森会長 辞任表明
自治体や政界の受け止めは

女性蔑視と取れる発言の責任を取って、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長が12日、会長を辞任する考えを明らかにしたことについて、自治体や政界の反応です。

東京都 小池知事「手続きの透明性 世界が見ている」

森会長の後任について開催都市・東京都の小池知事は、記者会見で「どのような決め方にするか手続きの透明性も世界が見ている。どのような人が会長になるかもさることながらオリンピック憲章などの考え方をどう発信するのかが注目の的になっている」と述べました。

そのうえで「逆にいえば発信のチャンスだ。世界が注目していることを忘れてはならない。アスリートはもちろん、ボランティアや聖火リレーを予定している人たちにも大変な不安をおかけしているので、そういう方々にもきちんと伝わるような手続きで進めていただきたい」と述べました。

また、会長にふさわしい人物像について聞かれると「多様性と調和について、みずから発信し先頭に立つことが必要な要件ではないか」と述べ、新しい会長の選任を注視する考えを示しました。

千葉県 森田知事「自分で決めたことだと思う」

東京都以外では最も多い8つの競技が開催される予定の千葉県では、森田知事が記者団に対し「森会長が千葉県に8つの競技を誘致してくださり、がんばって大会を成功させてほしいと思っていたが、今回のことで辞任するというのはご自分でお決めになったことだと思う」と述べました。

また、森会長の後任として当初、会長を引き受ける意向を示していた川淵三郎氏が一転して断る考えを示したことについては「え、辞退したの。辞退なさっちゃったんだ」と驚いた様子で、後任の人事については「私たちに見えないところや政治的なものもある。いろいろなかけひきのできる人じゃないと非常に難しいのではないだろうか」と述べました。

県によりますと、千葉県内では森会長の発言を受けて10日時点で12人の都市ボランティアが辞退しているということで森田知事は「残念です、大変残念です。あと半年なので、一致団結して頑張るしかない」と述べました。

埼玉県 大野知事「辞任は致し方がないと思う」

5つの競技が行われる予定の埼玉県では、大野知事が記者会見で「開催となったときに会長は大会の理念、スローガンを胸にもって説明できる人であるべきだ。ここにそぐわないのであれば辞任すべきだろうし、私としては辞任するしないよりも、日本を代表して理念を世界に出すのにふさわしい方に会長であってほしい。本人の判断ではあると思うが、辞任は致し方がないと思う」と述べました。

県によりますと、森会長の発言を受けて、埼玉県が募集した都市ボランティア16人が辞退を申し出ているということで、大野知事は「一緒に成功に導けるように、ボランティアをお願いしたい。いろんな思いがあると思うがオリンピックの理念をみんなで実現したい」と述べました。

神奈川県 黒岩知事「非常に残念」

セーリングや野球、サッカーなどの競技が開かれる神奈川県の黒岩知事は、「日本のスポーツ界を代表する森会長が、このような形で身をひく事になったのは、非常に残念だ。しかし、今回の女性蔑視とも取れるような発言は問題だったと言わざるをえない」と述べました。

そして、後任の会長については、組織委員会がふさわしい人を選ぶのを待つとしたうえで「オリンピック・パラリンピックをやめた方がいいという人もいる中で、今回の会長交代は影響があるが、原点に立ち戻って、安心安全な大会の実現にむけて準備を進めていきたい」と話していました。

静岡県 川勝知事「恩義は本当に深い」

自転車競技が行われる予定の静岡県の川勝知事は記者団に対し「森会長自身が決めたことだと思う。森会長は自転車競技を県内に持ってくるにあたり、何度も会場に足を運んでくれた。恩義は本当に深いものがある」と述べました。

そのうえで「われわれはこうしたことの上に立って、オリンピック・パラリンピックを迎えることになる。万全の体制をとって組織委員会や関係市町などとワンチームになって成功に導くことが恩返しになると思う」と述べました。

また、記者団が森氏の発言の受け止めについて改めて質問したのに対し、「不適切だと思います」と短く答えました。

福島県 内堀知事「国民の思い 大会から離れていること残念」

福島県の内堀知事は記者会見で「いちばん大きな問題は、東京大会そのものが、一連の騒動で大きなマイナスのイメージを受けたことで、本当に残念だ。国民みんなが全体として思いを持って臨むべき大事な大会だが、今回の騒動に起因して国民の思いが大会から離れていることを残念に思っている」と述べ不快感を示しました。

そのうえで「来月、聖火リレーが始まるが、福島はそのグランドスタートの地だ。今、大会に向けて総力をあげるべきなのはコロナ対策であり、これを抑え込まないかぎり国民の理解を得てスタートすることは難しい。一連の騒動によって大会を成功に導くための大切な時間が失われている。できるだけ早く新しい体制に移行してほしい」と述べました。

