本 大雨で24人死亡
16人心肺停止 12人不明

記録的な大雨で川の氾濫や土砂崩れが相次いだ熊本県では、これまでに24人が死亡し、16人が心肺停止、12人が行方不明となっています。まだ被害を把握できていない地域もあり、警察や消防、自衛隊などが確認を進めています。

記録的な大雨で、熊本県では球磨川など2つの川の11か所で氾濫したほか、人吉市では球磨川の堤防が決壊し、いずれも広い範囲が水につかりました。

各地で土砂崩れなどの被害も相次ぎ、新たに人吉市で9人の死亡が確認されました。

また、芦北町では、佐敷地区の80代の女性が死亡したほか、小田浦地区の70代の男性と60代の女性、田川地区の60代の女性と90代の女性、40代の男性、女島地区の60代男性と60代女性の死亡も確認されました。

また、心肺停止だった70代の女性1人の死亡が確認され、芦北町では合わせれ9人が亡くなっています。

津奈木町では80代の男性が死亡しました。

球磨村でも心肺停止だった2人の死亡が確認されました。

球磨村では高齢者施設で14人が心肺停止になっていて、芦北町で1人、人吉市で1人が心肺停止になっています。

また、八代市によりますと、新たに3人の死亡が確認されたということです。

行方が分からなくなっている人も相次いでいて、
▼球磨村で5人
▼人吉市で3人
▼芦北町で1人、
▼津奈木町で2人
▼錦町で1人の
合わせて12人が行方不明となっています。

球磨村の渡地区にある特別養護老人ホーム「千寿園」では、川の水があふれて水につかり、入所者などの高齢者およそ50人と施設のスタッフが取り残され、このうち14人が心肺停止となっています。

県などによりますと、取り残された高齢者の中には体調のすぐれない人もいて、自衛隊が夜を徹して救助を進め2か所の医療機関に搬送したということです。

また、球磨村や相良村など県内の十以上の地区で住民が孤立した状態となっていて、熊本県は、できるだけ早く孤立状態を解消したいとしています。

「千寿園」救助された人たちは…

川の水があふれて水につかり14人が心肺停止となった熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」の近くでは、施設につながる道路が冠水し、消防や自衛隊がボートを使って取り残された人たちを次々に救助していました。

救助された人たちは疲れた様子でことばもなく、隊員に抱きかかえられながら車に乗っていました。

救出された91歳の堤正通さんは3日からショートステイで夫婦で施設を利用していて「救助してくれてありがたかった、本当に怖かったです」と話していました。

迎えに来ていた息子の俊介さんは「施設に連絡してもつながらず状況が全くわからなかったので心配でした」と話していました。

救助に当たっていた自衛隊員によりますと「施設にはまだ30人以上取り残されている。今晩中に全員救助したい」と話していました。

亡くなった方々

熊本県は今回の記録的な大雨で亡くなった人のうち、遺族から同意が得られた12人について、名前などを明らかにしました。

亡くなったのは、
▼芦北町佐敷の酒井民子さん(82)、
▼芦北町小田浦の川田武人さん(72)、
▼同じく小田浦の川田節子さん(69)、
▼芦北町田川の入江たえ子さん(69)、
▼芦北町田川の堀口ツギエさん(93)、
▼芦北町田川の入江竜一さん(42)、
▼津奈木町福浜の丸橋勇さん(85)、
▼人吉市下林町の後村多佳志さん(62)、
▼人吉市下林町の西隆男さん(84)、
▼人吉市下薩摩瀬町の井上三郎さん(81)、
▼人吉市中神町の湯本秀子さん(61)、
▼人吉市紺屋町の平田千恵美さん(57)です。

八代市のグラウンドに「SOS」の文字

5日午前7時すぎのNHKのヘリコプターの映像では熊本県八代市坂本町のグラウンドで「SOS」という文字が確認されました。

近くの建物では人が手をふって救助を求めているような様子もみられます。

市などによりますとこの建物は廃校になった小学校で10数人の住民が避難しているということです。

保育園の園庭に「120メイヒナン」球磨村

陸上自衛隊のヘリコプターが午前9時20分ごろに撮影した熊本県球磨村の映像では、神瀬保育園の園庭に白い文字で大きく「こうのせほいくえん120メイヒナン」と、書かれた文字がみられました。

園庭では数人が歩いている様子も確認できます。

神瀬保育園は球磨川から100mほど離れた場所にあり、周辺の住宅では水につかった様子がうかがえます。

安倍首相 被災者への支援に全力を

政府の「非常災害対策本部」で、安倍総理大臣は、孤立した住宅からの救助や安否不明者の捜索に夜を徹してあたるとともに、新型コロナウイルス感染症の予防も含め被災者へのきめ細かな支援に全力をあげるよう指示しました。

この中で、安倍総理大臣は「何よりも人命が第一だ。現在、警察、消防、海上保安庁、自衛隊が4万人を超える態勢で、懸命に救命救助活動や安否不明者の捜索にあたっている。引き続き、浸水で孤立した住宅などからの救助、安否不明者の捜索に夜を徹して全力であたってもらいたい」と述べました。

そして、「暑さが厳しくなる中、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を含めた被災者へのきめこまやかな支援が急務だ」と述べ、飲料水や食糧に加え、クーラーや非接触型体温計、それに、簡易トイレなどの物資をプッシュ型で避難所に発送するほか、被災自治体への人的支援にもあたるよう求めました。

また多くの家屋が浸水被害を受け、避難の長期化も予想されるとして安心して滞在できる旅館やホテルの確保、公営住宅や賃貸住宅などによる「みなし仮設」の確保を早急に進めることなどを関係閣僚に指示しました。

そして安倍総理大臣は「被災者支援を迅速かつ強力に進めるため、きょう、各省横断の『被災者生活生業再建支援チーム』を設置する」と述べました。

さらに必要に応じて現地に派遣する政府職員の数を増やすほか、5日、自衛隊OBなどの「即応予備自衛官」の招集を閣議決定する考えを明らかにしました。

そのうえで、「被災地では、あすにかけ、大雨となる可能性があり、引き続き、厳重な警戒を続ける必要がある」と述べ、自治体からの情報に注意し、土砂災害や河川の氾濫などに十分に警戒するよう呼びかけました。

西村経済再生相「避難者が感染リスク負うことないよう対応を」

西村経済再生担当大臣は、記者会見で「人吉市では15か所の避難所を用意していると聞いているが、ホテルや旅館が感染症対策には有効であり、内閣府の防災部局には、熊本県内全体で旅館などの確保に取り組んでほしいと伝えた。すでに県とも調整しており、避難している方が感染症のリスクを負うことのないように対応してもらいたい」と述べました。

また西村大臣は、避難所での感染防止の一環として、パーティションや段ボールベッド、それに非接触型の体温計などの物資を現地に送ることを明らかにしました。