産会社の元代表から接待を受けていた問題で、農林水産省は、枝元事務次官ら6人を減給や戒告などの処分にしました。

この問題は3年前の10月とおととし9月に、農林水産省の6人の幹部職員が、収賄の罪で在宅起訴された吉川元農林水産大臣と、現金を提供し贈賄の罪で在宅起訴された大手鶏卵生産会社の元代表などとの会食に同席していたものです。

費用は、1回当たり1人2万2000円から2万3000円余りで、いずれも利害関係者にあたる元代表側が支払っていました。

また、いずれの職員も費用は同席した政治家が負担したと認識し、その場で支払いの確認をしていませんでした。

このため、農林水産省は利害関係者からの接待を禁じた国家公務員の倫理規程に違反したとして、枝元事務次官ら6人を減給や戒告などの処分にしました。

具体的には、
▽当時、生産局長だった枝元事務次官と、水田生産局長、それに伏見大臣官房審議官の3人が減給10分の1・1か月。
また、
▽畜産部長と農地政策課長が戒告の懲戒処分、
▽畜産振興課長が訓告の処分となっています。

この問題を受けて野上農林水産大臣も、みずからの大臣給与1か月分を自主返納するとしました。

農水省が再発防止策

農林水産省は、今回の問題を受けて再発防止策をまとめました。

それによりますと、
▽農林水産省独自のルールとして政治家および利害関係者が同席する会食に職員が参加する場合には、金額や誰が費用を負担したかにかかわらず、大臣などに届け出ることにします。

また、
▽大臣から全職員に対して、公務員倫理の順守を徹底するよう文書などで指導するとともに、すべての幹部職員を対象に公務員倫理に関する研修会を開きます。

さらに、
▽畜産関係団体に国家公務員の倫理規定などについて周知・徹底をはかるとしています。

野上農相「国民に深くおわび」

今回の問題で、農林水産省の枝元事務次官ら6人を減給や戒告などの処分にしたことについて、野上農林水産大臣は25日夜、農林水産省で記者会見し、「今回の事態は農林水産行政に対する国民の信頼を大きく損なう事態であることを職員全員が真摯(しんし)に受け止めなければならない。国民の皆様に深くおわび申し上げます」と陳謝しました。

また、野上農林水産大臣は、減給や戒告などの処分を受けた枝元事務次官ら6人について「今回の事案を受けた人事異動は考えていない。深い反省に立ちそれぞれの職責をしっかり果たしていただきたい」と述べました。

さらに、今回の接待が政策決定に影響したのか問われたのに対し、野上農林水産大臣は「出席した職員からは会食の場においては政策に関する話題は出なかったと聞いている」と述べました。

そのうえで「本件の関係で指摘されている施策の判断は妥当だったと考えているが、今回の会食が養鶏鶏卵行政の公平性に影響を与えたかどうかについては第三者委員会で検証いただく予定だ」と述べ、外部の有識者による委員会で引き続き検証していく考えを示しました。

枝元事務次官「進退は大臣が決めること」

今回の問題で減給の懲戒処分を受けた農林水産省の枝元事務次官は「自分自身の行為で農林水産行政や国家公務員への信頼を損ね、非常に申し訳なく思い反省しています。今後は、身を律してやっていきたいと思います」と述べました。

また、記者団から自身の進退について問われたのに対し、枝元事務次官は「それは大臣が決めることだと思います」と述べました。

野党側 菅首相の長男や農水省幹部の国会招致を求める

一連の接待の問題で、野党側は、さらに真相究明を進める必要があるとして、衛星放送関連会社に勤める菅総理大臣の長男に加え、農林水産省の枝元事務次官ら幹部を国会に参考人として出席させるよう与党側に求めていて、与野党で引き続き、協議が行われています。

共産 志位委員長「非常に深刻なモラルの崩壊」

共産党の志位委員長は、記者会見で「総務省も農林水産省も、組織ぐるみで癒着が起こっていたということでは、同じところに根っこがある問題だ。非常に深刻なモラルの崩壊が、役所全体、霞が関全体で起こっていると言わざるをえない」と批判しました。