スポーツ庁 室伏広治長官「後任会長 クリアな形で選定を」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事を務めるスポーツ庁の室伏広治長官は会合の後、取材に応じ、森会長の辞任表明について「発言は不適切であり、ご本人の判断で辞任されるということなのでわれわれも受け止めた。それを尊重したい」と話しました。

そのうえで、後任の会長については「わかりやすい形、クリアな形で選定されるべきだと思う。大会まで6か月を切る中、会長だけで準備を進めるわけではないが、後任には手腕が求められると思う」と話しました。

会合では男女平等の理念などについても議論されたということで「このような状況でジェンダーの平等が注目されていることは、スポーツ界として重く受け止めている。これから変えていくんだということをどう発信していくか、前向きで真剣な議論がされたことはよかったと思う」と話していました。

自民 二階幹事長「功績は大変なものだった」

自民党の二階幹事長は「本人の判断であり、やむをえないが、森会長には大会の招致から一貫して尽力をいただき、その功績は大変なものだった。今後、選出される新たな会長のもとで、よりいっそう、オリンピックの理念と精神に基づいた運営が行われることを期待するとともに、大会の成功に向けて一致結束した取り組みを進めていただきたい」とするコメントを出しました。

自民 世耕参議院幹事長「新会長のもとで乗り切っていく」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「スポンサーからも厳しい声が出る中で、大会を開催に導くための非常に重い決断だった。コロナ禍での開催は極めて難しい事業で、これまでは森会長の手腕に依存してきた面がある。森会長を上回るリーダーシップは難しいと思うが、新会長のもとで、政府や競技団体も含め、チームワークで乗り切っていくしかない」と述べました。

立民 泉政務調査会長「真摯(しんし)に受け止め 今後の対応を」

立憲民主党の泉政務調査会長は、記者会見で「こういう結果となり、国としても、大会の推進体制においてもダメージとなった。発言の問題にかかわらず、ジェンダー平等の意識を持たなければならず、組織委員会と理事会には、世界と世論が何を求めたのかを真摯に受け止め、今後の対応を決めてほしい」と述べました。

また、川淵三郎氏が森会長に後任の会長への就任を打診され、引き受ける意向を示していることについて「今回のいきさつから、身をひかざるをえない森会長が組織に諮る前に後任人事を内定させるような行為は好ましいとは言えない」と述べました。

公明 石井幹事長「本人の判断であり やむを得ない」

公明党の石井幹事長は、記者会見で「本人の判断であり、やむを得ない。開催まで半年を切った状況で、会長が交代することによる影響を懸念している。関係者には、懸念を払拭(ふっしょく)できるよう、この件を乗り越えて、しっかりと対応してもらいたい」と述べました。

共産 志位委員長「ゆがみ正す取り組みを」

共産党の志位委員長は、記者会見で「辞任は当然だが、これで幕引きにしてはいけない。森氏の発言は、日本社会の構造的なゆがみをあぶり出すもので、この問題を契機に正す取り組みを進めないといけない。菅政権と与党が森氏を事実上、擁護する態度を続けてきたことも極めて重大で、こういう政治を変えるところから始めなければならない」と述べました。

国民 榛葉幹事長「後任をしっかりした形で決め 信頼回復を」

国民民主党の榛葉幹事長は、記者会見で「国益のためにも、後任を早くしっかりした形で決め、失われた信頼を取り戻さなければならない。今回の森氏による発言の問題をきっかけに日本のジェンダー平等を推進させるとともに、大会を成功させることが必要だ」と述べました。

加藤官房長官「後任はルールにのっとり選定を」

加藤官房長官は午後の記者会見で「後任に関しては組織委員会中心に考えていくことになる。オリンピックとパラリンピックのスケジュールはもう決まっており、政府としても引き続き、大会の成功に向けてしっかり準備を進めていきたい」と述べました。

また、記者団から「政府が川淵三郎氏の後任への起用を白紙とするよう働きかけなどを行ったか」と問われたのに対し、加藤官房長官は「政府から独立した法人として、組織委員会が独自に判断すべきというのが一貫した立場だ。後任の選定の手続きも、公益財団法人として、ルールの中で透明な形で進めるものと承知している」と述べました。

そのうえで「こういう事態の中で、組織委員会がどういう仕組みをつくるかわからないが、1つのルールをきちんと決め、それにのっとって国内外の協力や理解を得ながら進めていく形で選定を進めていくと承知している」と述べました。