黒川元検事長に起訴相当議決
検察審査会

緊急事態宣言の中、賭けマージャンをしていた問題で賭博などの疑いで刑事告発され、起訴猶予となった東京高等検察庁の黒川弘務元検事長について東京の検察審査会は「起訴すべきだ」という議決をしました。これを受けて検察は再び捜査することになりました。

東京高等検察庁の黒川元検事長は緊急事態宣言の中、産経新聞の記者2人と朝日新聞の記者だった社員1人とともに賭けマージャンをしていたとして賭博などの疑いで刑事告発されましたが、東京地方検察庁はことし7月、「1日に動いていた金額が多いとは言えない」などとして起訴猶予にしました。

これについて告発した市民団体は「身内に甘い判断としかいいようがない。検察の判断は納得できない」などとして検察審査会に審査を申し立てていましたが、東京第6検察審査会は24日までに黒川元検事長について「起訴すべきだ」という議決をしました。

またともに起訴猶予となった新聞記者ら3人については「不起訴は不当だ」とする議決をしました。

議決の中で審査会は「賭けマージャンはいわゆる『点ピン』と呼ばれるルールで行われ掛け率や賭け金が格段高いとはいえないが起訴猶予が当然というほど射幸性が低いとも言えない。東京高検検事長という重責にあり、違法行為を抑止する立場にあった元検事長が漫然と継続的に賭けマージャンを行っていたことが社会に与えた影響は大きく動機や経緯に酌むべき事情はない」と指摘しています。

これを受けて東京地方検察庁は再び捜査を行いますが、黒川元検事長については検察が再び不起訴にしても、その後、検察審査会が「起訴すべきだ」という2回目の議決を出した場合には強制的に起訴されます。

一方、新聞記者ら3人は仮に再捜査で再び不起訴になれば、検察審査会の2回目の審査は行われず捜査が終わることになります。
検察審査会の仕組み
検察審査会は、有権者からくじで選ばれた11人が、検察が不起訴にした判断が妥当だったかどうか審査します。

審査会が1回目に出す議決は、不起訴の判断には納得できるという「不起訴相当」、不起訴の判断には納得できないという「不起訴不当」、不起訴を取り消して起訴すべきだという「起訴相当」の3種類です。

「不起訴相当」と「不起訴不当」の議決は多数決で決まりますが、「起訴相当」の議決には11人中8人以上の賛成が必要で、条件が厳しくなっています。

審査会が「不起訴不当」もしくは「起訴相当」の議決をした場合、検察は再び捜査を行ったうえで起訴するかどうかを判断することになります。

「起訴相当」の場合、検察は原則として3か月以内に判断するよう定められていて、改めて不起訴にしたり処分を決めなかったりした場合は自動的に2回目の審査が行われます。

2回目の議決は「起訴すべきだ」という議決と「起訴に至らず」という議決の2種類です。「起訴すべきだ」とするには審査員11人中8人以上の賛成が必要で、8人に達しなければ「起訴に至らず」となります。

再び審査会で「起訴すべきだ」という議決が出されると、裁判所が指定した弁護士が検察官に代わって事件を強制的に起訴します。

一方、1回目の議決で「不起訴不当」となると、検察が捜査した結果再び不起訴にした場合は、2回目の審査は行われません。

東京地検次席「適切に対処」

東京地方検察庁の山元裕史次席検事は24日午後の定例会見で、「議決については真摯(しんし)に受け止め、起訴相当および、不起訴不当と判断された事件については、議決の内容を精査し、所要の捜査を行ったうえ、適切に対処したい」と述べました。

そのうえで「一般の人と検察の間の感覚にずれがあるのではないか」という質問に対しては「ご指摘のような意見があることは胸に刻みたいと思うし、適切に対応したい。国民の信頼は検察を支える基盤であり、できるかぎりのことをして、信頼に応えていきたいと思う」と答えていました。

市民団体の会見「市民感覚にかなう判断」

検察審査会に審査を申し立てていた市民団体の岩田薫共同代表は東京 霞が関で24日会見を開き、「検察が黒川元検事長を起訴猶予にしたのは身内に甘い処分だと考えていたが、今回、一般の市民で構成される検察審査会も起訴すべきだと議決したことは市民感覚にかなう判断だったと思う。検察は、今回の議決を重く受け止め、しかるべき判断をしてほしい」と述べました。