日本学術会議 任命見送りの
3教授 菅首相の対応批判

「日本学術会議」の新たな会員候補の一部の任命を菅総理大臣が見送ったことから、野党側は会合を開きました。会合には、任命が見送られた3人の大学教授が参加し、政府の対応を批判する意見が相次ぎました。

会合には、今回任命が見送られた、早稲田大学の岡田正則教授が出席したほか、立命館大学の松宮孝明教授と東京慈恵会医科大学の小澤隆一教授はオンラインで参加しました。

また、会合では、日本学術会議に関わる業務を内閣府で担当する職員などへのヒアリングも行われました。

出席した議員からは、任命を見送った理由を明らかにするよう求める意見が出されたのに対し、内閣府の担当者は、「人事に関することなので、申し上げられない。詳細は確認中だ」と述べるにとどめました。

また、「昭和58年の国会答弁で、政府は、会員の任命について、『会議の推薦のとおりに総理大臣が形式的な発令行為を行う』と答弁しているが、今回は異なる対応だ」と指摘し法解釈の変更があったのかどうかただしました。

これに対し、内閣府の担当者は「推薦に基づいて義務的に任命することまで課されるものではない」と答えました。

早稲田大 岡田教授「今後に大変大きな禍根を残す」

行政法が専門の早稲田大学の岡田正則教授は「日本学術会議法は1983年と2004年に改正されたが、国会審議で『内閣総理大臣が推薦を左右することはあってはならないし、やらない』としていた。今回、それが踏みにじられ、大きなゆがみをもたらす。日本の学術発展のため、法の趣旨にのっとり、手続きを進める必要がある」と述べました。

また、「会員になぜ任命されなかったかわからないが、これによって、内閣が、自分たちがイエスと言えるような提言しか聞かなくなってしまえば、今後の日本にとって大変大きな禍根を残す。総理大臣に理由を説明してほしい」と述べました。

立命館大 松宮教授「理由のない拒否は違法」

刑事法が専門の立命館大学の松宮孝明教授は「総理大臣には、会議の推薦を拒否する権限はなく、法律でも拒否は予定されていない。拒否する場合は、明確に理由を示す必要があるが、今回は理由もない。理由のない拒否は少なくとも現行法上は違法だ。日本学術会議法の仕組みは、制度的に憲法23条の学問の自由をバックアップしているもので、ひいては憲法上の疑義を生み出すのではないか」と述べました。

慈恵会医大 小澤教授「学問の自由への大きな侵害」

憲法学が専門の東京慈恵会医科大学の小澤隆一教授は「今回のことは、学問の自由に対する大きな侵害だ。学問や研究活動の中身を政府が審査して、会員の任命権を行使するということは、あってはならず、政治と学問の関係を脅かすものだ」と述べました。

井上科学技術相「提言は引き続き積極的に」

井上科学技術担当大臣は、閣議のあとの記者会見で、「担当大臣として、日本学術会議の事務は所掌しているが、会員の推薦や任命については関わっておらず、承知していない」と述べました。

そのうえで、「日本学術会議は、アカデミアを代表して多くの方が参画し、政府にもさまざまな提言などをしてもらっているので、これは、引き続き積極的に行っていただきたい」と述べました。

自民 世耕氏「政府は丁寧にコミュニケーションを」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「個別の人事は説明できないという立場は理解できるが、政府は、日本学術会議と丁寧にコミュニケーションをとることが何よりも重要ではないか」と指摘しました。

また、世耕氏は、野党側が追及する構えを示していることについて「野党が国会の場で政府の手続きをチェックするのは当然だ」と述べました。

自民 岸田氏「政府から理由を聞いてみたい」

自民党の岸田前政務調査会長は、東京都内で記者団に対し、「今回のような形で任命されなかったのは前例がないと聞いており、注目している。理由も含めて実態について、政府から一度、しっかりと話を聞いてみたい」と述べました。

公明 山口氏「国民にわかりやすい対応を」

公明党の山口代表は総理大臣官邸で記者団に対し、「任命権は政府、とりわけ総理大臣にある。法律で決められた制度なので、国民にわかりやすい対応をとることが大切だ」と述べ、政府に丁寧な説明を求めました。

共産 志位氏「学問の自由踏みにじるもので違憲」

共産党の志位委員長は、記者会見で「今回のことは、まさに日本学術会議や日本の学問の自由に対する介入であり、国民の権利の侵害だ。また、憲法23条が定める学問の自由を踏みにじるもので違憲であり、日本学術会議法にも反する。6人の任命を拒否した理由をきちんと国民に説明することは政府の最小限の責任で、それをしていないことを絶対に許すわけにはいかない」と述べました。