国会代表質問「脱炭素社会」
「学術会議」など論戦

国会では菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が始まり、菅総理大臣は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す政府の方針について、実現は容易ではないものの、再生可能エネルギーだけでなく原子力の活用も含めてあらゆる選択肢を追求する考えを強調しました。

28日は衆議院本会議で、立憲民主党と自民党が質問しました。

「脱炭素社会」「日本学術会議」

立憲民主党の枝野代表は、脱炭素社会の実現をめぐり「2050年までの脱炭素社会実現を打ち出したことは歓迎するが、そのために原子力発電への依存を強めることがあってはならない」とただしました。

これに対し菅総理大臣は「徹底した省エネや再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能なかぎり低減することが政府の方針だ。2050年の『カーボンニュートラル』は簡単なことではなく、温室効果ガスの8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが特に重要で、再エネのみならず、原子力を含めてあらゆる選択肢を追求していく。結論ありきではなく集中的に議論していく」と述べました。

また枝野氏は「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことについて「菅総理大臣自身の判断ではないのか。誰が、どんな資料や基準をもとに判断したのか」と述べ、理由や経緯の説明を求めました。

菅総理大臣は「『必ず推薦のとおりに任命されなければならないわけではない』という点は、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考えだ。国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきということや、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることも踏まえて、多様性があることを念頭に、私が任命権者として判断を行った」と述べました。

「経済立て直し」「外交方針」「少子化対策」

自民党の野田聖子幹事長代行は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済の立て直しについて「依然としてわが国の経済は厳しい状況にある」として、具体策を明らかにするよう求めました。

これに対し菅総理大臣は「感染対策をしっかり講じたうえで『Go Toキャンペーン』の各事業を適切に運用して、ダメージを受けた観光、飲食、イベントなどを支援し、経済の回復につなげていく。経済再生のために不可欠な国際的な人の往来についても、国内外の感染状況などを踏まえながら、感染再拡大の防止と両立する形で段階的に再開していく」と述べました。

また、野田氏は菅政権の外交方針について「メディアでは『仕事師内閣』との評価がある一方、外交手腕は未知数との論評もあった」として、アメリカや中国などとどのように関係を構築していくのか質問しました。

菅総理大臣は「日米同盟はわが国の外交安全保障の基軸だ。米国の大統領選挙の結果いかんにかかわらず、北朝鮮などの地域情勢への対応をはじめ、幅広い分野で日米関係を一層深化させていく。中国との安定した関係は、両国のみならず地域および国際社会のために極めて重要だ。主張すべきはしっかりと主張し、共通の諸課題について連携していく。各国との信頼、協力関係をさらに発展させ、積極外交を展開していく決意だ」と述べました。

野田氏は不妊治療への支援を含む少子化対策について「仕事との両立など、安心して治療を受けられる環境を整えることが重要だ」と指摘しました。

菅総理大臣は「男性が子育てに主体的に参加するための環境整備が重要だ。今年度から男性国家公務員には1か月以上の育休取得を求めているが、民間企業でも男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入を検討する。不妊治療についても、保険適用の実現による経済的負担の軽減に加えて、治療を受けやすい職場環境も整備していく」と述べました。

「IR施設の整備」

立憲民主党の泉政務調査会長は、外国人観光客向けの高級ホテルの建設やカジノを含むIR=統合型リゾート施設の整備について「外国人観光客が激減し、長期にわたり回復が困難だ」として、こうした施策を見直すべきだと指摘しました。

菅総理大臣は「長期滞在できる世界レベルの宿泊施設が不足しており、今後インバウンドが戻ってきたときに備えて、こうした施設を整備することは地域経済に大きな波及効果がある。日本型IRは家族で楽しめるエンターテインメント施設とする予定で、観光先進国となるうえで重要な取り組みであり、IR整備法などに基づき必要な手続きを進めていく」と述べました。

自民 野田氏「答弁内容の実行が大切」

自民党の野田聖子幹事長代行は記者団に対し「菅総理大臣はじめ各閣僚からも誠実に答弁してもらい感謝する。答弁の内容を実行していくことが大切だ」と述べました。

代表質問で取り上げた不妊治療への支援を含む少子化対策については「患者が望む不妊治療を受けられるような保険適用の在り方を党としても考えていきたい。菅総理大臣のもとで答えを出してもらいたい」と述べました。

自民党の岸田前政務調査会長は記者団に対し「菅総理大臣は政府の方針やみずからの考えをたんたんと誠実に答えていた。日本学術会議をめぐる答弁は従来の繰り返しだったが、表現を何度か変えて丁寧な答弁に努めようという姿勢が感じられた」と述べました。

自民党の石破元幹事長は記者団に対し「非常にたんたんとした代表質問と答弁だった。前の政権と違い、イデオロギー的なものを極力抑えた、各論の積み重ねが菅総理大臣のカラーなのではないか」と述べました。

記者団が「安倍前総理大臣の時の代表質問に比べて、やじが少なかったのではないか」と質問したのに対し、石破氏は「菅総理大臣からは挑発的なトーンの答弁がなかったので、ヤジも少ないのだろう」と述べました。

立民 枝野氏「支離滅裂の答弁を堂々と」

立憲民主党の枝野代表は記者団に対し「残念ながら、予想通りほとんど正面からの答えはなかった。日本学術会議の問題で菅総理大臣は『会員候補全員の名簿は見ていない』としているにもかかわらず『出身校などのバランスをとって自分が判断した』と言う。支離滅裂の答弁を堂々としたと言わざるをえない。これだけでも辞職ものだ」と述べました。

立憲民主党の泉政務調査会長は記者団に対し「重要な問題にあまり答えていただけなかったと思う。コロナ対策では追加支援が求められている局面で言及がほとんどなかった。日本学術会議についても、おそらく『失敗した』と思っているのに立ち戻れないのだろう。より強情に、より強引に、後付けの理由を増やしていると感じた」と述べました。